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45話 茶番劇

 今日は雨が降りそうな天気だな、と感じた日マメな性格の人は傘を持って出かけるだろう。折り畳み式傘をカバンに忍ばせる人もいるかもしれない。


 降水確率70%ではどうだろう。こうなるとほとんどの人が雨に備え始めるのではないだろうか。


 そしていよいよ降水確率100%。こうなればほぼ全員が傘や雨合羽を用意して、既に振りつつあるかもしれない雨に備える。けれど、いるんだよなぁ。100%雨が降るって言ってるのに、傘を持とうとしない人間が。


 そしてそういうやつは大抵、雨に濡れ、風邪ひくことを覚悟していたりする。理由は人それぞれだが。



 ――。



 ローズマル家に忍び寄って来た魔獣騒動だが、悪い予兆ってのは不思議とかならず現実となる法則があるのかもしれない。


 将軍とアトスさんはあくまで可能性と口にしていたにもかかわらず、予兆が確定して現実となった。


 空が暗闇に包まれて既に三日程経つ。朝も昼も日が昇ることなく、一日中暗いまま。厳密には日は登っているのだが、皆既日食みたいな現象が起きており光が差し込まない。


 この状態がすなわち、魔獣到来を告げる確定サイン。

 段階的に言えば最終フェースだが、そう慌てることもない。


 これまでの経験則でいうと、この状態が始まって大体1か月程で魔獣が出現することとなっている。

 出現するメカニズムも、場所もわかっていはいない。魔獣に関する研究はどれも遅れをとっていることだらけで、それは魔獣の特異性に起因する。


 魔獣の行動にはあまり法則が適用されないのだ。魔獣は毎度毎度と言っていいほど、新しい要素を出して来る。それに件数も少なく、統計を取ろうにも貴族たちは魔獣討伐に際してそれぞれ情報を秘匿したりするので、余計に研究を遅らせている。


 分からないことだらけだが、数少ないわかっているこの事前予告は、時間的な猶予はあるため領民の避難が既に開始されていた。避難受け入れ先には我がワレンジャール家の領地も入っており、一時避難民を受け入れる体制が整えられている。


 俺もその波に身を任せ実家へと帰りたかったのだが、魔獣出現の予兆が確定してから逃げ出す貴族は死罪に値するらしい。もっと早く知りたかったでござるよ。


 しかし、悪い情報はここまでだ。世の中、表裏一体。闇が強ければ、昇る朝日の光もそれだけまぶしい。


 今回裏から子爵領を援助する伯爵様は、俺が思っていたよりもかなりやり手のお方だった。一生ついて行きます、伯爵様!!


 支援するとは聞いていたが、何をするかは知らなかった。下手な支援は現地の人を余計に困らせると昔ボランティア活動中に聞いたことがあるのだが、伯爵のそれは間違いなく最善に近い一手。


 どういう繋がりかは知らないが、なんと子爵領に王国軍がやってきたのだ。

 それも、王族による表向きの支援という体裁ではない。


 王子「すんまへん。慣れない土地で演習がしたいさかい、子爵の領地を演習場にさせてくんな」

 子爵「おう。ええでー。好きにしなはれ」


 という伯爵の用意した台本に従って、あろうことか第一王子率いる精鋭がこの地にやってきた。


 当然魔獣と戦うのは第一王子率いる王国軍。しかも彼らは演習で来ているだけだから、魔獣討伐の名誉はあくまで子爵にある。王子にもいくらかおすそ分けはあるだろうが、彼らが裏でどういう密約を結んでいようが関係ない。


「勝った……!」


 これは勝ったのだよ。

 知っているか。


 大物という名称を、もしも今後一人にしか使ってはいけない法律ができたとしたら、それは第一王子に与えられるものになるだろう。小物も一人しかダメなら、たぶん俺に回ってくる。


