それからと、これからと
エピローグを書いていたんですが、ちょっと長くなったので分割しました。
それから本家に連れて帰ってもらったら大変だった。
道隆様と百合子様にめちゃんこ叱られて、監禁一歩手前の軟禁状態になったり、トイレやお風呂などの一人になるスペースには窓に鉄格子までついた。24時間体制の監視もついたしGPSの付いた腕輪まで着けられた。中でも、百合子様が筆頭で私の世話役になってくれた。
道隆様60歳、百合子様45歳、孝道様29歳、私15歳、とても意味深。
百合子様は道隆様のお部屋などを掃除する見習いメイドだったんだって、道隆様が「血は争えんな」と、ガッハッハ笑いには、私も苦笑いだ。百合子様も私のお世話を大っぴらに出来るので大満足だそうな。本家に帰って翌日に、つわりが来て、それもかなり重い方だったみたいで、吐くわ寝るわで日常生活に支障が出ていたのを、百合子様が献身的にお世話してくれた。とても感謝しているし、めっちゃ懐いてしまった。
そりゃ懐くよ、ホルモンバランスが変わって情緒不安定になって、妊娠にまつわる体調変化にどうしようもなく不安で突然泣き出したりした時に、献身的に支えてくれる人生の先輩が居たらねぇ。もう「お義母さん」呼びもしますわ。
生命の樹の加護をこれほどありがたいと思った時はなかったね、寝てたら勝手に光ってるて感覚だったのが、寝たらすぐ体調が回復するんだもん、百合子様も私がウトウトしてたら眩しいくらい光るって言ってた。
エコー検査で赤ちゃんが本当にお腹に居る事を確認したときは、感動したなぁ。でも百合子様のテンションがおかしくなってはしゃいでるのを見てたら、なんか冷静になれたわ。4週目って自然流産の可能性がとても高い時期だったのね、その状態でパルクールかましてたら、そりゃ怒られるわ、知らないって怖いねぇ。
6週目になると心音が聞こえるようになって、また泣いて。12週目、4か月目でつわりが収まって安定期に入ってからだんだん腹が出てきて、私は体が小さいから、なんかもう鏡に映る姿の背徳感がヤバかったね。
んで12月になって私が16歳になったから結婚式をしたんだな。まぁ私のお腹が大きくなる前にと結婚年齢18歳だけど、そこは貴族的なアレで特例でねじ込んで。神前式だった、角隠しから耳が飛び出て耳隠せてないって言ったら、割と受けた。
そういえば、国枝の名前って、皇家から頂いたらしいんだけど、ヤバい名前だったわ。
さかのぼる事幾星霜、さるやんごとないお方が、庶民の才溢れる見目麗しい娘を見初めて御囲い遊ばされたそうな、身分の違いから大層もめたそうな。やんごとないお方はその才女に「国枝」の名前を与え「国に連なるものぞ、なんぞ問題あらん」と言い放ったそうな。それ以来、庶民の娘を娶ると、その娘を「国枝」と呼んだそうな。
……ヤバいじゃん、私の名前国枝紀子じゃん。
兵部家でダメだったらうちで娶るからねって事だったらしい。怖えよ、世界最古の帝室、半端ねぇわ。まぁ国枝の娘だと、もう娶っても前例的になんも問題が無いらしい。気の長い話だが「国枝」の名前上げたよね? って恩の押し売りの返済がこの先ある。人質がらみの負債とかマジ怖いよ。
晴れて兵部紀子になれてよかったけど、娘が生まれたらちょっと申し訳ない事になるかもしれない。
お腹も目立ち始めた17週5ヶ月めに、さっちゃんとときちゃんが、お見舞いに来てくれた。
学校の事、エルフの事、シュンの事、色々教えてくれた。
学校の行事とか私が居なくて寂しいとか、さっちゃんとときちゃんはアヴァロンに帰るとか。実はさっちゃんとときちゃんは私というアヴァロン国籍を持たないエルフを見極めるためのエージェントだったんだって。さっちゃんとときちゃん自身はまったく自覚がなくて、両親がこの町に赴任することになって付いてきただけだけど、さっちゃんとときちゃんを私と接触させるための両親の人選だったらしい。それでさっちゃんときちゃんが連れてきた、エルフのお姉さんがそのエージェントを引き継ぐんだそうな。
そのエージェントのお姉さんは、50年前に最後にアヴァロンに救助されたエルフさんその人だった。そのエルフさんトゥーレさんは、大崩壊と覚醒の年に60歳のおばあちゃんだったらしい。初代エルフ達は皆もともと覚醒した人間だったんだって。別に誰かにつかまっていたわけではなく、交通と通信が途絶したド辺境の村で、50年のんびり暮らしていたらしい。でも、夫に先立たれ、息子夫婦に先立たれ、孫夫婦に子供が出来て、孫夫婦が自分より見た目が老いてしまい、玄孫が成人したとき、玄孫の男の子に求婚されたそうだ。その時、エルフと人間とでは、時間のスケールが違い過ぎて、一緒に居続けることは出来ないと悟ったそうだ。
アヴァロン側もトゥーレさんの事を把握していたけれど、定期的に接触するだけでアヴァロンに連れていくつもりはなかったらしいけど、トゥーレさんの希望で、アヴァロンに行くことに決めたんだそうな。
「だから、あなたもアヴァロンに来たくなったら私を呼んで。のりちゃんの事を覚えている人間が一人もいなくなっても、私たちは何も変わらないまま、のりちゃんを迎えに来るわ」
そういって私にヒイラギの髪飾りをくれた。これに願うとアヴァロンから迎えが来るんだって。
まぁまだしばらくはいらないかな。
んでシュンの事。シュンは私とお別れをしたあの日から行方不明らしい。孝道様曰く、私と別れたシュンと少し話したそうな。内容は教えてくれないけれど、孝道様の事だからまたろくでもない死体蹴りでもしたんじゃないかなぁ。
シュンのバイクがとある埠頭で発見されたらしいけど、そこから先は何もわかっていない。自殺したとか噂が立ったらしけど、一か月後に東欧からハガキが届いたから生きているようだ。東欧って今魔界と化していて、なんかとんでもないことになっているらしいけど、そこで元気にやっているんだろうか。
元気でやってるといいな。暗黒街のボスになってたりしないかな。傭兵としてデーモン狩りの先頭を突っ走ってたりしないかな。怪我をしていないといいんだけど。人生の道を違えてしまったけど、やっぱり心配だな。
シュンの事を思うと、胸が疼く。シュンの隣で、一緒に歩んだかもしれない未来を、時々夢に見る。その時のシュンはとても生き生きしていて、どんな苦境からも私の隣に帰って来てくれていた。そんな夢を見るたびに、胸が疼く。
胸を抑える私に、ときちゃんとさっちゃんがさよならを告げて、本家のお屋敷から帰っていった。もう仲良し三人組で一緒に遊ぶ事も、当分ないだろう。あったとしても何十年も先の事かな。




