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学園生活の昼休み

さっちゃんのキャラクターイメージは、堤防部の部長。

地声がカレンチャンとか強すぎるだろ。

「びっくりしちゃったよ、ぽーんって飛んでっちゃったし」


 ときちゃんが手を振り回して体育の組み手の話をしていた。


「食事中に暴れないの」


 のりちゃんに窘められてときちゃんは「だってあんなのひどいじゃん」とまだまだヒートアップしていた。確かにあれはなぁ、先生が一生徒を乱取相手に指名した挙句に吹っ飛ばしてしまえばなぁ。


「ジェーンにあの程度、どうってことないよ」


 確かにのりちゃんは怪我をしなかった、空中でくるんと一回転してきれいに着地をしていた。

 のりちゃんをジェーンと呼ぶこの上坂先輩は頭を撫でようとしてのりちゃんに手を払われていた。「さんをつけよろデコ助が」と何時ものやり取りをしている。別に上坂先輩はおでこを出していないし、セカンドネームは俊樹なのにのりちゃんはシュンと呼ぶ。

 二人の中だけの符丁が気に入らないらしいときちゃんは、上坂先輩に突っかかるのを、私は内心ハラハラしながら見守っていた。あの人は絶対ヤバイっていつも言ってるんだけど、のりちゃんのことになるとムキになっちゃうからなぁ。


 のりちゃんはのりちゃんでおにぎりをモグモグ食べて我関せずである。


「っていうかなんで上坂先輩は、一年の教室に入ってきちゃうんですか?」

「ジェーンに会いに来たからかな」


 お昼の時間になるとのりちゃんに会いに来る上坂先輩をまこうと、毎回違う場所でお昼を食べるのに情熱を燃やすときちゃんは全敗中だ、のりちゃん曰く匂いをたどってくるらしい、獣人でもそこまでじゃないだろと思うのに、お昼時間になったらすぐのりちゃんの所までくるので、本当の事なのかもしれない。

 のりちゃんの隣に自然に座る上坂先輩の目がものすごく優しいけど、なんか近くない? のりちゃんはパーソナルスペースに男の人が入ってくるのを嫌がるはずなのに、私たちだってそこまで触らないよ、それを受け入れているのりちゃん大丈夫? 苦手だって言ってたおっきい男の人だよ??


「チョーカーとリボンを着けてくれたんだね」

「女に首輪をつけて喜ぶなんて、趣味が悪い」


 そういってもみあげを長い耳にかけて見せつけた首筋には、一目でマジックアイテムと分かるチョーカーが巻かれていて、腰まである三つ編みの先に青いリボンが結んであった。野生の猫みたいな警戒心ののりちゃんが男の人から送られたアクセサリーを身に着けるだなんて、普通の関係じゃないですって公言してるようなもんだ。


「よく似合っている、可愛いよ」「シュンにしてはセンスがいい」なんて掛け合いは恋人同士の関係じゃないと出てこないよね? のりちゃんに確認してみたら、弟みたいなものだって言ってたけど、弟はアクセサリーをプレゼントしたり髪を撫でたりしないよ? あと先輩だからね。


 上坂先輩は将来を嘱望されるダンジョン探索者だ、学校が休みの日に探索に行くだけでプロの探索者の何倍も稼ぐし、実績もすごい。スタンピートが起こったダンジョンの攻略でダンジョンコアを破壊したパーティーに臨時で参加していたとか、階層ボスが強すぎて未踏破で放置されていたダンジョンの階層ボスを倒して解放したとか、そんな事実がいっぱいある。

 でもそれは表の顔で、裏にはヤバい噂がいっぱいある。学園の裏ボス、マフィアと関りがある、裏家業の人たちが道を譲って見えなくなるまで頭を下げている、町の半グレ集団が居なくなった、学校で悪いことをした人たちが登校しなくなったのは……。そういえばのりちゃんがクインビーに絡まれたのもこの人のせいだし、クインビーが転校したのもこの人のせいだって噂がある。せめてもの救いはダークヒーロー的な噂しかないことだけど、暴力の影がちらつく人だった。


 のりちゃんの事を自分のパーティーメンバーに勧誘しているんじゃないかって噂になってるけど、のりちゃんには安全な場所にいてほしいってずっと言っている。こうやってのりちゃんを自分の物だってアピールすることで、のりちゃんがほかの男の人からアプローチされることを防いでいる。

 いい人なんだけど怖いんだよなぁ、私の魔眼も気づいてるし、使うとすごい目で睨んでくるので怖くて使えない。一度だけ見たイメージは爆発寸前の核爆弾だった。


 イチャイチャを見せつけられて、モーモー言って抱き着いていたときちゃんの腕の中で、のりちゃんが寝始めた。お昼を食べた後、のりちゃんは5分から10分くらい寝てしまう。自由過ぎるだろ子供かよって思うけど、眠っているのりちゃんの顔はどこからどう見ても子供なんだよなぁ、私より胸がデカいくせに、くそう。


「めんどくさくて難しい子だけど、ジェーンと仲良くしてくれてありがとう」

「いわれなくても仲良しですー」


 上坂先輩はこっちはこっちで保護者みたいな顔をしてるし、あんた高校生でしたよね? のりちゃんは何時ものように光の粒子が沸きだすようにキラキラ光り始めた。


「光るのを始めてみたの時はビックリしました、校長先生が入学式の訓示を述べている時にこの子爆睡してたんですよ」

「あ~やるだろうねぇ、式典とかすごい嫌いだから」


 そういってまたのりちゃんを撫でた上坂先輩の手に、のりちゃんはぐずる様に甘える様に頬をこすりつけていた。ぐっと左手を握りしめて何かを耐えきった上坂先輩は「じゃ、あとはよろしく」そう言って逃げて行った。


「これで恋人じゃないって無理が無いですかねぇ」


 さきちゃんは膨れて文句を言いたそうにしているが、のりちゃんを起こさないように黙って抱きしめていた。上坂先輩とのりちゃんの関係は本当に謎だけれど、まぁ守ってもらえてるからいいかなって、楽観的に考えることにした。

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