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久しぶりの街歩き

特に物語は進んでません。

 勢いで本家を飛び出してきた。脱出するためのタイミングを計って一週間、この朝のアロエリーナに会いに行く朝のタイミングだけがチャンスと分かって、とうとう決行である。寝巻にしていたシュミーズにカーディガンをひっかけて起き抜けのサンダル姿で逃亡するとはだれも思うまい。ポケットもないので学生だった頃の野暮ったいお財布を握りしめて自由への飛翔だ、ヒャッホー。


 距離を稼ぐため金持ち区画を全力疾走で駆け抜ける。この体のスペックを発揮するのもなんか久しぶりでテンション上がるわー。現在7時前、そろそろ町が起きだす時間で通勤であろう人たちもちらほら見受けられるが、まだ少ない今がチャンス。朝一にロングシュミーズを膝上まで捲り上げながらサンダルで爆走するエルフ少女とかちょっとした事件だな。だがそんな事を気にしてはいられんのだ、私の逃亡が本家にバレルまでの短い時間に、変装のための服一式を調達せねばならんのだ。


 ちょっとしたパルクールを決めながら生け垣を飛び越えた先に目的のバス停があった。ちょうどバスが時間通り停車した所だ、通勤の人たちの列に並んで乗り込んでしまう。バスの入りは6割くらいで、席に座れてよかったよかった。ふ~7月も半ばになると朝でもだいぶ暑いねぇ、汗ばんで火照った顔を手でパタパタ仰いで、車内のクーラーの利いた風で冷ます。


 周りのオッサン連中にめっちゃ見られてる?


 視線をぐるっと回して見てみると、オッサン連中は一斉に目を反らす。はしたない格好ですまんね、何時もの通勤のサプライズ的な目の保養だと思って勘弁してくれ。そりゃ見るよ私だって見ちゃう。でも社会人だから関わったら面倒そうだから見ているだけで済ませてくれるあんたらには感謝だわ。


 まぁ二人掛けの席に相席させていただいているお隣さんは、高校生と思しき野球少年なんだけどな。私以外男しかいないバスの中で座るとしたらオッサンよりこの子の隣を選ぶのは仕方のない事だ。真っ赤になってカーディガンの襟口から覗く私の谷間をチラっと見てからは必至で窓の外を見ている姿は初々しくて、叔父さんニヨニヨしちゃう。


 バスは順調にルートを通り人をドンドン載せていく、混んできたバスの中のオッサン率を唯一下げる私と野球少年が座る席、ここだけ非日常感が半端ないな。犯人は主に私だが。


「あの、何かあったんですか?」


 野球少年が、私にコッソリ耳打ちしてきた、耳がこそばゆい。ん~まぁ何かあったといえばあったし、事件性が有るかと言えばたぶん有るな。貴族家の次期党首の嫡男を妊娠した15歳のエルフ少女が出奔してるもんな、考えてみたらいろんな意味で大事件だこれ。


「いえ、あの、大丈夫です」


 明らかに大丈夫じゃない、だが二重の意味ですまんな野球少年、君を巻き込むわけにもいかんのだ。


「あの、俺」

「シー」


 それ以上はいけないよ、野球少年。君のジュブナイルは私を切っ掛けに始まったりしないんだ。たまたま乗り合わせたバスの隣に座った訳ありエルフ少女と、物語が始まっちゃいけないんだよ。人差し指を唇に当てて、喋っちゃダメよと微笑んでみせた。


 ボンヤリ夢を見ているような目で野球少年が私を見つめている間に、バスは目的地の商店街へ着いた。


「降ります」


 元気よく手を挙げて宣言すると、叔父さんをかき分けて運転席の料金箱へと突き進む。叔父さんたちも何とか私が通るスペースを作ろうと身を捩ってくれる。料金箱にバス代を入れてバスから飛び降りる。


「じゃぁね」


 窓越しに私を見つめる野球少年に手を振って、私はまた走り出す。野球少年よ、空から女の子が降ってくることはないしテレビからも女の子は出てこない。残念だけどそれが現実だ、ほんのちょっとだけ良い夢を見たと思って、今日の事は忘れてしまいなさいな。


 そんな事を思いながら、目的の服屋を目指した。




お風呂の中だとネタ出しってはかどりますよね。

使えるかどうかは別として。

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