後始末とこれからと
一か月間、忙しかった、ひたすら忙しかった。涼子さんが進捗とスケジュール管理をし。私が家事と付き人をし、孝道様がメインアクターとして立ち回る。解決する問題は多岐にわたった。お貴族様は婚姻に関してとかくメンドクサイ。皇室へのごご機嫌伺いに始まって貴族庁の登録更新、孝道様が私の前に仮婚約していたお相手の貴族家へ頭を下げに行って関係がこじれないような手順とアフターケア、義父の道隆様へのご挨拶が一番楽だったな、義母の小百合様もお優しそうな方でよかった。親と言えば私のお母さん、関係の再構築は諦めた、私が貴族と婚約するにあたり、整理の意味も含めて籍を移す事になった。なじみの薄かった七田の姓からさらに馴染みの無い国枝の姓を名乗ることになったが、まぁそれもすぐ兵部に変わる。
最大の懸案事項も今解決した、いいタイミングというかまぁ狙ってやったんだが、これで次のフェイズに行ける。私は証拠物件をもってトイレから飛び出した。
「赤ちゃんできた!」
お茶兼ブリーフィングの時間に大変申し訳ございませんが、色々重大な事なのですぐに共有する必要がある。私が得意満面で突き出す陽性の結果を示す妊娠検査薬を孝道様が受け取狼うとするのをとっさに遮る。あ、それは流石に恥ずかしいので触らないでいただけますか? 道隆様と私の関係で今更恥ずかしがる事もないかもしれませんが、それはそれ、これはこれです。
「でかした」
「よかったです、本当におめでとうございます」
祝福されてよかった。まだ妊娠検査薬以外に全く自覚症状が無いけども。
「これで、例の件、行けますね」
「そうだな」
「そうですね」
孝道様が考えている例の件と、涼子さんが考えている例の件が、実は別の案件なんだよなぁ。
「孝道様、私はとても大事な時期なので、夜のお相手はこれから控えさせていただきます」
「それは仕方がないか」
やったぜ! まぁこの一ヶ月欠かさず致していたわけで、今更痛くも無いんだけど、しなくていいならそれに越したことはない。
「つきましてはですね、孝道様、涼子さんを抱いてあげてください」
絶句する孝道様に追い打ちをかける。
「孝道様が女性不振になってしまったのは、もしかしたら涼子さんと拗れてしまったのが原因ではないですか? 涼子さんはそれをとても気に病んでいらっしゃいます、関係を再構築するためにも、私からお願いします、涼子さんを抱いてあげてください」
頭を下げる時にチラ見した涼子さんは口元を両手で覆いながら泣いてしまっていた。立ち上がった孝道様が私を気にするのを目で「こっちくんなあっちいけ」と威嚇して涼子さんへと誘導する。
「本当にそれでいいのか?」
どちらに言ったか判断がつかないが、二人用の寝室のドアを開けて恭しく頭を下げると、私は涼子さんが使っていた一人用の部屋へ引っ込むことにした。荷物もコッソリ入れ替えておいたのだ。
「とりあえず今日の予定は後日に延ばせるので、今日はお二人で頑張ってくださいね。あと、この子の兄弟もお願いします」
お腹をペシペシ叩いてから、二人を寝室に追いやる。涼子さんの涙でグズブズになった声にならない声を背中に聞きながら、親指を立ててウィンクをかましてやった。
「これから私たちは、最高のチームから、最高の家族になるんです」
ドアを閉めて、ため息を一つ。これからしばらくは独寝になる、抱き枕になるサイズのぬいぐるみを作っとかないと。それにもう一つの案件も片付けなければならない。刃傷沙汰にならないようにしっかりコントロールしないといけないな。
とりあえず、性の付く美味しいご飯を作らないと。
悩んだのですが、結末へと行く方針で。




