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高校1年生、6月⑩

登場人物の名前。

更階さらしな 直人なおと

三浦みうら 陽斗はると

月島つきしま 紗耶さや

佐伯さえき 真守まもる

キャラクター視点で書くと関係性によって呼び方が違い名前が少しわかりずらいです。すいません。

朝の教室は、いつもより少しざわついていた。

担任である俺は教壇に立ち、軽く咳払いをする。

それだけで空気がすっと静まった。


「まず、この間の件についてだが」

クラス全員の視線が佐伯に集まる。

「結論から言う。今回の件は事務の処理ミスだった」

一瞬の間が開いて、教室にざわめきが走る。

横に視線を送ると、そこには見慣れた事務員が立っている。

「こちらの確認不足で、誤った処理をしてしまいました。佐伯くんが会費を盗んだ事実はありません」

その言葉で、張り詰めていた空気が一気にほどける。


「なんだよ勘違いかよ」

「よかったじゃん佐伯」

「マジで事務のミスだったのか」

小さな声があちこちで上がる。

それの様子を見て、ホッと息をつく。

ーーそして、同時に思い出す。

昨日の放課後の事を。



「忍び込みました」


夕方、職員室に尋ねてきた更階直人は、驚くほどあっさりとそう言った。

「事務室にです。窓から」

思わず言葉を失った。

叱るより先に、何を言えばいいのか分からなかった。

更階は淡々と説明を続ける。

「この書類の高島産業からの入金は現金じゃありません。預金への入金予定といった内容です」

事務員が処理した入金は、実際にまだ入ってないお金。

佐伯が持ってきた会費の金額と同額だった事で差異のあった現金分と勘違いし、同じ科目で処理をしている。

「だから帳簿上は合っているように見えた。でも実際はズレてる。これがお金が無くなったように見える原因です」


「……更階」

「お前、自分が何をしたのか、わかっているか」


「はい」

更階は即答した。

「悪い事だと思ってます」

「忍び込んで調べた事は完全にアウトです」

少しだけ間を置いて、それでも目を逸らさずに続けた。

「罰があるなら受けます」

「それでも……俺は」


「正しい事をしたと思ってます」


その言葉に思わず息をつく。

「……まったく」

額に手を当てて、深くため息をつく。

「わかった」

短く、そう言った。

教師としては、褒めていい行動じゃない。

見過ごしていいはずもない。


それでも。


目の前の生徒が、誰かの為に覚悟を決めた事だけは、はっきりと伝わってきていた。


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