学園生活の朝
アロエリーナって使って大丈夫かな?
ダメだったら改名で。
目覚まし時計に目をやると5時だった。朝日がカーテンの隙間から差し込み光線を描いているのをボケーっと眺めながら今日の予定なんかを考えていた。
月曜日だから学校に行って、帰りに師匠の所でおさんどんのバイトして、ん~あとなんかあったかなぁ? あ、夏服に衣替えもしないとなぁ制服の夏服出してあったし今日から着るか~。朝ごはん何があったかなぁ
寝起きの布団の中でうだうだやってるこの時間のためになら早起きするくらいには好きなんだなぁ。
よし、起きるか。
布団を整え畳んでちゃぶ台を出して制服に着替える。牛乳と千切りキャベツをオーブンレンジにかけながらトマトをスライス。
貧乏が、貧乏が悪いんや……まぁキャベツめっちゃ食って悪いことなんか無いんですけどね、千切りキャベツに火を入れると量が食べられるようになる不思議。
エルフボディになってから食物繊維を摂取しないと満足しない体になってしまった気がする、いやこれ気のせいじゃねぇな、ご飯も玄米一ぶづきが一番うまいし。なんだろねこれ。
お弁当用に焚いておいた玄米をおにぎりにして味噌を塗ってキャベツと牛乳を取り出したオーブンレンジで焼いておく。
オーブンレンジは良い物を買ってしまった、本当に便利なんだよなぁ、オーブンとスチームオーブンと電子レンジとグリルとトースターの機能がオールインワンで、付属のスープパンでお米も焚けちゃうし、食べられるものを作るのが趣味な私にマストなアイテムだった。4畳半暮らしにはオールインワンがマストなんよ。
ササっと食べて片付けて、粗熱をとった玄米味噌焼きおにぎりにたくあんをそえてラップで包んで弁当包みででまとめてお弁当の準備も完了。
窓を開けるとベランダと呼ぶにはおこがましい転落防止柵にサボテンとアロエのあいのこの様な謎植物の鉢植えがあった。こいつはバイト先の沼ダンジョンでなんとなく採取して育てている。
一人暮らしってね、意外とさみしいんよ。私は孤独耐性が高い方だと思うけど、やっぱり人間はある程度群れる生き物なんだなって実感する、一人でいるとだんだん情緒が不安定になっていくのが自分でわかる。女になって顕著になった気もする。
なので鉢植えに話しかけることにしたのだ。一方通行ので寂しい奴みたいな行為に見えるが実はそうじゃない、なんとこのエルフボディは植物と会話ができるのだ。
うんまぁ人間相手の言葉を介したコミュニケーションじゃないんだけどね、向き合って声をかけていると、なんとなく意志みたいな物を感じることができるってだけで。
「おはよう、今日は日差しが強そうだね」
水を多めに入れといて? そうだね~あ、液体肥料はこれくらいでいい? 今日の魔力もあげとくね。
なんやかんや世話をしていると、アロエみたいな棘のあるウチワサボテンみたいな本体から、ポコッとコブが生えてきて、みるみる大きくなっていく、私の握りこぶしくらいの大きさになるとポロっと落ちるたのをキャッチする。
「今日の返礼品? そんな気にしなくてもいいのに、あ、この鉢植えだとこれ以上大きくなれないから余った栄養を? うん、なんかごめん、うんありがとう」
なんか傍から見たら独り言の激しいヤバい奴みたいだけど、呼びかけに反応があるから問題ないのだ、誰にも見られてないしな。
この謎の実を割ると中からオレンジ色の果肉とゴマ粒くらいの種が詰まっている、かなり甘いのでデザートとしてありがたい。
「種とか食べちゃって大丈夫なの? 未消化の奴がある程度残るからまき散らしておいてくれって?」
それはちょっと難易度が高いから、種を取り出して学校の花壇とかダンジョンとかに植えとこうか。
「じゃ、行ってきます」
返事はないけれど、窓の向こうでアロエリーナ(命名)が揺れているのを確認して玄関のドアを閉めた。