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師匠との生活2

 私の預かり知らぬ所で、転居の話は完了していたようである。どういうことですか? 学校が経営する学生向けマンションでの生活は、なんか突然終わってしまった。


 ああ、先月買ったオーブンレンジ。家電量販店で3時間悩んで買った展示品現品限り希望小売価格89,800円の所を7万円で買ったオーブンレンジ、多機能高性能をマニュアルを読み込んで使いこなせるようになって、これからガンガン元をとっていくぜと思っていたのに、里子に出されてしまった。新しいご主人様のもとで達者で暮らせよ。


 あとの家財道具って、キッチン用品とちゃぶ台と布団と衣装ケースが一個しか無いもんな。エアコンは備え付けだし、ちゃぶ台も元からあったものだし、布団はレンタル品だ、まぁおいときゃええやろ。キッチン用品は残念ながら廃棄である、もったいないが師匠のキッチンにある道具類はどれも一級品だ、しかたがない。


「アロエリーナ、じゃぁ行こうか」


 一晩と一日ベランダで放置されていたアロエリーナは、帰ってくると「あ、いたの?」ってな感じで余裕である、まぁ植物と動物では時間の感覚に大きな差があるのだろう、健康も機嫌も損ねていなくて良かったよ。


 師匠の車のトランクに私の衣装ケース一つを載せてアロエリーナの植木鉢を抱えて助手席に乗る。


「忘れ物はないか?」

「大丈夫です」


 ときちゃんとさっちゃんがお見送りに来てくれて、根掘り葉掘り聞かれた。遺伝性の心の病で師匠先生の所で治療を受けながら学校に通うと説明しておいた。もう自分で言っておいて、心配と誤解しか生まない内容だな、安心してもらうためのにも、師匠のマンションに一度お迎えした方がいいかしら? 師匠が許してくれたらいいんだが。


 次は学校に行って鞄とスマホを回収に行った。学校には話が行っていたようで、校長先生と教頭先生らしき人が、揉み手でお出迎えである。私の鞄をさっさと渡してくれれば良いものを師匠を捕まえて応接室に招こうとするのを、もう遅い時間なのでと振り切って車に乗った。


「師匠、学校に何かしました?」

「忖度されているだけだ」


 私立高校に忖度されるってどういうことなんですか? どんなコネ??


「さて、回収は済んだから次は足りないものの買い出しか、その後で食事にしよう」

「冷蔵庫に何もないので、お買い物に行きたいです」

「消耗品も買わねばならんな、いや、外で取ろう、そうなると服装か……」


 助手席に座る私を師匠が横目で見ている。学生服のままだ、学校に鞄を取りに行った手前仕方ないじゃん。師匠が選ぶ店ってどんなんだろう? 薄暗いバーとか似合いそう、この格好じゃお入店できないな、いや、15歳だったわ、普通にダメだ。 


「外商を呼びつけるにも時間がな、仕方ない」


 さらっとなんか怖いこと言ってますが、何処に行くんですか?


 師匠の車は都心へと進路をとった。


「食いたいものは有るか?」

「お魚でしょうか」

「気を使わなくてもいいんだぞ、これから共に生活するんだ、思ったことは言え」

「じゃぁ精進料理に興味があります」


 即効バレルやん、スポンサーの意向を忖度しちゃう小市民なのに師匠の求めている言葉を選べなかった私の落ち度だ、申し訳なさすぎる。携帯電話でお店の予約を取っている師匠の横顔を盗み見る。この人は本当に謎だ。凄腕剣士の冒険者で、超絶ボンボンのお金持ちで、超級の伝統魔術師。なんかもう妬みとかの次元を通り越して現実感が無いわ。


 師匠が電話を置いたので聞いてみる。


「師匠は何で、私なんかにここまで良くしてくれるんですか?」

「お前に、その価値があるからだ」

「私は、ちょっとややこしい前世がある小娘ってだけですよ」

「本当にそう思っているのか?」

「私の知らない事実がたくさん有ることは理解できます」


 だから聞いてるんじゃないか、そう目線に込めてみるも、師匠は前を向いたまま運転を続けている。


「言葉を選ぶ必要がある、落ち着いた環境でじっくり教えてやる、後でな」


 そういうと師匠は看板の無い建物の門まで車を進めると、門が勝手に空いて師匠と私をその建物の敷地内へと誘ったのだった。


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