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90話 鉄の世界

 ヘビメタバンドやってそうなやつが鉄を使うスキルってのは出来過ぎじゃないだろうか。


 ゲームとかだと、鉄を使う敵ってのは経験値とお金が美味しいと相場が決まっているので、ガロムもそうだと良いのだが。


「いくぜいくぜいくぜ!!」


 コンサートの開始と言わんばかりに、ハイテンションでコールが始まる。ガロムが手から放出した鉄が振動し、音を奏で始めた。


 音楽機能付きだなんて、かなり便利なスキルだ。高く売れそう!

 アグナ先生とユラン先生を前にしても、一切自分のペースを崩すことがない。それどころか、急激に吹かしたエンジンが最高潮に暖まる。


「うおおおッ!! 強敵を前に、キてんなぁ……ッ! オレ、今めっちゃノッてるわッ!! 乗り遅れるんじゃねーぞ!」


 ガロムが叫びながら胸を叩いた。金髪を振り乱して、まるでステージに立つバンドマンみたいに跳ね回る。

 いや、あいつ、明らかにテンションがおかしい。それに比例して、膨大な魔力量も感じられる。気分が戦闘に影響を与えるタイプなのか?


鉄撃展圏てつげきてんけんッ!!」

 疑問を挟む余地はない。その言葉と同時に、空気が鳴った。


 ……違う。軋んだ。太い金属が曲がるような、不快な音。


 次の瞬間だった。ガロムの体が光ったような錯覚。これも光じゃない。全身から、火花と鉄粉が弾けた。


 ガロムの周囲から、無数の鉄塊が四方八方に一斉射出された。剣、杭、棘、金属の破片――形も大きさもバラバラな鉄が、怒涛の勢いで空間を裂きながら飛び散っていく!


 2人に頼っている猶予なんてない。

 相手は神殺し。


 先生たちだって油断すれば死んでしまう程の相手だ。


「なっ!?」

 反応するよりも早く、俺の足元を何かが通過した。見れば地面にえぐれた線がいくつも走っている。まさか、見えている分だけじゃなく、地面内部まで……。

 少しでも立ち位置を間違えてたら……胴体ごと真っ二つにされてた。


 辛うじて命を拾ったことを認識し、目に見えている攻撃の方へ意識を向ける。既に前なんか見えない。鉄だ。鉄が宙を覆ってる迫ってくる。全部、敵を殺すための鉄だ。


 「気ぃつけろよー! そこのは斬撃! そっちは貫通! んで、そっちは――大爆散だ!!」


 ガロムが爆笑しながら叫ぶ。


 俺は即座に魔融を使用して変刃を強化。変刃の刃を鎌状にして、回転させながら飛んでくる鉄塊を斬り落としていく。


 けど、重く、音が鋭い。

 一発でも受けたら終わりだって、体が理解してる。

 一瞬の油断も出来ない中、俺へと飛んでくる鉄塊を全て叩き落すことに成功する。


 頬や皮膚が数か所斬れたが、効果的な攻撃は入っていない。問題ないレベル。……ふう。凌いだが事で、思わず息を漏らす程の凄まじい攻撃だった。


 「いや~~~すげえ! お前ら、ここまで“斬られてない”ヤツ、久しぶりかも! テンション上がるわ~!!」


 その言葉に、横を見る。


 アグナ先生が両手に剣を持ち、4本の剣を宙に浮かべて鉄を全て叩き落していた。6本の剣を使う。ミニ先輩が言っていた通りだった。


 そして、驚くはユラン先生。彼女の周りにある鉄が静止したまま動かない。ユラン先生の指パッチンを合図に、その鉄が今度はガロム目掛けて強襲する。


 スキルを放った本人に攻撃が届こうかというその時、鉄が溶けて消え失せた。いや、ただの魔力に戻って力が離散のだろう。ガロムがスキルを解除したためだ。


「俺様の魔力を乗っ取りやがったなぁ? 流石は王立魔法学園の先生方だ。ここに極みが二人もいたとはな」


 おそらくユラン先生の操糸の極みに気づいた反応。操糸の極みについては説明を受けたことがない。しかし、今の一連のやり取りで判明するその力。


 操糸の理は相手の魔力を乗っ取るもの。不用意に彼女の前で下手にスキルを使えば、その鋭い牙が自分の首元に届くことになる。


「いや、俺様を含めれば三人か」

「四人だと思って戦った方が良い」


 アグナ先生の忠告。それって俺のことだろうか?