 弱冠20歳。

 生まれた頃より麒麟児として知られ、目覚めたスキルタイプは当然ドラゴンの紋章を有する戦闘。炎のように赤く燃える髪の毛と相性最高、紋章が出た場所は右目の涙黒子ポジ。……格好良い!有する魔臓才能値は我が姉たちと同じクロマグロ中トロレベルの9000台。


 4年前に王立魔法学園を首席し、そのまま王国軍に入隊。たったの2年で将軍の座に就き、全軍を指揮下に置く。今やその人気と名声のみならず、権力すらも実の父である国王の座を脅かすまでに至っている。


 生まれよし、顔良し、才能良し、しかも驚くことなかれ。性格まで良いと来ている。英雄色を好むという言葉通り、少し女性にはだらしないところがあるらしいが、それまた格好良い。


 しかし、部下たちに対しては公明正大。才能あるものは出世し、逆に無いものは王子の傍にはいられない。

 アーケンのような平民出身でも、才能があれば当然取り立てられて出世する。王子の周りの精鋭たちは皆そういう出自だ。


 俺やクラウスが小金を包んで取り入ろうとしても、魔臓才能値を見られた途端に親指を下に向けられて川か山へと投げ捨てられることだろう。


 真の大物。この人がくればもう大丈夫だという安心感がある。


 となると……俺は、後は踊るだけよ!

 踊ってない貴族知らない。踊ってない小物知らない。


 いやいや、魔獣が来るのに踊っている場合か?と一時期俺も違和感を覚えていた。けれど、これは古くから続く慣例なのだ。


 アトスさんの説明から聞いた通り、魔獣討伐は多くの被害を齎す。

 12年前、最強の盾持ちである将軍たちが1000名を超す被害を想定していたくらいだ。

 今回第一王子がいるといっても、当然被害は大きなものになるだろう。


 これから死にゆく者たちが夜会にて酒を酌み交わす。その英雄たちを送り出すため、前線に出ない者たちが彼らを称える場。


 その二つの意味を込めて、貴族と戦士たちを交えて夜会が行われるのだ。慣例となっている夜会の理由と歴史を知ると少ししんみりしてくるが、当然遠慮はしない。


 俺は夜会で踊るぜ!


 やっぱりパーティーは弾けてなんぼよ。

 英雄たちを悲しい雰囲気で送り出してたまるか。彼らを称えるためにも、気分良くさせるためにも、ハチがおどりゃにゃ損損。


 いよいよ小物の出番が来た時、肩を回してアップを始める。


 子爵が用意した夜会会場はかなり盛大なものだった。

 会場の広さだけではなく、その中身もしっかりしている。名のある演奏家や、デザイナーが美しく仕立てた会場へと人が次々に集まる。


 会場には王子率いる王国軍の精鋭たち。そしてローズマル家。さらには遠方よりお越し下さったあっと驚く大物貴族や、中物貴族。そして大量の小物貴族がいる。


 王国軍の精鋭たちはかなり待遇がよかったりするし、彼らは盾持ちにも引けを取らないエリート軍団だ。実は英雄を送り出すだけでなく、小物貴族の子弟の中にはこの機を狙って彼らと恋仲になろうと企んでいる者もいる。普段出会いの少ない軍人もまた然り。


 盾持ちと王国軍の精鋭部隊はモテるからねー。伯爵領から遠い大物貴族の娘さんが来ているのは、もしや王国軍内にターゲットがいるのかも。もしかしたら、本丸の王子目当てだったり?それならば、こんな遠くまできた理由にも納得できる。


 一方で、なぜ小物貴族たちもこんなに集まっているかというと、当然家の体裁を守るためである。


 小物ってのは陰険だ。かなりねちっこい。


「あら?ガンデュール家は先の魔獣討伐の際、ローズマルの地へ向かわれなかったみたいですわね?我が家は実家を引き継ぐ長男のハチを向かわせていたのですわよ。同じ男爵家でも、貴族の矜持には随分と差がおありですわね。おーっほほほほほ」

