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31.アズキ先生と一緒

「まあ、うちの会社的にもあなたたちがガールズ・ファイトクラブで優勝するならいてもらう方がいいのよ。何しろすごい宣伝になるからね。うちの警備用クローンの性能をアピールできるでしょ。まして、レイアちゃんを作ったのは私なんだから、他社に取られるなーんてことがあっちゃマズイわけよ」


「でも、私は会長を守れず、追い出されたはずよ、私が犯人と言う人もいたわ・・・」


 大豆さんの声には明らかに戸惑いが含まれている。どういった状況なのかはわからないけれど、大豆さんなりに責任を感じているのだろう。


「レイアちゃん」


 Dr.アズキは大豆さんの前に歩いていくなり、その胸ぐらをグイッとねじあげた。眉間にしわを寄せながら口元だけ笑いを浮かべて大豆さんを覗き込む。


「なーーーーーにガタガタ言ってんの?レイアちゃんは断ったりなんかできる立場だったかしらーー?いい、私の付き人になるのが嫌だっての??ああ??ケガを治してほしいんでしょう??私以外にレイアちゃんのけがを治して、明日トゥー・エックスなんて化け物と闘わせられる人なんてこの世界にいましたっけーーー??」


 これでもかという大声を大豆さんの耳のそばで叫ぶと、今度は大豆さんの頬を両手でつぶしながら、ぴったりとくっつくくらいに顔を近づける。


「レイアちゃんには選択肢なんてないんだから、素直にはいって言えばいいのよ、あ、わかった???」


「は、はい!」


 Dr.アズキのあまりの迫力に思わず大豆さんは返事をしてしまっていた。しかし、あれを断れるのは相当の肝っ玉の持ち主でなければ無理だろう。


「そこのスットコドッコイ!!」


「は、はい!」


「お前もおまけで契約してやる。大日本なんてクソ会社に戻るなんてできねーからな。アズキちゃんの兵隊として忠誠を誓って働け!わかったな!」


「は、はい!」


 大豆さんだけでなく、僕もあっという間に契約することになってしまった。なるほど、中芋さんや米作が会いたがらないのも完全に納得だ。逆らえる感じはみじんもない。


「ちなみに優勝しなかったら、この契約はなしよ。アズキちゃんのもとで働きたかったら、死ぬ気で勝ってきなさい!!わかった??返事は!?」


「はい!!」


 僕と大豆さんは声を揃えて返事をする。入社していないのに、この会社は軍隊的でえげつないほどブラックなのがひしひしとわかるのは、気のせいではないはずだ。





「さて、レイアちゃんには3つの仕事をやってもらいたいの。レイアちゃんにしかできない大切な仕事よ。スットコドッコイもアシスタントにつけてあげる」


 Dr.アズキの口調が穏やかになった。仕事モードの時はこうなのだろう。二重人格というかジキルとハイドのような変わり身だ。


「一つ目、アズキちゃんの警護よ。会長を守る任務に失敗してクビにしちゃったけど、レイアちゃんは優秀なボディガードだったって、みんな言うのよね。まぁ、ガールズ・ファイトクラブで決勝に残るってことは、レイアちゃんの性能は間違いなく高いのよ。私が作ったんだから当たり前だけどね。見た目もなかなかかわいいし、個人的にも私好みでもあるわ」


 最後の私好みのところで、Dr.アズキはペロリと唇を舐めた。一瞬米作のいやらしい顔が頭をよぎったが、女性同士だし、変なことはないだろう・・・。よからぬことばかり考えてはいけない。


「二つ目、レイアちゃんには会長の死の真相を調べてもらいたいの。いまだに犯人は捕まっていないわ。レイアちゃんを疑ったのは、現場の惨状にレイアちゃんの暴走した痕跡があったからよ。まあ覚えていないのかもしれないけどね。よく考えたら、人権を欲しがっていたレイアちゃんはうちにいた方が確実にメリットがあるから、別の誰か、内通者がいるはずなのよ。とはいえレイアちゃんには責任があるんだから喜んでやってくれるわよね」


「わ、わかったわ。優勝したら頑張るわ」


 Dr.アズキは笑顔のまま、大豆さんに近づき、その足を蹴飛ばした。突然の行動が多くて、本当に恐ろしい。


「返事は“わかりました”よ。優勝したらじゃなく、優勝するんだよ」


 礼儀にはずいぶん厳しいようだ。入社したあとはパワハラ三昧の毎日が待っていそうだ。覚悟を決めておいた方が良さそうだ。


「三つ目、私の研究に協力すること。これはレイアちゃんの暴走にもかかわることだわ。あとでスットコドッコイのほうに説明するわ。・・・・あんたも協力するんだよ」


 そういうとDr.アズキは鬼の形相で僕のことを睨みつける。なんだか意味深だ。暴走って何だろう・・?

 しかしなんだかわからないが、この人に逆らうようなことはやめておいたほうがよさそうだ。僕は首振り人形のように首を縦に振って従順の意志をこれでもかと示してしまった。

 

「さて、それじゃ治療に入りましょうか?スットコドッコイに今の件をちょっと説明したら、レイアちゃんはアズキちゃんがじっくりとネチネチ診察してあげるね。スットコドッコイは説明が終わったらアシスタントが適当にやってくれるから大丈夫よ」


 なんだか僕に対する扱いが、ずいぶんいい加減な感じもするが大丈夫だろうか?

 すぐにアシスタントの女性が3人やってきて、治療の準備作業が始まった。アシスタントのうちのひとりは大豆さんを治療室に案内していくようだ。



「・・・さて、じゃあ本題に入るわよ。レイアちゃんは、会長が亡くなったときどーも暴走したみたいなのよね。そのときレイアちゃんの身体に何が起きたのか、それを調べたいのよ。そこがはっきりしないとレイアちゃんは殺人クローンのレッテルを貼られたままになっちゃうのよね」


「ぼ、暴走ってなんですか?」


「正直はっきりとわからないわ。何かのきっかけで、彼女の潜在能力か解放される現象が起きたみたいなのよ。周囲にいる人間も危険だし、レイアちゃん自身も暴走した後はボロボロになっていたわ。事件の後、レイアちゃんに調べてみたら、人工関節や人工筋肉は全て交換が必要なほど酷い状態だったわ」


「は、はあ・・・」


「まあ、スットコドッコイは知識として知っておくだけでいーわ。ただ危険だってことだけ理解しておきなさい。ひきわり納豆みたいな脳みそでもそれくらいはわかるでしょ」


 正直なんだかよくわからぬまま、Dr.アズキの話は終わったが、大豆さんにはまだまだ僕の知らない秘密があるようだ。

 いろいろ考えている僕の横で、残ったアシスタントのひとりにDr.アズキは小さな声で囁いている。


「あ、ちょうどいいからこのスットコドッコイには新薬実験やっちゃって。動物実験ではちょっと後遺症出てたけど、けっこういい感じよ。たぶん使って大丈夫だよ。使ってみないとわかんないし」


 大豆さんも気になるけれど、僕の治療は大丈夫だろうか。生きて戻れるのか不安になった。





読んでいただきありがとうございます。物語は半分以上過ぎています。毎日1、2回更新予定です。

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