 高く評価して貰えるのは嬉しいが、それほど貢献できるかどうかあやしいところである。先程の力に、完全に気圧されてしまった。


 アグナ先生の傍には、気づいた時には、剣が空に浮かんでいた。


 手に双剣を持ったアグナ先生が、一歩も動かずに立っている。けれど、その背後に、四本の剣が意志を持っているかのように宙を舞っていた。


 それはまるで、重力の影響を受けない衛星。どこにも固定されていないのに、完璧に均衡を保っている。


「おいおいおい……何それ。浮いてんじゃん。剣が。反則じゃねぇ?」


 ガロムが笑いながら言った。けれど、笑っていたのは最初だけだった。

 

 アグナ先生が距離を詰めると同時に、空中の剣が一斉に連動して動く。

 直線的な突き、弧を描く斬撃、死角からの水平斬り、振動する最後の一本――4本がまったく違うタイミングと角度で襲いかかる。


 ガロムが身を翻す。拳で一本を弾き、背後に回った一閃をギリギリでかわす。だが、その回避が“計算済み”だったかのように、次の剣がガロムの右肩をかすめて裂いた。


「チッ……! 読まれてんのか……っ!」

 ガロムが初めて顔をしかめる。

 そこへ続く、アグナ先生の双剣と未だ攻撃の機を伺うもう一本。


 踏み込む。


 足音ひとつ立てず、空間の線をなぞるように――最短で最致命の軌道を描いて、双剣が閃く。


 その一閃は、美しかった。迷いがない。計算が狂わない。

 まるで、刃そのものが世界に切られるべき線を見つけて動いているようだった。


「さっすが先生! いい魂の音させてんなあッ!」


 だが――


 ガロムの肩から鉄の棘が、爆ぜた。普通なら絶対に防げない剣の軌道だった。しかし、彼は普通ではない。


 ズバッ!! という音と共に、アグナ先生の双剣の一方が軌道を逸らされる。

 ガロムが放ったのは、形と出現場所を変えた鉄による反撃。棘が想像の範囲外から出ていた。


鉄棘反爆てっきょくはんばく!!」


 アグナ先生が珍しく目を見開く。肩からだけではない。胸からも、脚からも、そして、地面からも鉄の棘が出現する。更に天井から鉄の杭まで。戦闘の前に通路を塞いだ技だった。


「甘いんだよ、先生ェ……その剣、俺様に届かないんだわ!」

 アグナ先生は身を翻し、一度距離を取る。顔は冷静だが、足元を一本の鉄に貫かれ、ほんの少し、表情を歪めた。


「ヤーッ!」


 横合いから、声が飛んだ。


 視界の端、鉄の影から、小さなさすまたの刃が突き出る。

 誰も気づかなかった。魔力を抑えすぎて、もはや存在感ごと消えていた。


 小物による奇襲。


 変刃の刃先が、ガロムの右腕に食い込んだ。

 感触があった。硬い!? ……けど、ちゃんと、斬れた。さすまたの刃先のギザギザがガロムの腕を服の上から刻む。


「ッのやろ……!」


 ガロムが振り返った。目があった。

 うわ、やべ、怒ってる!? って思ったけど……いや、違う。


 なんか、ちょっと笑ってた……?

 鉄が来るっ!


 反撃が来る前に、一度距離を取る。息をずっと殺していたため、緊張が解かれて呼吸が乱れた。相手の迫力もあっただろう。酸素は補給できるときにしなければ。

 ずっと観察して、襲撃の機を伺っていた。……成功!


