師匠とたくさんの私
今日は急に暇になったんですよ、こんなこと滅多にないんですけどね。
一日押した、仕事の予定が怖いです。
むにゃむにゃ、お布団温かい……あ、でもおトイレ行きたい。ん~どうしようかなぁ、凄いいい匂いがする、胸にギュッときて下腹部にじわっと来る匂い? 全身包まれてて、あ、枕を抱きしめるとジーンてする。ああ、この匂い好き。
「おい」
「はい」
呼ばれたってお布団から出ないんだもんね。頭から布団をかぶり枕にしがみついて丸くなる。お布団の外は怖いところだ、出たくない。でもおトイレ行きたい、世は無常。
「起きたならシャワーを浴びてこい」
「はい?」
え、どういう状況? これって師匠の声だよな?? 布団をはねのけて飛び起きる、あ、本当に師匠が居る。
「ここはどこですか?」
「俺のマンションだ、それより先に気にすべきことがあるだろう」
目を背け私を指さす師匠の顔が赤い、ちょっと可愛い。いやいやそうじゃなくて、指さされた私を見下ろしてみると、うそやろ、おっぱいほりだしてパンイチやんけ。
「師匠本当にどういう状況ですかコレ!」
「何もしていない、脱がせてないし触ってない、さっさと身繕いをして来い」
「あの、私の服は?」
「洗濯機の中で乾燥が終わってる、俺は一時間外に出ている」
そういって師匠は寝室から出て行ってしまった。手ブラで間抜けな状態から股間を触ってみる、違和感はないし、痛くもない、多分まだ処女、うん大丈夫。師匠がそんなことするはずがない、シュンじゃないんだから。
っていうか今何時よ、うぉ昼前か、最後の記憶がお昼休みだから、最低でも1日は経ってるのか。
トイレに行ってからシャワーを浴びに浴室に向かうが、そういえば師匠の寝室兼書斎に入ったのは初めてだ、なんというか思っていたよりも普通、ベッドがクイーンサイズなくらいかな? この部屋の掃除はさせてもらっていないんで入るのも初めてだ。机の上に書類やら謎道具がある、まぁ触らないけど。
そういえば師匠のベッドで寝てしまったのか、師匠は昨夜どうしていたんだろう?
勝手知ったる師匠のマンション、何度も風呂掃除をしているので使い方もアメニティグッズも分かる、使うのは初めてだけどもちろん男性用しかない、そりゃそうだ。師匠ってモテるだろうに、女の影が一切ないんだよなぁ強いて上げるならば私くらいだ、まぁうん、そんな事は一切していないんだが。
シャワーを浴びてさっぱりする、そういえば口の中の違和感が一切ない。水を飲んでみたら染み入る美味さだ、相当喉乾いとったんやな、チャチャッと体と髪を洗って浴室から出て髪を乾かす。ふぅスッキリした、洗濯機の中に服がある……もしや! やっぱりな!! プリーツスカートを乾燥機で乾かしたら型崩れするって、そりゃ男の人はふつう知らんわな、そりゃそうだ、チキショー!
師匠が帰って着て第一声目が「お前何で制服の下が掃除婦ジャージなんだ?」だった。今アイロン当ててるんです。
「プリーツスカートは乾燥機に入れると型崩れしちゃうんですよ」
「俺がやったわけじゃない」
「他に誰が居るんですか?」
「それは……後で説明する」
「もう終わりますんで、少々お待ちください」
不服そうに唇を尖らせる師匠は、ぶら下げたコンビニ袋と相まって違和感がスゴイ、それはもう凄い似合わない、師匠は何時も超然としてて見下してて完璧超人で、私にも少し無関心、そんな人だと思ってたのに、なんていうかこう、人間っぽい? 初めてかもしれない、なんか可愛い。
「コンビニエンスストアで何買ってきたんです?」
「食べられるものをと思ったんだが、何を買っていいかわからないからおにぎりを買ってきた」
「じゃぁお茶を入れますんで、食卓にお座りください」
プリーツスカートの型崩れ直しはスチームアイロンを浮かせて撫でるようにサササッとね、まぁこれくらいで勘弁してやるか、アイロンを片付けて師匠のためにお茶を入れ、二人でコンビニおにぎりを頬張る。
「あまり美味い物ではないな」
「まぁこんなもんじゃないですかねぇ」
「お前が作ってくれたおにぎりの方が美味かった」
なんだこれ可愛いか! やべぇキュンキュンする、ニヤケが抑えらんない。
「ああああの、お味噌汁とかいります?」
「もらおう」
食事中に師匠とお話しするなんて初めてじゃないかな? 食事中に立ち上がることもあまりいい顔をしない師匠が、なんかこう、今日はフランクだ。まぁ師匠としてはこのおにぎりは食事というより間食みたいなもんなんだろうな。
以前作っておいた師匠特効オリジナル出汁パックでササっと出汁を取り、お味噌は麦味噌だ、冷蔵庫の中に玉ねぎしかなかったので、スライスして入れる、所要時間片付け込みで10分フラット、我ながら手際が良すぎるぜ。
「うん、美味いな」
師匠のほっとした様な顔をみて胸が熱くなって、涙が出そうになる。胡麻化すために私もお味噌汁を飲む、あったかい染みる、これが師匠が好きな味なんだなぁ。私はもっと昆布出汁が効いてる方が好きだったけど、師匠が喜んでくれるならこの味が一番おいしい気がしてきた。
「昨日一日食事をとっていなかったようだが?」
おかたずけのを終えて、食休みにお茶を入れなおしていたら、師匠が聞いてきた。
「はい、問題なく食べられます、お気遣いいただきありがとうございます」
「ふむ、大丈夫なようだ」
師匠が私の目を見て納得しているようだ、師匠が何かしてくれたんだろうか?
「記憶の読み込みを一部阻害している、ファイルは確認できるが、アクセス制限をかけているような状態だ」
「通りで、すごく楽になった気がします」
「ほかに違和感はないか?」
「特にありません」
そうかといって、師匠は少し考え込んでしまった。その腕組みした二の腕の太さが男らしくてカッコいい。
「お前の状態に対する、私の所見を言わせてもらうぞ」
「バッチコイ」
「っふ、お前、まじめな話だ」
「すみません」
師匠が笑いをこらえるのを見て、高い満足感がある、ベース人格に関西弁がインストールされている弊害かもしれない。
「お前、人格割れてるぞ、簡単に言うと多重人格だ」
は? 嘘やろ⁈
師匠は確かにのりちゃんを治療しました、精神系の大家ですのでこれくらいお手の物です、心療内科医の免許も持っているので、それを盾にのりちゃんを学園から自分のマンションに引き取りました。
過去の記憶で壊れかかったのりちゃんが精神的に無防備になった状態で、好感度上昇値のコンフィグを自分の都合のいいように改変するぐらいの事はしています。
ほんとのりちゃんは男運が悪いですね。