「きぃいいいいいいいいい」


 マウントを取っている我が母と、マウントを取られてハンカチを噛みしめている田舎貴族の姿が容易に想像できる。


 そういった各々の事情もあり、夜会はかなりの規模で賑わっていた。

 俺はこの夜会の主役ともいえるローズマル家の三女、ノエルの婚約者だ。

 それなりの扱いを受けて、子爵の挨拶にも傍で控えて主役の一員っぽい雰囲気を出していた。


 魔獣の討伐にも行かないし、子爵家程の責任も負わないのに、良いポジションだけ確保できる。ふふっ、小物は本来こういう旨味を吸って生きて行く生き物だ。


 挨拶が終わると、夜会が始まり、各々が好きに動き回る。政治的なコネを作りたい者、男女の仲を見つけたい者、ただ無料の飲食にありつくこのハチ


 ノエルはあいさつ回りがあるからと早々に分かれた。俺を連れて行かなかったのは、そういう貴族らしい風習が好きじゃなく、夜会で好きに飲み食いしたいという欲求を知ってのことだろう。


 出来た婚約者を持てて、ハチは何よりです。


 そんなノエルの気遣いも、当然あのノンデリには通用しなかった。

 さっそく端っこから料理を全部食べていこうと開始し始めたところだった。


 最近、なんかやたらとお腹が空くんだよね。賭博で勝って得た金でアーケン家のパン屋から大量のパンを買ったのだが、あれも3日で食べ切った。ちょっと自分の食欲に驚きである。冗談じゃなく。今度医者に診て貰うかと真剣に考えているくらいだ。


 ……たぶん、無限身体強化が関係しているとは思うが、それにしても驚きの食欲である。今日も会場に並んだ豪華なビュッフェを前にして、俺の腹が吠えていた。

『喰らえ。全部喰らえ』と。


 胃袋だけ大物のハチ、本能の声に従わせて頂きます!


「ふう、やはり僕はこういう華やかな会場に相応しいな。先ほどから女性たちの視線を感じる。全く、花は雑草の中に隠れられないらしい」


 不吉な声と、不吉な自尊心に満ちたセリフ。

 ……振り返らずに、ビュッフェを自分の皿に盛ることに専念した。


「そう思うだろう?ハチ」


 流石に名前を呼ばれて無視はできない。今気づいたとばかりに振り返って、クラウスに同意しておいた。


「雑草の中に咲く花ですか。いかにもクラウス様っぽいですね!」

 雑草たちの生命力に負けて、しなしなになる未来しか見えんが。


 クラウスめ。優しくしたのが間違いだった。

 ミリア嬢との失恋を経て地獄のように弱っていたあのクラウス。ローズマルの地でゆっくり休めれたのが良かったのか、たちまちに復活してきた。お前が雑草だよ。


 体が良くなっただけならまだしも、あのウザさも当然復活してくる。あの時仕留めておくべきだったか?と今では雑草に同情した自分の優しさを少し後悔している。


 雑草は全部抜け!後々処理が大変だから!


「全く、なんであんなに落ち込んでいたんだろう。僕はこんなにも魅力たっぷりで、世界にはこんなにも美女が沢山いる。一人に執着していたのが、あほらしい」

 その言葉は本心じゃないだろうなってのは感じた。

 多分自分をだますため、そして強がる意味も込められている。


 ちょっとだけ人間らしい脆さも見えたので、太鼓をたたいてやるとするか。ミリアちゃんもクラウスから解放されそうで、めでたいことだし。


「ようやくお気づきになられましたか。よっ、さすクラ!さあさあ、こんなところで俺に構ってないで、女性陣たちの元へ。ほら見てください。みんなクラウス様に声をかけて貰いたくて、今か今かと首を長くしております」


 世辞もあるが、ほとんど事実だ。

 集まっている小物貴族たちの中には、クラウス目当ての子も多くいる。実家からあのクラウスと仲良くして来いと言われていたり、本当に惚れている子もいたりするだろう。


 まあ俺たち小物貴族からしたら、伯爵家の跡取りであるクラウスは空で光輝く一等星のような存在だ。その気がなくても、実際に口説かれれば落ちるくらいには、その地位は魅力がある。


「そうしよう。ウェイター。僕に軽いお酒を」

「え!?クラウス様、その歳でもうお酒を?」

 この世界には飲酒を年齢で縛る法律は無い。大体16歳くらいから飲んでも良いよぉという慣習こそあるが、それにしても11歳で口にするのはあまりに早かった。


 クラウス、お前アル中か!?


