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5.新生活はウキウキと

 昨夜はあまりよく眠れなかった。まどろんだような状態が続き、とりあえず時計を見てみると、針はまだ6時になったばかりだった。

 これ以上眠ることも難しそうだ。もう起きてしまおう。


 ・・・昨日の出来事は夢だったのだろうか・・・。


 廊下に出てみると、大豆さんが使うことになったはずの両親の寝室だった部屋の扉が、開いたままになっている。

 部屋を覗くと両親が使っていたときのままの家具が並ぶ部屋の中央に、布団が敷きっぱなしになっている。布団には彼女の寝ていたらしい窪みが残っていて、その上に寝巻だったらしいTシャツとスウェット素材のショートパンツが散らかっていた。

 

 現実だ・・・やっぱり昨日のクローン少女はいたんだ・・・。


 いつもなら休日の朝は起きると洗濯機を回し、その間に朝食を作ったりする。今日は大豆さんの寝巻は洗うべきなのだろうか、朝食は二人分用意したほうがいいのか、などと考え出すとなんだか落ち着かなくなってきた。


 大豆さんはどこに行ったんだ?この寝巻は洗濯したほうがいいんだよな・・?


 なんとなくTシャツを手につまみ持ち上げ顔の位置まで持ち上げてみる。ポケットが胸元についているだけのシンプルな白いTシャツだ。わずかにぬくもりが残っていて、少しドキドキした。


「ふーん。私が一晩中着ていた服の匂いを嗅いで、何に使おうとしているのしら?」


 後ろから声が響き、僕はびくっと身体を震わせる。

いつの間にか、彼女が部屋に戻ってきていたようだ。


「あ、こ、これは、匂いをかいでるわけでは・・・、え!?、あれ!?」


 大豆さんは、上半身にはグレーのスポーツブラ、下半身にはおそろいのブリーフ型のパンツを身に着けただけで、ドアのところに立っていた。肩からバスタオルをかけているが、胸のふくらみや脂肪の少ないお腹、縦長のおへそがはっきりと見えている。シャワーを浴びていたのか、髪の毛が少し濡れている。

 彼女はペットボトルの水を片手で揺らしながら。顔はにやにやとこちらを見ていて、明らかにとまどっている僕を見て、楽しんでいる様子だ。


「ふ、服を着てくださいよ!恥じらいとかないんですか?」


「何を言うの。私は恥じらいの塊よ。私に向かってそんなことを言っている自分を恥じなさい。ほら、興奮して使い道のない道具が恥ずかしいくらい膨らんでいるわよ」


 くー、く、悔しすぎる・・・。クローン人間ってみんなこんな性格なのか?



「なかなか美味しいじゃない。おかわりよ。もぐもぐ」


 朝食はわかめと豆腐にネギを散らしたお味噌汁、さらにだし巻き卵を作った。

 彼女は僕が起きる前に、マンションの周囲を1時間ほどランニングしていたようだ。運動嫌いの僕と違いガールズ・ファイトクラブに出場するだけあって、身体はかなり鍛えられている。

 そういえばさっき見た彼女のおなかも贅肉はまったくなかった。白くて、引き締まった腹部は・・・・正直とても魅力的だった。


「よく食べるんですね・・・。僕、今日と明日は休みなので、朝食とか作れますけど、月曜からはどうしますか?」


「あら、タマちゃんはずっと休みよ。さっきあなたの上司の下仁田だか、下ネタだかいう名前の人にメールしてあげたわ」


「え!?な、何をしたって言いました???」


「下ネタとか言う人に、過労で入院するので、労災扱いで1か月休みますって連絡してあげたのよ。大会の準備があるのに、ポンコツロボットの修理なんかしてられないでしょ?そんなのは下ネタにやらせときなさい」


「え・・・・・へ、あ!?・・・・」


 僕はあまりの彼女の行動力に、リアクションをとることも忘れて呆然としてしまった。1か月の休暇?過労で入院?入院なんかしていませんけど!?


「あ、にゅ、にゅー、入院て、え、し、診断書とかいるんじゃ・・・」


「そんなものあとで適当に作っておけばいいわよ。よかったじゃない。労災だから給与も出るわよ。私のおかげね。感謝しなさい。明日からは、毎朝私の方を見て、手を合わせて祈りを捧げながら土下座することね」


 あまりの横暴ぶりに開いた口が塞がらない。昨日まで、長時間労働に嫌気が差していたのに、明日からは1ヵ月も休みのようだ。

 ふと携帯を見てみると、下仁田係長から何回も着信が入っていた。


「ああそうそう。念のためメールで休暇を認めない場合、労働基準監督署に通報すると入れておいてあげたわ。下ネタはちょっと焦っているかもしれないわね。うふふ」


 恐ろしい人だ。しばらく下仁田係長と会話をするのはやめておいた方が良さそうだ。1ヵ月後、僕は無事に会社に戻れるのだろうか?


「さて、これでタマちゃんも安心して私と大会の準備ができるわね。午後からは少しつきあいなさい。タマちゃんにも足を引っ張らずに頑張ってもらわないとね」


「は、はあ・・・」


「相変わらず、やる気が感じられない返事ね。敬礼しながら大声でやらせていただきます!とか言えないのかしら?大声でやらせてって言われても困るか・・・」


 大豆さんはぶつぶつもぐもぐと呟いたり、お代わりのご飯を食べたり忙しそうだ。僕も午後から大会の準備を始めるらしい。なんだか不安しかないけれど大丈夫なんだろうか・・・。









 

 















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