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火曜日のバイトの無い日4

 獲物の園芸用支柱は良い感じに力が入らない、素早く振り回すことが出来ない、折れちゃうから、打ち合うにも力が入れられない、折れちゃうから。自ずから型の練習のような一つ一つ確認のような動きになる。こうなると身体能力のスペックの差が無くなるので、読み合いと積み将棋だ。


「私の方が部があるはずなんだが、な」

「そうでもないんだ、よ」


 シュンの奴、滅茶苦茶うまくなったな。フェイントからの牽制に折々本命を混ぜているのに、本命だけ奇麗にさばく。牽制は前腕や肩で軽く受けるだけだ。本来なら手甲や矢立で守られ有効打にならない場所で、奇麗に捌く。振り回せないのでお互い突きの動作が多くなるが、連撃につなげようとするところに突きを置いておかれるので、懐に潜り込むことが出来ない。しかし、この戦い負けるわけにはいかない。今晩の晩飯はこの戦いにかかっているのだ!


「っちょ、おま」


 剣速を出せなければ、足を使えばいいじゃない。右カーフキックと見せかけてハイキック、のけ反ったシュンの鼻先を掠めた右足の勢いのまま、左軸足で地面を蹴って左廻し浴びせ蹴りに繋げる。両足が地面から完全に浮いているが、ダンサーも真っ青な身体能力を持つこの体なら可能だ。


「蹴りはいかんだろ」


 左足首をシュンに掴まれて、ブラリンとぶら下げられてしまった反動のまま体をエビ反りにして、シュンの腋に園芸用支柱を突き立てる。


「私の勝ちだな」

「それで良いんなら良いんだが……スカートが凄い事になってんぞ」


 あ、今日は体育なかったから体操ズボン履いてないわ。


「とりあえず放せ」

「お、おう」


 スタッと着地してスカートを直す、気まずい空気が二人の間に流れる。


「結構かわいいパンツ履いてるんだな」

「いやそこは流せよ!」


 ああもう、顔が赤くなるのが分かる、シュンの視線が無性に恥ずかしい。


「しまむらで三枚セットで安かった奴なの!」


 とっさに背を向けて言い訳じみた事を言ってしまった。もっと可愛いやつ履いておけば良かった、いや違うだろ、そうじゃなくて、短パン履いておけばよかった、じゃなくて、なんて言ったらいいんだ??


「今晩の晩飯は、お前のおごりだかんな!」


 振り返って指を突き付けた先には、抱き着こうとするかのような姿勢のシュンの鼻先があった。


「おう、とりあえず帰ろうぜ」


 そう言ったシュンも正気に戻ったのか、気まずそうに視線をそらし、背を向けて歩き出した。その先には私のカバンを置いていた所に、シュンのカバンとヘルメットが二つ添えてあった。

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