「ハチ、僕たち貴族はいろんなものを嗜んでおく必要がある。酒の味は早めに覚えておいた方がいいぞ。何かと会話の役に立つ」

「そんなもんですか」

 酒よりも飯だな。俺はその点、まだまだお子ちゃまみたいだ。


 酒を受け取り、誰に声をかけて天にも登る気持ちにさせてやろうかとクラウスが吟味し、一人決めたらしい。

 しかし、振り返って歩き出した瞬間、背の高い男性にぶつかり、その胸元に酒を飲ませることとなった。


「いたっ!くそっ、僕のお酒が台無しだ!貴様、どこの者だ――」


 自分からぶつかっておいて、とんだいちゃもんである。相手はかわいそうなことになったなと思っていると、先ほどまでの勢いはどこへやら。クラウスが驚きに口を閉じられないでいた。


「随分なもの言いだ。ぶつかっておいて、酒が台無しだと?私の服こそ台無しだ。折角気分よく飲んでいたものを」

「……すっすみません。あなたがいるとは知らなくて。本当に申し訳ございません」

 嘘だろ……。

 クラウスが顔を青ざめて謝罪し始めていた。


 誰よりも権力に従順な男クラウス。それが借りて来た猫よりも大人しくなってしまっている。クラウス、どうしたクラウス!


 辺りを見てみるが、クラウスが頭を下げるような大物は第一王子くらいだろうと想像した。その第一王子は子爵を始めとした大物貴族たちに囲まれている。将軍もそっちで会話していた。


 この男は第一王子ではない。


 艶のある黒髪。前髪長めで片目にかかってる。ゆるくウェーブがかかっていて色気があった。瞳は血のような深紅。女性にも負けない白磁のような白い肌と、常に笑っている口元。しかし、全然笑っているようには見えないんだよな。


 歳は俺たちより上。姉さんたちよりも少し上か同じくらいかな?となると王立魔法学園の生徒ってことにもなる。


「第2王子、ロワ・クリマージュ殿下……。なんであなたがここに」

「兄上がこれから命がけで魔獣を倒そうというのだ。腹違いとはいえ、弟の私がいて不自然か?」

「いえっ、それは……」

 不自然なことは無いっぽいね。


 しかし、敢えて不自然と心の中で指摘しておこう。小物故に、口にはしないが。

 第一王子がここにいるのは伯爵との密約故だ。


 王子たちは未だ誰も、皇太子の座に座っていない。その関係性はかなり悪いと伝え聞く。それなのに、情報がこの第二王子に伝わるとは思えなかった。


 親切で兄を労いに来たとは思えない。どうせ何か金か権力の匂いを嗅ぎつけてやってきたんだろう。それか、近くにいたかのどちらかだ。


 ふと、生命の神エルフィアとの戦いを思い出した。あの時、ジンが神に「王子がカンカン」だったと口にしていた。


 果たしてその王子は一体誰のことやら。

 あなただという確信はないが、あの誰にも後ろ指をさされない性格の第一王子とも思えない。


 もしもこいつがジンをそそのかした人物なら……ナイスクラウス!!よく、酒をぶっかけた。心の中でそっとガッツポーズ!