「小物にメスガキ……へえ……お前ら、見直したわ。やっぱり最高の退屈しのぎになりそうだぜ」


 腕から血を流しながら、それでも笑うことをやめない。

 お気に入りのジャケットだったのだろうか。腕よりも、ジャケットの損傷を気にしているレベルだ。


 笑う敵は強いと昔どこかで聞いたことがあるが、ガロムはまさにそんな感じだ。相手は左腕、こちらはアグナ先生が右脚を痛めた。


「不用意に踏み込んでしまった。てっきり接近戦は苦手と思ったが、そうでもないらしい」

 ノーモーションからの鉄の棘。剣を扱うアグナ先生には、テンポ感の掴みづらい攻撃なのだろう。


 ちらりとメスガキ先生を見るが、彼女は大きな木の根っこの上に腰かけて敵を観察するだけ。俺とアグナ先生程にはやる気がないらしい。あの魔力を乗っ取る力を使ってくれれば、もっとやりやすくはあるんだが、気まぐれそうな性格なので、変に刺激しない方が良い気もした。


 ギィィン……という嫌な音がした。


 振り返ると、アグナ先生の脚に黒鉄の杭が刺さっていた。

 ふくらはぎを斜めに貫通していて、周囲には血より先に火花と鉄粉が散っていた。


 急いでそれを抜いて捨てるが、二次攻撃には十分すぎるダメージが入る。


 「あっ、せ、先生ッ!? 今の……!」

 まだ鉄が残っていた! さっき貫いた鉄が体内に残り、脚の内部からアグナ先生の肉を!

 言いかけた俺に、アグナ先生は一瞥もくれなかった。


 眉ひとつ動かしてない。

 けど、ほんの一瞬だけ、唇の端がわずかに引き結ばれていた。痛がっている。間違いなくいたがっているが、おくびにも出さない。


「神殺しとやろうとしているのだ。このくらい計算のうちだ」


 先生の静かで力強い言葉に、俺もなんだか覚悟が決まって来た。すげーや。敵も味方も、ここにいる全員が凄い。

 俺ももう、少しくらいの怪我は恐れない。


「さっすが先生~! そういうの、ガチで嫌いじゃねぇわ!」


 再び、アグナ先生の双剣が唸りを上げた。


 踏み込みと同時に、空中の贋作たちが広がり――四方八方から、ガロムへと迫る。

 まるで一陣の風。

 空間に“切り口”だけを残すような、緻密すぎる攻撃。


 だが――。


「凄まじいな。でも結局、剣士は俺様に勝てねーんだわ、先生」


 ガロムが指を弾いた。


 瞬間、アグナの手にある本物の双剣が、ギリ……と鈍い音を立てた。


 次の刹那、それは崩れた。


 「……!?」


 アグナ先生の目がわずかに揺らぐ。剣が。斬撃の核が。握ったはずのそれが、融解してただの柔らかく脆い鉄に戻されていく。


鉄帰還てっきかん。あんたの剣、造りが悪そうだったからよぉ。

 鍛え直すために元に戻してやったわ。ほら、感謝してくれよ!」


 剣がほどけていく。

 鋼が音を立てて、ただの“鉄片”に還る。

 アグナ先生の完璧な一撃が、無意味になろうとしていた。


 だが。


 まだ、空に剣があった。


 四本の浮かぶ贋作。


 それらは崩れていない。


「……なるほど」

 アグナ先生の口元が、わずかに綻ぶ。


「私の手の剣は、“真”であろうとした。しかし、この四本は、最初から“偽”でしかなかった」


 その意味を、ガロムが察するよりも早く――


 剣が突き抜けた。


 一振りは肩を裂き、一振りは足元の動きを止め、

 一振りは咄嗟に鉄で防御しようとした胴体部分を断ち切り――

 最後の一振りが、ガロムの頬をかすめて、背後の大地に深々と突き刺さった。


 致命傷を避けられた。

 虚を突かれたはずなのに、どれも効果的な攻撃になっていない。


 もう一度気配を消して、先生のフォローに入ろうとする。

 しかし、それよりも早く、4本の剣がまた動いた。


 3本が地面から出現した鉄によって掴まれて固定されるが、1本が抜けた。


 その一本が背後よりガロムの横腹を貫く。


 ガロムと同時に気づく。これはユラン先生の力だ。

 おそらく、宙に浮かんでいた剣は本物の剣ではない。アグナ先生がスキルで生み出した贋作。それゆえに、本物と違い溶かされなかった。虚を突いた攻撃をいなすその反射神経には驚かされるが、続く攻撃は流石に対処しきれなかった。


