孝道様とのピロートーク
まだ大丈夫、ノクターン送りの刑にはならない。
きっとたぶんメイビー。
体がゆらゆら揺れて目が覚めると、目の前の孝道様が覆いかぶさっていた。
「ええっと、どういうことなんでしょう」
必死そうで答えは返ってこない。
「寝込みを襲うのは良くないと思うんですよ」
忙しいですか、そうですか。なんていうかもう真っ最中でしたっていうかフィニッシュ直前でした。内臓を突き上げられる衝撃を逃がすため体をねじろうとするとガッツリ骨盤を掴まれて押さえつけられた「う」とか「ふ」とか声が勝手に出る。
私のリアクションが孝道様に火をつけたのか、さらに激しくなっていく。昨日の傷は魔法で治療してもらったので、痛みも耐えられないほどじゃない、必死なのがちょっと可愛いなって思える程度には余裕がある。身長差から目の前に孝道様の胸板が迫ってくるのでなんとなくぺたぺた触ってみる。現在進行形で揉みしだかれているので触り返してみたんだけど、あんまり楽しくないな。分厚い男の胸板だ、孝道様は何時体を鍛えているんだろうか? 鍛えてないとこんな体にならないだろ、魔法的な何かがあるのかしらね? そんなことを考えていたら、どうも終わったようだ。グエ、重たいんで早くどいてくれませんかね。余韻に浸っているとこ悪いんですけど、ちょっと苦しいです。背中に回した手をポンポンしてタップの意思を示す、ギブギブ助けてー。
道長様は私を泣かせようとしないし、恥ずかしい事も強要しないし、奉仕させようともしないし、寝込みを襲われるくらいで楽でいいわ。まぁ避妊どころかガッツリ孕ませるつもりなんだもんな。DV彼氏が逃げられないようにする手段みたいになってないですか?
「痛かったか?」
ディープなキスをそんな長い事されると答えることもできませんて。
「痛くありませんでしたよ。嫌でもなかったですし辛くもないです」
そういう私の涙を孝道様がぬぐってくれる。なんか泣いているところを見られてばっかりだ。
「お前をまた泣かせてしまった」
「なんで泣いてるかわからないので、ただの生理現象ですよ」
大丈夫です、そういって孝道様の頭を胸に抱く。こうするとすごく落ち着くし男も安心する、Win-Winの関係だな。何かを思い出しそうになってザラっとした何かが頭に通り過ぎたが、涙とともに洗い流してしまえばいい。あ、吸うのは辞めてください。第二ラウンドが始まってしまいます。
「夢を見ていたんですよ」
話を変えるためになんとなく口をついて出た。まぁ言っちゃってもいいか、今更だしな。
「あったかも知れない未来の夢です。私が協会職員としてあのまま務めていたら、こんなことがあったんだろうなって楽しい夢でした」
「俺が奪ってしまった」
「そうじゃないんです。例えば、沢山の道があるんです、どの道を行くか、一つの道しか選べないんですよ。そういうもんなんです、孝道様が手を強く引いて自分の道に私を連れ去りました、確かにそうです。ですが私はそれを受け入れたんです、だから今、孝道様を抱きしめているんです」
孝道様の頭にキスをする、クンカクンカ、強い雄の匂いで胸がギュっとする、これ結構好き。
「今まで人に言ったことが無かったんですけど、私は少しだけ未来が見えます」
孝道様が驚いた顔で私を見返す。
「でも大したことは出来ないんですよ、基本自分の未来は見えません、そんなに頻繁に見えるものでもありません。見えるのは親しみを感じる人の未来だけです、それに未来って不確定なんですよ」
「俺のも見えるのか?」
「いいえ、まだですね~」
孝道様はちょっと残念そうだ。
「孝道様が怪我をする未来を見て、それを回避したとして、それは未来を見たって本当に言えるんでしょうか? それに、怪我をする道を選択しなかったら、もっと違う何かが起こる道を行っていたんですよ。その時にね、言われるんです、何で知っていたのに教えてくれなかったんだって、だから人に未来が見えることは言わないことにしていたんです」
「なんで俺にそれを教える気になったんだ?」
「私に、孝道様の未来を共有させて欲しいんです。孝道様の未来が私と共用になったなら、私は全身全霊で孝道様のためになれるんです。私には、実は意味というか、夢や使命が、目標が無いんです。自分以外の誰かの夢しか見られないんです、だから私を有効活用してください、私にあなたの夢を見せてください、孝道様が紀子を選んだように、紀子は孝道様を今選択したんです」
「紀子、愛してる、結婚しよう」
「ね、タイミングって大事でしょ?」
二人で泣いて笑って愛を確かめ合って、涼子さんに怒られた。