「クラウス君、私の服が台無しだ。びちょびちょだし、このままでは夜会を楽しめない。大変なことをしてくれたな」

「えっ……あっ……す、すみません。どうか見逃して下さい」

「そうかね。君が私にぶつかった際のあの不遜な態度。もしも私がそこらの小物だったら君は許していたかね?」

「あっあっ……」


 なんか今度は第二王子を応援したくなってきた。

 その通りである!クラウス、お前も痛い目を見た方がいいかもしれない。


 それにしてもこのロワ・クリマージュ。声質こそ優しさが籠っているが、抑揚の無いしゃべり方は自然と相手にプレッシャーを与えて、心を押しつぶす。

 2人の関係性は知らないが、クラウスが今にも泣き出しそうだった。


 スキルタイプに関係するのか?はたまた生まれ持った特別な才か。この王子の言葉には人を支配洗脳する陰湿な匂いがあった。


「そうだ。王都での約束を覚えているかね?君がミリア嬢に会いたいからって私が便宜を計ってやった件だ。たしかなんでもしてくれるって言ったよね」

「あっ、はい……。もちろん……」

「優しくしてやったのに、恩を仇で返されるとは。気分を害された。その約束を今果たして貰おう。クラウス、私は今豚肉を食べたい気分だ」


 ……俺と一緒だ。あっちに酢豚があったことを伝えて、場を丸く収めたいが、なかなか話に入れない。ロワの放つなぞのプレッシャーが俺に口を開かせない。


「そうだ、クラウス。豚のモノマネをしてくれ。今ここで四つん這いになって、豚の真似だ。君にお似合いだから、是非見せてくれ。今日は英雄たちを送り出す夜会だ。皆を盛り上げるためにも、いい余興となるだろう」

「豚……ですか?すみません、殿下。それだけは。ここには我が伯爵家の家臣も配下の貴族もたくさんいます」

「君は約束も守れないのか。ただの無能だけに留まらず、第二王子である私に嘘までも。確かに言ったはずだ。なんでもやると。君のその愚かな頭で考え、その口で発したはずだ」

「はい……」


 もう泣いちゃいそうだ。

 やめてあげて!


 クラウスは小刻みに震えながら、膝をおり、手をついた。その場に四つん這いになる。

 ロワへの恐怖。クラウスを操るような言葉。人生で味わったことのない屈辱と羞恥。全てがクラウスにのしかかり、体の震えがますます大きくなる。


「……ぶ、ブヒ」

「なんだそれは?余興だと言っただろ。そんな消え入りそうな鳴き声で誰に聞こえる。それに君は豚を見たことが無いのか?豚はもっと肥え太っていて、食に貪欲で、活発だ。さあ、何をやるべきかわかるだろ?伯爵の息子なんだ、そのくらいはわかるね」

「……は、はい」

「違うだろ。鳴き声が違うだろ」

「ブヒっ。ブヒ」


 見てられるのもそこまでだった。


 クラウスはな、クズでボケで、アホで、タコなすで……あれこいつ良いとこあるか?

 ……まじで嫌なやつだけど……まじで嫌なやつです、はい。肯定しちゃった。

 思い返してもめっちゃ嫌なやつだな。一発ぶん殴りたくなってきた。


 けどな、流石にやりすぎだ。

 ここは伯爵領の影響下が大きい、ローズマルの地だ。


 遠方からひょいっとやって来た大物貴族とはわけが違う。

 俺たち有象無象の田舎小物貴族の盟主であられる伯爵家の御嫡男だ。


 めっちゃ嫌なやつだが、大衆が見ている前でこの仕打ちはあんまりだ。下手したら一生ものの心の傷になり兼ねない。


 ロワの謎のプレッシャーに抗う意味も込めて、俺は長卓を拳で殴りつけた。


 身体強化を使用しているので、ドンと強い音がなり、テーブル上の大皿に並んだ料理たちが一斉に5センチほど宙を舞った。飛べない料理はただの料理さ。

 大勢の注目がこちらに集まる。


「なんだこの茶番劇は……!」

 ハチは激高した。


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― 新着の感想 ―
自国を守るのにこんな理由用意する必要ある??
私は魚あんまり好きじゃないので毎回のマグロ例えがさっぱり分かんねえです
伯爵様は器がちっちゃいけど 大物に太いパイプがある有能な方。 よ!小物の星!!
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