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火曜日のバイトの無い日7

のりちゃん悪女じゃん

「初めまして、私の名前は七田紀子と申します」

「お、俺は、上坂卓也」


 よく出来ました、ちゃんとお名前を言えて偉いね。そんな思いを込めて笑いかけると卓也くんは真っ赤になて目を逸らした。卓也くんはどうしたらいいのか分からないらしい、私をチラチラ見ながらこまったように頭をかいている、まぁこの年齢くらいだと仕方ないか、ホームで客を招いたらホストがもてなす、トークの主導権を取るのがホストのマナーなんだが、まぁこの年の男の子にはちょっと酷か。


「あの、喉が渇いたのでお水を頂けないでしょうか」

「ああうん、座ってて」


 飛び跳ねるようにキッチンへ向かう卓也くんを見送って、ソファーへ腰掛けた。不躾だがこれは仕方が無い、話のフックはこちらから用意してあげたほうが良いだろう。


 はぁなんか今日はいろんな事がありすぎてもう疲れちゃったけど、もしかしてこれからシュンの家族と会食せねばならんのか? その前に卓也くんと歓談して、ご両親がかえってきたらもう一度自己紹介からやり直すと。ふーむ、コレはちょっと体力勝負になるな。などと考えていたら、卓也くんが温かい紅茶を入れてくれた。 ありがたい、水分よりも喉を湿らせたかったし糖分が欲しかった、これから卓也くんとのトークを控えている、いいチョイスだよ卓也くん。


「ありがとうございます」

「あの、それで、君は何で家にいるの?」

「俊樹さんにお夕食に誘われまして、お呼ばれさせていただきました」

「兄貴が⁈」


 ん? 何か変だった??


「いや、あの、兄貴が家に女の子を呼ぶだなんて、今まで一度もなかったし」

「そうだったんですか」

「他人が家にくる事自体すごい嫌がるからさ」


 あ、これ、叩き出した系か襲撃系のエピソードが過去にあったな。


「兄貴どこいったの?」

「頭を冷やしてくると、行かれました」

「何やってんだ」


 憤慨して見せる卓也くん、ああ、いい子だな。


「のりこちゃんは兄貴とどういった関係なの?」

「お兄様にはたくさんお世話になっていて、今日も夜ご飯をどうしようかと話していたら、ご馳走していただけると言う事でよせていただいた次第です」


 そうだったのかと納得した卓也くん。


「じゃぁ今日はうちで食べていくの?」

「お兄様のお考え次第じゃないかと」

「そのさ、のりこちゃんは、何歳なの?」

「今年で16になります」

「え、俺より年上なの!」


 どっから見ても年下じゃんかって? やかましいわ。


「卓也さんの御年をお伺いしても?」

「来月で15歳」

「では私の方がお姉さんですね」

「だからさ、あの、俺に敬語とかいらないと思うんだ」

「では、私の事ものりちゃんとお呼びください、親しい友人は皆そう呼びますので」


 言い淀んだ卓也くんが意を決したように私の名前を呼んだ。


「のりちゃん」

「はい、卓也くん」


 ニッコリ笑って返答すれば、真っ赤になって照れている。うぶいのう、叔父さんキュンキュンしちゃうわ。できれば当事者じゃなくて傍観者がよかったぜ。


「あの、あのさ……アドレス交換とか、してくれないかな?」

「はい、こちらこそお願いします」


 赤外線通信でアドレス交換をしていたら、肩が触れ合う距離で真っ赤になる卓也くんが、やったーなんて喜んでいるのをほほえましく見ていると、駐車場にバイクの泊まる音がして、シュンが帰ってきたのが分かった。

 卓也くんが急にまじめな顔になって「兄貴は女癖が酷いから気を付けた方がいい、のりちゃんみたいな子が兄貴と関わると、きっと酷いことになる」と言った。うん知ってる、たぶん卓也くんよりずっと知ってる、ついさっき酷い事されました「まぁ俊樹さんはたくさん助けてくれた良い人ですよ」と純真な顔で微笑んでおいた。


 すまんな卓也くん、シュンから私を守る防波堤になってくれ、割と本気で貞操の危機なんだ。手段を選んでられん。さすがに良心が痛むが恨むなら兄を恨んでくれたまえ。

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