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火曜日のバイトの無い日8

仕事から帰って夜ご飯を食べて風呂に入ったらもう眠い、それを押して書いてみてもなんか乗ってこない、早めに寝て朝書いた方がいいですね。

 帰ってきたシュンと一定の距離を保ちながら、卓也君の中間テストの復習を食卓で仲良くやっているた。ソファーに座るシュンが私の背中をずっと見ているが、無視だ無視、私を触り倒したお前なんかかまってやらんもんね。


「数学なんて、社会に出たら使うことないのに、何でこんなことしなきゃいけないんだろう」


 むむ。これはいかんぞ。気構えで躓いてしまうとせっかくやった復習も意味が無くなってしまう、それはもったいない、仕方ないなぁ、少しサービスしてあげようか。


「ん~そうですねぇ、少しお話をしましょうか」


 左に座る卓也君のに腰が触れるほど椅子を寄せて、卓也君の手からペンを取り上げるときにそっと手の甲に手を添えてあげる。卓也君の手の甲からでもドックンドックン心臓が早鐘を打っているのが分かってしまう。


「私は周期表が大好きなんですよ」


 卓也君の顔に? マークが浮かんでいるが、かまわず続ける。


「150年前、ドミトリーメンドレーエフが封筒の裏に書いたのが世界初の周期表と言われています、その周期表には原子の量が大きな順に、性質が似たものを並べてありました、その周期表には空欄になったところがあったんです。それは当時未知の元素の存在を予言したものでした」


 卓也君の頭に? マークが増えていく。


「そしてその後に。未知の元素の存在が証明され、周期表正しさが証明されました」

「それがどうしたの?」

「これは知らないということを、知っていたということなんです」


 卓也君に用意してもらっていた中学一年生の数学の教科書から三つ問題を取り出して、卓也くんに解いてもらう、さすがに一年生の問題は少し手伝ってあげれば簡単に解いてくれた。


「では、もう一度、解くことのできなかったこのテストの問題を、解いてみてくれますか」


 卓也君はいぶかし気な顔で、問題を解き始めて、すぐに私の顔を驚いた表情で見返してきた。私はニッコリ笑って頷いてあげた。


「わかる、わかるよ……なんでこの問題が解けなかったんだろう?」

「知らないということを知らない人間は、疑問を持つ権利すら与えられないんです、知識の石垣には上ったものにしか見えない景色があるんです、そしてそれが見えないからと言って、存在しなくなるわけではないんです」


 完全に混乱した卓也君のほほにそっと両手で挟んで目を覗き込む。


「あなたはとても賢い人、ただ、知識のつながりが見えていないだけ」

「僕にものりちゃんが見ている景色が、見えるようになるかな?」

「ええ、必ず見えるようになるわ」


 おでこをコツンと触れ合わせてから体を引いて、グルグル目になっている卓也くんの目の前で、パチンと猫だましをかけて正気に戻らせる。


「さ、これで今日は終わりにしましょう」

「あ、うん」


 勉強道具を片付けてフラフラしながら卓也くんの私室があると思われる二回への階段を上っていくのを見送って、ほっと一息つくと、ズキっとこめかみの辺りに痛みが走った。


「あ~久しぶりにやってみたけど、まだ出来るな、久しぶりってか今世では初めてかも?」


 こめかみをモミモミしながら目をつぶっていたら、シュンがいつの間にか真後ろに立っていた。しまった、もしかして今シュンと二人っきりになってるんじゃないのか? とっさに振り返ると、シュンが真剣な顔で私の事を睨んでいた。


「な、なんだよ」

「今の話は、俺は聞いたことが無かった」

「うん? だって今更シュンにマインドセットなんていらないだろ?」

「俺が一番……もういい」


 シュンはいったい何が言いたかったんだろう? 一人で怒って一人で自己完結したらしい、またソファーに座って腕を組んで目をつぶってしまった。何だったんだ?


 とりあえずシュンと卓也くんのお母さんが帰ってきたっぽいので、そろそろご飯の準備とかしなきゃいけないなぁと思って立ち上がった。



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