 スキルであるのならば、魔力が籠っている。ユラン先生が贋作の剣を乗っ取り、後ろからガロムを貫いた。


「……がっ……つ……!!」


 初めて、あいつが大きく顔色を変えた。

 痛みで、じゃない。怒りでもない。

 どこか、たまらねぇって顔だった。


「チッ……あっぶな……刺さってんじゃん、これ……うっわ、マジか、オレさま……」


 ガロムは、自分の横腹に突き立った贋作の柄を握る。

 抜かない。ただ、その刃の周囲に――にゅるり、と銀色の魔力が蠢いた。


「……こういうやらかしの時のために、ちょっと柔らかめの鉄も作っといたんだわ」


 傷口の内側で、“鉄の粘土”のようなものがうねり、止血していく。

 魔力で練られた鉄の癒着材。痛々しいのに、どこか手慣れていた。

 贋作も鉄に覆われて、崩れ去って消えた。


 ガロムは顔を上げる。目の奥がギラついていた。

「はあ~~、いいね。切られたね。刺されたね! でも、そろそろオレのターンに戻していい?」


 次の瞬間。


鉄撃展圏てつげきてんけんッ!!」

 初めに放った大技がまた来る。あのレベルの攻撃を何度も打てるのかよ!?


 ガロムが地面を踏み鳴らすと同時に――彼の全身から、鉄が爆ぜた。


 爆風だけじゃない。四方八方に飛び散る鋭い鉄片。

 刃、棘、鎖、杭――全てが“斬るための鉄”として空間を埋め尽くす。

 

 アグナ先生が即座にガードの構えを取るが、武器を失ってはあの攻撃を防ぎきれない。奇襲をやめて、先生のカバーに入った。


 変刃を構え、飛んでくる鉄を叩き落す。

「ハチ! 私に構うな! 自分の身を守れ!」

「強がってないで、隠れて! ……がっ……あっ!?」


 防いだはずの鉄が、重力の向きが変化したかのように加速し、俺とアグナ先生の身体を容赦なく吹き飛ばした。


 衝撃と、耳鳴りと、砂煙の中、それでも変刃を構えて先生を庇う。

 ようやく攻撃が終わる。

 体に何本か鉄が刺さっていた。肩と腿。それに掌を貫く釘みたいな鉄。先生の体にも同じらいの量が刺さっている。


 しかし、命を落とさなかったのは、目の前に立つユラン先生のおかげ。俺たちの前に立ち、鉄の魔力を乗っ取り防いでくれのだ。これがなければ……おそらく……。


 攻撃の中心地に立っていたのは、傷を抱えたままのガロムだった。笑う、笑う。先程の横腹に刺さった一撃がなかったくらい、一向にエネルギッシュさが失われない。


「メスガキ、またお前かよ。さっいこうじゃねーか!」

「メスガキじゃないんだよね、おっさん。そろそろ、うちもやっちゃおうかな。あんたの弱点見えて来たし」

「弱点? そんなもんねーよ! ……でも変なことされるのも面倒だ。んじゃあ……次は、フィールドごと変えさせてもらうわ。“お前らの魔力”、この場じゃ全部、鉄になるルールってことで……」


