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EX1 『吸血鬼と『創世神』の出会い』

番外編です! 四つ子の両親の出会いの話を書きました!

 ――黄金に輝く空を見上げて、ルナミア・ファルレフィアは目にかかる赤髪を手で整える。今日はルナミアが誕生してから二十年経った誕生日の日だ。


 吸血鬼の貴族の家系に産まれた彼女は、現在父母と同じ屋敷に暮らしている。

 

 吸血鬼というせいで見た目が若く、二十歳と言われてもにわかには信じられずさらに若く見える。


 花屋に着くと、店主のおばあさんがルナミアに話しかけた。


「いらっしゃい。可愛いお嬢ちゃんだね。何か欲しいお花でもあるのかな?」


「私今日が二十歳の誕生日なんですよー。だからお花を自分に買おうかと。オススメってありますか?」


 身長がそこそこ高いルナミアだが、肌が綺麗なだけでなく顔も童顔なのでやはりかなり若く見えるのだろう。

 ルナミアから年齢を伝えられた花屋のおばあさんは驚いたような顔をして、今にも倒れそうだった。


「今日で二十歳かい? 信じられないほどにべっぴんさんだね。サービスだよ。好きなお花を持って行っていいよ」


「え!? ほんとですか!? じゃあこれと……これで!」


 彼女の手には緋色に輝く綺麗な花弁の付いた種類の違う二本の花を取った。


「あら、まだ持っていっていいのに。それじゃあこれもどうぞ」


 さらに店主はおまけのように二本の花を差し出した。それは、雲のように真っ白で神秘的なものであった。


「ありがとうございます。このお花の名前ってなんていうんですか?」


「今日入荷した花なんだけどね。えっと確か……」


 店主は思い出すように頭を抱え、数分そのままにしていると急に頭を上げた。


「その白い花が『銀夢を紡ぐラインの花』、もう一つのが『灼陽に咲くアレスの花』、赤い二本が『儚く舞うセツナの花』、『霊花を抱くレンゲの花』って名前だった気がするねえ」


「聞いたことない花ですね。ライン、アレス、セツナ、レンゲか……。いい名前ですね」


「その四本しかうちにはないから大事にするんだよ? 誕生日おめでとうねお嬢ちゃん」


 優しく言葉を投げかける店主にお礼を言い、ルナミアは森を歩き続けた。黄金だった空はすでに暗くなり、明かりも灯っていない森にただ一人なのは流石の彼女でも不安になってきた。


「暗いわね。変なのが出てきたらどうしましょう。お父様たちが待ってるかもだから早く帰っちゃお」


 森を駆けるように駆け足で走っていると、何やら鈍い音が聞こえてきてルナミアは耳を傾ける。


 すると何やら男の声が聞こえてきた。声の数的に二人、いや、三人はいるだろうか。だがそれだけではない。何か嫌な雰囲気が漂っていた。


「お、吸血鬼いるじゃねえか。あれ、こいつ女か? なんかめっちゃ可愛いな」


「どれどれ? お、本当じゃねえか。殺すんじゃなくて捕まえるか?」


 なんと物騒な話だろうか。この男どもが何者か全くわからないが、ルナミアを捕まえる気なのか。「誕生日なのにこんな不幸があっていいの?」と心の中で思っていると、三人が近づいてくる。


