火曜日のバイトの無い日3
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
頭を抱えてもだえる。サーおねえちゃんってなんだよ! 私は幼児か!! っくっそ、何かの拍子に変なスイッチが入ったら制御不能になるっていうか自分でも自分がよくわからなくなる。なんだよガキみたいになってるじゃないか。体に精神が引っ張られているのか? 恥ずかしすぎるだろ!!
「なにしてんの?」
「ビビらせんな馬鹿野郎」
うずくまって頭を抱える私をシュンの奴がしゃがみこんで覗き込む。せっかく今日の園芸部の活動を中止にしてもらって、ときちゃんとさっちゃんには帰ってもらったのに、何で居るんだよこいつ。
「サーおねえちゃん」
「ヤメロー!」
「年相応で可愛いじゃん」
「ンなわけあるかボケ! 高校生になってアレはないわ!」
顔から火が出そうで耳まで火照る私の頭を撫でようとするシュンの手を払いのけた。
「エルフって寿命が長いせいで、成長の個人差が結構あるらしいよ「のりちゃんはちょっとゆっくりなだけで大丈夫だよ」ってさっちゃんが言ってた」
「え、そうなん? ってか声真似ヘッタだな」
一般常識の範疇で割と有りな反応だったのかな? いや、無いわナイナイ。
「ジェーンが寝てるとき光るのは、生命の樹の加護って教えたらマジビビりしてたわ」
「何その驚愕の新事実、コワ」
え、私って寝てたら光るの? ビックリ人間じゃん。
「あ~そこら辺も覚えてないのか、俺に生命の樹の加護って言ったの、前世のジェーンだぞ。疲れていたりケガをした状態で寝ると生命の樹の加護が発動して光が漏れるって」
すみません、全く記憶にございません。
「ちなみに光るジェーンを抱きしめると、心身共に高い回復効果がある」
「リラックス効果ライト機能付き抱き枕じゃねか」
「お昼休みは奪い合だ、大好評でよかったな」
なにそれこわい。
「生命の樹ってエルフ的に何か特別な意味が有るのか?」
「全く知らん、自分以外のエルフに初めて遭遇したのが高校入学してからだし」
「前世でメチャクチャにしても今ほど光らなかったぞ、何か怪我してるのか?」
「成長期だからかな? 前世の夢を結構見るんだけど、記憶の回復してたりするんかな?」
ふむ、子供返り、生命の樹の加護、回復効果、生命の樹のエルフ的意味、前世の記憶の欠損、自分の謎が増える一方だ、どういうことだよチキショウ。長考に入った私の頭を撫でるシュンの表情はどこまでも優しくて、でもちょっと悲しそう? てかコイツもすぐ私を触るよな、そんなに嫌じゃないけど、セクハラで訴えたら勝てるんじゃないかな? 魅了の呪いのせいで私が負ける可能性も?
「身長全く伸びてないじゃん」
「まだ伸びるわ、タブン、あと乳だけは順調に成長しとるぞ」
制服の半袖ブラウスのリボンの下にそれなりに自己主張する胸の下乳に手を入れポインポイン揺すってみせる、そういやぁ今日は体育が無いからキャミソールしか着てないや。
「そういう事をするんじゃありません」
「お前はお父さんか」
「元気になったらちゃんとした下着を買いに行かせるって、ときちゃんさっちゃんが言ってたぞ」
「マジか、めんどくせぇ」
そういえば、ワニ革でボディスかビスチェでも作ろうと思ってたんだよな、すげぇ趣味が悪そうで面白かったんだけど、ときちゃんとさっちゃんにまた怒られそうだ、やっぱレターバッグにしとくか。まだ乳のサイズが変わりそうだし。
「ちょっと元気になったか?」
「おう、少しマシになった」
「じゃぁ体を動かして、もっとマシになるか」
そう言ってシュンは園芸部の花壇の隅で刺さったまま朽ちかけていた50㎝ほどの園芸用の支柱を二本投げてよこし、自分用には1m弱の支柱を確保して、八相に構えて見せた。
「片腹痛いわ」
「俺から一本取れたら、なんかおごってやるよ」
「その話しノッタ!」
私は二刀(園芸用支柱)を手に、一気に踏み込んだ。




