学園生活の授業1
授業は割と楽しい。
今世の歴史は、1次大戦直前までは前世と同じだったらしい。オーストリアの大公暗殺事件の代わりに、大崩壊と呼ばれる人類存亡の危機との覚醒と呼ばれる人類の魔力の再発見とが同時に起こって100年、なんやかんやあって現代にいたるらしい。
人類史を100年という単位で比較検証できる私は歴史学者垂涎物の神の視座に居ると言えるだろう。
社会学的にみると経済と資本に大きく依存した社会だった前前世と、個人の才覚に大きく依存した今世の違いや、科学技術の発展に魔導技術が合わさり、ウォーロックエンジニアと呼ばれる、滅茶苦茶マッドな天才科学者がブレイクスルーを突破していく様はすさまじく、比べてみると面白い。
前前世でも割とマッドな科学者がいっぱい居たが、今世のマッドさは常軌を逸している。天才に魔力という武力を持たせると世界が壊れるわ。あ、大崩壊でもう壊れてたわ、じゃぁ対消滅させたら世界救われんじゃね? そんな歴史である、超楽しいな。
科学技術が魔導化学と融合しても収斂進化しているが、ベースが人間である以、欲求もさして変わらんのかも知らん。まぁ個人の資質に大きく依存しているという違いはあるんだけれども、パソコンみたいなやつやスマホみたいなやつやインターネットみたいなやつもちゃんとあるしね。
「のりちゃんはまじめだねぇ」
前の座席に座るさっちゃんが歴史の先生が退室すると同時に振り返ってきた。
「おもしろいよ、ウォーロックエンジニアが破界にチャレンジしてるのとか憧れる」
そういうとさっちゃんは、「うわぁ」と苦笑いを浮かべた。
「次は体育だから早くいこ」
後ろの席に座っているときちゃんに肩を叩かれたので、勉強道具を片付けた。
仲良し三人組である、我ながら女子高生してるぜ。
まぁこの学園に三人しかいないエルフだから、一つにまとめられているというのもあるんだろうなぁ。多種族が共生している社会では、マイノリティは団結が強くなるので、ありがたいっちゃありがたい。
さっちゃんとときちゃんの取り留めもない話がよく尽きないものだと聞き役に徹しながら女子更衣室のドアを開ける、まぁ肌色と布面積が狭めのパステルカラーの世界が広がっているのも今世で4年女やってるわけだし見慣れたもんだ、反応する物もついてないしな。
ぱっぱと脱いで学校指定のジャージに着替えようと夏服のブラウスを脱ぐと、私の下着姿を見てさっちゃんがため息をつく。
「どんどん残念になっていくねぇ」
そんなン言われましても、カップ付きのホルターネックキャミソールは楽でいいんだよ?
「金太郎の腹かけみたいでかわいいでしょ」
「そういうとこだよ?」
ときちゃんが追撃してくる。そんなにダメか? ブラ付けなくても保持力が高くてお気に入りなんだが。あとネットに入れなくても洗濯できるし、真ん中に〇金と書かれているのもポイント高い。
「初めて見たときは、とんでもないお嬢様に見えたのになぁ」
「貧乏か、貧乏がそんなに悪いんか!」
「そういう突っ込みづらい事いうのはやめてね」
あ、はい、すいません。
「私とときちゃんは見学だけど、のりちゃんは頑張ってね」
着替えを終えて三人でグラウンドに来たがここでお別れだ、見学以前に受ける授業も違うしな、なんで私だけフィジカルクラスなんだよ、疲れることしたくないよ、まぁ前世を引きずってるからだけどさ。
「おだいじに~」
女の子の日は大変だな、まぁ私はまだないんだけどさ。