 指を鳴らす。


 ――鉄界律域てっかいりついき


 その瞬間――世界が軋んだ。


 空気が金属をこすったような音を立て、

 地面が、辺りにある木々が、風が、魔力の流れごと“鉄色”に染まっていく。


 手にした変刃の魔力の刃が、鉄に変わり始めた。

 この不思議な植生のある地下室内に漂っていた魔力も、鉄となってそこら中から降り注ぐ。


 そしてアグナ先生の顔が少し鉄に覆われた。


「人は身体強化を完璧には扱えない。どうしたってぇ、少しくらい魔力が漏れる。漏れた魔力はオレさまの作り出すフィールドによって、全て鉄と化す!」


 アグナ先生の顔だけじゃない。肘や、膝、可動部位から魔力が漏れやすいのだろうか。そこも鉄に覆われ始めた。そして傷口も鉄に覆われていく。


 部分的に鉄化しているアグナ先生はまだ良い。


「……あーあ、ここまでか」

 少しがっかりした声色のユラン先生。


 俺たちの前に立つ彼女の顔を見ると、アグナ先生の比じゃない。体の全面がほぼ鉄に覆われいた。

 一度振りかえって、ニコリと笑う。


「ごめんねー、小物君とアグナせんせっ。うち、ここまでみたい。折角攻略のヒント見つけたのに。……ばいばーい」


 手を振った、その次の瞬間。彼女の顔が完全に鉄に覆われた。全身が石化したみたいに、鉄化して、もう動かない。


 声もしない。息遣いも。生命の鼓動を感じられず、ユラン先生が完全に鉄になってしまった。


「メスガキ先生っ!! メスガキ先生が現代アートみたいになっちゃった!」

 俺の必死の叫びも、おそらく届いていない。

 完全に、鉄になってしまったのだ。ああっ。大事なメスガキ養分だったのに!


 なぜだ。なぜアグナ先生とユラン先生でこれだけの差があった? なぜメスガキ先生だけが犠牲に!


「ハチ……落ち着け。強敵との戦いでは、常に冷静でいるのだ」

「でも、でもメスガキ先生が!」

「彼女なら問題ない。あれは《《本体》》ではない」


 ……本体じゃない?

 メスガキ先生もアグナ先生の贋作だったってこと?


「あれも先生が作ったの? 精巧すぎでしょ。先生、そういう趣味は否定しないけど……学園ではあまり知られない方がいいかも……」

「違う! そうじゃない。ユラン先生自身のスキルだ。彼女ははじめからこの場にいなかった。今はもう気にするな。どのみち、二人で目の前の神殺しを何とかしないとならん。でなければ、私たちもユラン先生のように鉄と化すだろう」


 まだ理解が追い付かない。

 焦りもあった。


 けれど、素直に支持に従う。

 冷静になれ。


 魔力を全て鉄に買えるほどの男、神殺し序列9位の男。

 俺に何ができる? 小物び俺が、この怪物相手に。


「ハチ、気づきを得るんだ。頭を捻ろ。常に冷静に。そうしたら、ユラン先生が見つけた弱点に繋がるかもしれない」


 たしかに、ユラン先生は何かを見つけたと言っていた。彼女はあまり戦闘に参加せず、ずっと何かを見ていた。


 まずはこの力の秘密を知る必要がある。


 魔力を鉄に変える大技。

 ユラン先生は全身が鉄に。アグナ先生は魔力が漏れ出ている部分が鉄に。そして、俺はどこも鉄に侵食されていなかった。


 この技は魔力にしか反応しない……?

 ということは、偽物のユラン先生は全てが魔力だったってことか?


 そして、俺の身体強化は……。


「おい、小物。お前、なんでアグナみたいになっていない? 普通はああなるんだが。完璧な身体強化なんてあり得ないはず……。身体強化を使用してないってことは……ないだろうし。ああん? こりゃ一体どういうことだ」


 俺も良く分かっていない。俺の身体強化がみんなと違うことは知っているが、魔力が一切漏れ出ていないとか知らなかった。


 どうする。どう、打開する。

 世界そのものが“鉄”になったみたいだった。


 空気は重く、魔力は流れず、武器はじわじわと鈍っていく。

 地面から、空間から、何か得体の知れない“鉄の律”が全てを押し潰していく。


 でも、あきらめない。俺がなんとかしなくちゃ。学長とジンがこの先で待っているんだ。

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― 新着の感想 ―
3対1でも圧倒的に優勢の人が序列9位でジンよりも弱いとか 初戦のジンはどれだけ手加減してくれてたんだろう
息もつかせぬ戦闘シーンが派手に面白すぎる。 明日の更新までに深呼吸しとおかなくちゃ!
メスガキ先生だけが弱点に気付いた つまりこれは高度なメスガキ分からせ
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