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リザルト

おばちゃんのビジュアルは〇ピユタのドーラ。もしくは、〇ンデレラグレイのトレセンの料理主任のイメージ。

「なんとか一段落したな」

「おつかれさまです」


 日曜日の夕暮れが窓から差し込みオレンジ色になった応接セット兼休憩室に深く座り込んだおばちゃんにお茶を出し、お茶菓子を用意しようとして冷蔵庫を開けた。


「あ! タイ焼き無くなってる‼」

「経費で買ったんだから、食っていいだろうが」

「私の分もあったんですよ、も~」


 私のカバンの中から出したチョコウエハースをお茶請けに出すと、モリモリ食べ始めるおばちゃん。

 職場の上下関係に油を注しておくことで円滑なアルバイト生活が出来るならそれに越したことはないのだ。このバイト給料が破格だし。


「人を増やさないんですか? 実質ワンオペじゃないですか」

「申請中だ」


 私がアルバイトに来る前に居た受付嬢も、できちゃった婚で寿退社したらしい。


「あ、私もナンパされたんですよ」


 おばちゃんの目つきが鋭くなったので「流石に倍以上年が離れた人とお付き合いとか無いですよ~」と、笑い飛ばしておいた。付き合いとかまだ考えたことはないなぁ、ゆくゆくはそうなるのか? 肉体的には健全なわけだし? あ、その前に淫行条例に引っかかるんじゃね? 15歳だし。


 おばちゃんとそんなこんな世間話をダラダラとやりながら、終い作業を始める。

8-Bダンジョンはフィールド沼形ダンジョンで、かなり良い物が採取できるのだが、週一回のスパンでフィールドボスのワニが沸くのだ。そのワニを土曜日に駆除して次の土曜日まで採取に来る冒険者たちの対応をする業務は実質おばちゃん一人で回している。私は残念ながら学生の身分ですので、平日はバイトに来ようにも17時以降は沼への立ち入りが禁止だからやることがないし、土曜日の駆除依頼の随行員と日曜日はワニの解体の後、採取物の出荷作業をしているので、受付嬢をやって無かったりする。


「受付嬢なんて男捕まえてすぐ辞めちまうんだ、やらなくていい」


 研修の名目で一度、受付業務をやったがナンパ野郎がストーカー野郎に進化してからは一度も受付嬢の制服を着ていない。


「スマッシュライトの人たちが毎週ワニを駆除をしてくれる事になったみたいですし、よかったですね~」

「ナンパしてきたのはスマッシュライトの橘明じゃないよな?」


 そう聞いてきたおばちゃんに「異性としてではなく斥候役としてですよ」と返すと「なにやってんだあのバカは」憤慨していた。


 おばちゃんが思い出したように、応接机の上に折れたナイフを置いた。


「ワニの頭から出てきた」


 それは私が探索時の鉈剣として使っていたナイフだった。ワニを解体している最中は出てこなかったのに、そんなところにあったのか。


「あ、折れちゃってる、食べられちゃってたんですかねぇ」


 おばちゃんの探るような眼が私を嘗め回すのを素知らぬ顔で「買いなおしか~5千円したのに」と、しらばっくれておく。


「手助けはし過ぎるな」


 釘を刺されてしまった。


「今回は特異個体でしたし……あ、はい、もうしません」


 おばちゃんの目つきが怖い。

 通常2メートル位のサイズのはずが今回のワニは4メートルを超える大物だった。定期的にボスを狩り続けると特異個体と呼ばれる、何時もと異なるボスが沸くのはダンジョンの常識だった。


「あ、約束通り左前脚と、皮の三分の一は私がいただいてもいいんですよね?」

「冒険者から受付嬢に対する金品物品の授受は協会規則で禁止されている」

「随行員は受付嬢に該当しないので問題ないですよね」


 苦虫を何匹か嚙み潰した顔でおばちゃんは了承してくれた。


「じゃ、片付けも終わったんで帰りますね」


 左前脚とワニ皮を師匠の所に持っていったら日曜日の仕事は終了か、いい稼ぎになったわ~。

 明日は学校だから早めに家に帰ろう、そうやって今週も恙なく終わったのだった。

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