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師匠との生活4

2時に目が覚めてしまった、寝なおそう。

店長に見送られながら車は走り始めた。私は助手席に座りアロエリーナは後部座席でシートベルトに固定されている。服を汚すわけにもいかないし。師匠はご機嫌でハンドルを握りながら鼻歌を歌いだす。


「もう少し手加減してくれてもいいじゃないですか」

「ハイライトの消えた目で助けを求めているお前、可愛いかったよ」

「何それヒドイ!」

「半分冗談だ、もうやらん」

「半分本気じゃないですかヤダー」


 着せ替え人形状態が永遠に続くように感じたが、実際1時間もかからなかった、夕食の予約をしていた店の時間になり、やっとこさ解放された。


「こんなに服をいただいて……」

「場に合させた服を着ろ」


 下着の上下4セットに肌着にフォーマル2セットカジュアル3セット部屋着2セット、今着ている服と部屋着セット以外は送ってもらった。値段を考えるのが恐ろしい。環境に合わせた服を着ろって言ってるけど、これ絶対師匠の趣味だよな。肩の辺りで二つに結わえられた髪をいじりながら思う。私は目力がちょっと強めなのと黒のストレートの髪で全体的に重たく見えるのに、淡い青の膝丈のパーティードレスに要所要所にあしらわれた白のリボンで活発な女の子っぽさを出しているのがコーディネートの妙なんだろう。容赦なく肩と背間と谷間が見えちゃってるのをショールが覆っている。そのショールからチラ見えるのが店長一押しのポイントらしい「これで殿方はイチコロです」って言われたけどコロッといかれても困るんですよ、いやほんとに。


「ちなみにおいくら万円?」

「私のカウンセリングの代金から考えたら、この服の値段は誤差の範囲だぞ」

「ほんとすみません、食欲が無くなります、ちょっと吐きそう」

「お前に請求するほど狭量ではない、恩に着せるのが目的だからな」

「ぶっちゃけられてもな~」


 師匠に軽口を叩けるようになったのって、いつからだっけ?。なんか、前からずっと一緒にいたような気がする。


「師匠と知り合ったのって、去年の今頃でしたよね」

「そうだな」


 そっか、そりゃそうだよな、うん。


「もっと前からずっと仲良しだった気がして、ただのデジャブですね」

「そうか」


 肯定とも否定とも取れない師匠の返事。

 師匠が私の目を見つめている。



 気が付くと車が止まっていた。あれ?今何してたっけ?? 確か師匠とのお話が楽しくて懐かしくて。


「ついたぞ」

「あ、はい」


 車から降りて、師匠の腕をとる、とても自然に。

 師匠にエスコートされるままに庭園を歩く、小川を渡す橋を越えた向こうに隠れ家の様な離れ家が見えた。師匠はその離れ屋のドアを開けると「どうぞ」そう言って恭しく私を中へ導いだ。


「いらっしゃいませ、お待ちしておりました」

「大将、急にすまなかったね」


 中にはカウンターと席が二つ、カウンターの向こうには師匠に大将と呼ばれた板前さんが居た。

 師匠が引いてくれた椅子に腰かけると、師匠も並んで腰かけた。


「本日提供させていただく料理はこちらになります」


 差し出されたお品書きが達筆すぎてよくわからないと思っていたら、師匠がどういったものかを説明してくれた、精進料理の懐石だって凄い。流石師匠、私の事を気にかけてくれて昔からずっと大好きなんだから、まるで「〇〇〇」みたいに。


 あれ? 〇〇〇って誰だっけ?


「どうした?」

「いえ、あの、なんでも」


 漠然とした不安を感じて無意識に師匠の袖を掴んでしまっていた。師匠が私の目を見て優しく微笑んでくれるだけで不安が溶けてなくなっていく、私の心の中にいる誰かが警鐘を鳴らしている、それも師匠が見つめてくれるだけで溶けてなくなっていく。


「今日は美味しかったです」

「そうか」


 お腹いっぱい食べてしまった。お料理が出てくるたびに大将と料理談議に花が咲いてしまったのを師匠がニコニコで見ていた。あれ、おいしかったな、あれってなんだっけ、なにをたべたんだっけ。たしか〇〇〇につくってあげたことがあって。あたまがいたい、なみだがとまらない、ししょうのめをみるなってだれかがいってる、ししょうがわたしのりょうほほにてをそえて、ひたいがくっつくほどちかくで、あこれわたしもできる



「帰ってきたぞ」


 助手席でいつの間にか眠ってしまったようだ。師匠に手を引かれながらマンションのドアを潜る、お風呂の湯を張ってからドレスをハンガーにかけてブラシをかける。ドレスは家庭では洗えないからなぁクリーニングに出す準備だけしておいて師匠にお風呂に入ってもらう。明日の朝ごはんの用意が何もないわ、買いに行こうかしら? 消耗品のチェックリストと残量を確認して買い物リストを作成していると師匠がお風呂から出たようだった。


「あがったぞ」

「すみません、明日の朝ごはんの用意が無くて」

「明日、朝から二人分の生活に必要なものを揃えにに行こう」

「学校はどうしましょう?」

「来週の月曜まで療養中だっただろう」


 そうだったかな? そうだったかも。私にあてがわれた部屋に置いた衣装ケースから安っぽい下着と歯磨きセットと洗面用具を取り出してお風呂に入ることにする。


「お風呂いただきますね」


『いつものように』師匠のマンションでお風呂に入って『いつものように』師匠のベットで二人で眠る。

『いつものように』激しくされるんだろうか? 『いつものように』何をしてたんだっけ?


 まぁいいか、お風呂入って寝ちゃお。『いつものふたりのせいかつ』だし。

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