「大人しく捕まろうな。暴れなかったら優しくしてやるよ」


「いや近づかないでくださいよ。私今日大切な日なので!」


「なっ!?」


 血液で瞬時に迫ってくる三人を拘束し、ルナミアは深呼吸する。だが、その拘束はその内の一人に一瞬にして解かれてしまう。


「嘘……かなり強くしたんだけど」


「俺はダンピールだからな。吸血鬼に対して特効持ってんだよ!」


「えっと……確か人間と吸血鬼の混血だったかしら?」


 ルナミアの問いにその男は「ああそうだ」と力強く唱え、ゆっくり近づいてくる。


「大人しくしてれば良かったのに攻撃したもんな? ちょっと痛い目に遭ってもらわねえとな?」


 そしてその男は懐から手錠を出した。それがわからず、ルナミアが首を傾げている間に両手に繋がれてしまったのだ。


「う、嘘!? ちょ、離してよ! あれ、血が出せない……それに力も入らない……」


「その手錠は吸血鬼の力を抑えられるんだよ。そのおかげで今まで多くの吸血鬼を狩ってきたからな」


 男の話を聞きながら、手に握っている四本の花が何度も落ちそうになりながらもルナミアは必死に握力で花を握っていた。

 すると、三人もその花に気づいてじっと見る。だが見たことがなかったのだろうか。貴重なものだと思った彼らはこれが欲しいと思った。


「それ高そうな花だな。寄越せ。そしたら解放してやっていいぞ」


「渡すわけないでしょ? さっきもらった大切なものなんだから」


 手錠で腕を繋がれてもなお反抗的なルナミアにイライラしてきたのか、三人とも地面に足をバタバタさせている。


 あと一歩――というところで、その四本の花が赤と白に光った。


「な、なんだよ!?」


「眩し……お花が光って……」


「か、関係ねえ! 連れてくぞ!」


 まばゆい光のおかげで三人は一瞬後ろに下がったが、再びルナミアに対して近づいてくる。力も出せず、危機感を感じていたルナミアの心を近くから聞こえた男の声が救った。


「そこまでだ」


「あ? 誰だよお前」


 その男は、真っ白の髪と瞳を持つ男だった。見た感じの年齢は二十代といったところだろうか。整った顔立ちが段々と見えてくる。


「その女性を解放するんだ」


「お前には関係ないだろ!? 死ね!」


 ダンピールの男が血液を手に纏って彼に近づいた。しかし――


ズゥゥン……


 何やら重厚な音がし、その男は遥か彼方に吹き飛ばされてしまったのだ。あまりの光景に残り二人も尻もちを付き、恐ろしいものを見るような目で彼を見つめた。


「お前たちもああなりたいか? なりたくなかったらどこか行け」


「す、すみませんでした!」


 何度も転びそうになりながら、二人は山を降りていった。

 一瞬の沈黙が流れたあと、ルナミアが彼の方を向くと目が合う。


「あの、ありがとうございます。力が出せなくて困ってしまって」


「大丈夫ですか? 身体に異常は?」


 その男はすぐにルナミアの両手に繋がれた手錠を破壊して体調を気遣う。ルナミアはそんな彼を見て少し頬を赤らめた。


「はい、身体は大丈夫です。お名前はなんていうんですか?」


 一瞬悩んだような顔をしたが、ルナミアの好奇心旺盛な目を見て彼は口を開けた。


「俺はアルケウスです。あなたは?」


「私、ルナミア・ファルレフィアっていいます! よろしくお願いしますアルケウスさん!」


 満面の笑顔で見つめるルナミアを見て、アルケウスも微笑む。すると、彼女の持っている花に気づいた。


「その花はどうしたんですか?」


「私今日誕生日で。お花を買いに行ったら店主のおばあさんがサービスをしてくれて貰ったんです!」


 ルナミアは続けて店主から聞いた花の名前を伝えて「いい名前ですよね?」というような目で見つめていた。

 すると花の名前を聞いたアルケウスは考えるように顎に手を置いて小声で呟く。


「ライン、アレス、セツナ、レンゲか。フッ、アスタリアが言ってたのは本当だったのか」


「アスタリアって誰ですか?」


 花の名前以外にも知らない人の名前が出されてルナミアは首を傾げる。すると、アルケウスは「改めて自己紹介を」と言い出した。


「俺は『創世神』アルケウスです。これからよろしくお願いしますね」


「え? 『創世神』って……え? あの『創世神』のことですか?」


 言われた言葉に頭がよく回らなくなるほど驚愕する。この宇宙を生み出して尚且つこの世界に生まれた我々に『権能』という力を与えた伝説上の神が目の前にいるというのか。にわかには信じられないことだ。


 しかし、ルナミアは全く疑わなかった。楽観的すぎた訳でもなく、アルケウスに何かされた訳でもない。 ただ心からこの男が嘘を付いていないと分かり、さらにこの男とはこれから先ずっと一緒にいるような気がするのだ。


グゥゥゥ……


 お腹がなり、アルケウスが「あっ」と声を上げる。『創世神』ともあろうお方の意外な一面に笑いつつも、ルナミアは彼の腕に抱きついた。


「じゃあ私の屋敷に行きましょうか。私の誕生日会なのでお母様とメイドの子たちが料理をたくさん用意してると思うので!」


「じゃあお邪魔しますね。誕生日おめでとうございます」


 思いもよらない来客を、ルナミアは笑顔で屋敷に招くのであった。


――これから一年経たずに二人は結婚し、五年後に四つ子――ライン、アレス、セツナ、レンゲが産まれるのであった。

読んでくれてありがとうございます!

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