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32.カーテンの向こう側

「タマちゃん、・・・タマちゃんの好きにしていいのよ。好きなところを、好きなだけ触って、好きなようにしていいの・・・」


 蛍光灯の明かりの下、大豆さんの真っ白な肌が目の前ある。大豆さんの手が僕の頬を優しく撫でて、唇が重なる。

 大豆さんは気づけば服をまとっていない。なだらかな曲線の全てが視界に納められるはずなのに、僕は大豆さんをしっかり見ることができない。


 僕自身も裸だ。シーツの上で大豆さんの手と僕の手が指先まで繋がっている。大豆さんとひとつになれた気がして、嬉しくなる。


「タマちゃん、・・・もう、何もしないの?」


 耳元で囁く声が、すごく生めかしく、僕は下半身が大きくなってきたのを感じ、恥ずかしくなる。


「だ、大豆さん!」


 

 Dr.アズキのアシスタントの女性ふたりが僕を醒めた目で見ている。キョロキョロと周りを見てみると僕は病院の簡易的なベッドに寝かされ、点滴が身体には貼りついていた。

 周囲の片側をカーテンで仕切られているので、誰かと相部屋になっているようだ。もう反対側には小さなテーブルがあり、何枚かの書類と準備しかけの薬が置いてある。おそらく何か作業していたと思われるが、ふたりとも今は視線をこちらに向けて固まっている。

 肋骨の痛みがほとんど感じられないので、治療が終わっているのだろう。

  

「ずいぶん元気になってますね」


 確かに身体は劇的に回復している。正直信じられないくらいだ。

 しかしながら、アシスタントの方々は回復を一緒に喜んでくれるでもなく、その視線はずいぶん冷たい感じがする。

 視線の先を見てみると、僕の持ち物がこれでもかと誇らしく屹立していた。間違いなく先ほどの夢の影響だ。素晴らしい夢だったけれど、これはよろしくない。


「あ、いや、これは、し、自然現象で、あの、すみません・・・」


 モゴモゴと言い訳をしていると、カーテンの向こう側からDr.アズキの声が聞こえてきた。


「あら〜、さすがアズキちゃんだわ!お尻も真っ白でシミひとつないじゃない。かわい〜!!どう?ここらへん痛みとかない?」


「ありがとうございます。あ!・・・そ、そこはちょっと治療と関係ない・・・、あ、アズキ先生!、な、何してるんですか!?」


「いーの、いーの、レイアちゃんはじっとしてなさい。アズキ先生がいろんなとこを診察してあげるから」


「あ、ち、ちょっと・・・、そ、そんなとこに・・・い、や、・・・あ!」


 横にいるのは大豆さんとDr.アズキに間違いなさそうだ。なんだかすごくマズいものを聞いてしまっている気がする。大豆さんの声が夢の中と同じように生めかしく聞こえるのは気のせいじゃないような・・・。


「そう言えばレイアちゃん、まだ処女だもんね〜。ちゃんと確認してあるよ〜。ふふ、まだ慣れてないんだね〜。うん、いーよ。そーいうのアズキちゃん大好き」


 いや、絶対に聞いちゃマズいことを聞いてしまった。だ、大豆さん、あんなセクシーなのに、まだ・・・。嬉しいような、いや、嬉しいのか。僕も無駄にますます固くさせてしまい、必死で隠しているが、完全に変質者のようだ。


「あ、・・・ホントに・・・あ、・・・あ!、あ!、ああ!!」


 カーテンの向こうの声が少しずつ大きくなる。漏れてくる掠れたような声のトーンが高くなる。


「はーーーい、小麦さん、点滴終了でーす!」


「は、はいー!」


 アシスタントの女性が、隣の様子などお構いなしに大きな声をあげると、僕もびっくりして思わず返事をしてしまった。

 しまったと思い、慌てて口を抑えたが、カーテンの向こう側も急に声が聞こえなくなり、パサパサと慌てた感じの衣擦れのような音がする。


 しばらくするとカーテンが開き、何ごともなかったような顔のDr.アズキと真っ赤な顔の大豆さんが現れた。


「どう?肋骨のヒビは最新の骨細胞活性ワクチンでほとんど修復できているでしょ?後でギプス替わりのプロテクターもあげるから、試合中はつけておくといいわ。頑丈なプロテクターだからトゥー・エックスに殴られても割れないわよ」


「あ、ありがとうございます」


「レイアちゃんの治療もバッチリよ。アズキちゃんがかわいいレイアちゃんのために頑張ったからね。スベスベツヤツヤ、プリプリのかわいいお尻に仕上がったわ。スットコドッコイ、あんたは触ったらダメよ」


「は、はい!」


「あとはそうね、スットコドッコイに説明したあれを人工的に発生させる薬剤を用意しているわ。まだ治験段階だから試合中の使用は控えた方が良いわね。死んじゃったらヤだしね。ホントにヤバイときは・・・まあ、それでもやめた方がいいわね」


 大豆さんは真っ赤な顔のまま、僕のことを何も言わず睨みつけている。何も言わないが言いたいことが、すごくありそうな顔だ。

 秘密兵器も気になるが、差し当たって大豆さんのご機嫌をなんとかとらなくてはいけなそうだ。


「さ、これで治療は終了!あとはチャッチャッとトゥー・エックスをやっつけて、うちに入社してね。エレベーターで下まで送ってあげるわ」


 

 3人でエレベーターに乗り込む。外を見るとすっかり日が沈み、夕焼けが何もない平野を美しく染め上げている。木々も田畑も境目を失うようなオレンジに塗られている。綺麗だった。

 大豆さんとこの景色をまた見たいと心から思った。
























 

 


 


読んでいただきありがとうございます。物語は残り1/3くらいです。引き続き毎日1、2回更新予定です。

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