放課後のアルバイト2
事情を知らない人から見たら、のりちゃんは結構不気味だよねって話。
お風呂掃除の後お湯張りタイマーを1時間後にセットし、トイレ掃除の後にドラム式洗濯機の中に入りっぱなしになっている洗濯物を畳んでしまっていく。
「師匠、洗濯したらすぐに出さないと、ワイシャツもスラックスも皺がついちゃうんですよ」
「クリーニングに出せば良いだろう」
あ~もうそういうんじゃないんだなぁ、アイロン台を引っ張り出してワイシャツとスラックスにアイロンを当てていく。自分で言うのもなんだが家事スキルはプロレベルである。セルデシア時代に取った杵柄ってやつだ。こちとら下級メイドカンストしてるんだよ、プロの婢女なめんなよ。
こうなってくると掃除をしたくなるが時間的にそろそろタイムリミットだ、21時回るのは門限的に不味い。
「じゃ、今日はこの辺りで帰りますね」
「む、そうか」
師匠はさっと立ち上がり「労賃」と書かれたポチ袋を手渡てくれるとジャケットを着て先導するように玄関まで歩き出した。
「近いから大丈夫っすよ?」
「そういって何時も男に絡まれるのは誰なんだ」
お給金までいただいて、賄い送迎付き、心苦しいがその通りなので今日も甘えておくことにしよう。エントランスから出てゴミ回収場所にゴミを出していると、月に照らされた師匠の背中が私を待っていた。
師匠のマンションと私の住む学校が所有しているマンションは歩いて15分程度の距離で、車を出してもいいけど歩いてもいい、微妙な距離感だった、今日はかなり飲んでいらっしゃるので歩きだな。
「すっかり温かくなりましたね」
日が暮れてから夜に歩いても肌寒さを感じなくなった、ほのかに香る湿度がそろそろ梅雨入りを予感させた。師匠は返事をするわけでもなく、隣を歩いている。特に会話が無くても居心地が悪いわけじゃない間延びした空気が、閑静な住宅街の歩道を歩く二人の間に流れていた。
暖かくなるとコンビニの前でたむろするヤンチャなにーちゃんが増えるが、師匠の一睨みで目を反らしていた。ありがたいなぁ。
「師匠と私って、援助交際みたいに見えるんですかね?」
にーちゃん連中が吐いた捨て台詞を耳さとく聞いてしまったのがなんとなく気になった。ためしに腕でも組んでみるか? 確かにこんな時間に女子高生を連れまわしていたらそう見えないこともないか、学生服のまんまだし。
「馬鹿なことをするな」
絡めようとした腕を避けられた。
「お前の持つギフトの数々は、個人で持つには重すぎる。特にその魅了のギフトはお前みたいなガキには呪いにしかなっていない、楊貴妃やクレオパトラにだってなれるだろう強力なものだが」
「お前は」少し間をおいてから師匠は続けた「お前の持ってる技術の数々は、どれをとっても15の小娘が持てるものじゃない。隠しているつもりだろうが、言葉の端々に漏れる知識もだ」
「お前は、何者なんだ」
師匠の目が真っすぐに私の目を見ていた。
「私は私ですよ」
そう言って誤魔化そうとしてみたが、どうもダメっぽい。
「前世の記憶があるんです、すごくあやふやなやつですけど。ファンタジーな剣と魔法の世界で大冒険、そんな記憶です、その記憶で出来たことが、なんか出来ちゃうんですよ」
師匠の目を見て真っすぐに答えた。
師匠が考えを巡らせる間、二人で見つめ合っていた。
「こんなところで見つめ合っていたら、明日学校で噂になっちゃうんで、もういいですか?」
マンションの目の前で見つめ合っていたから多分もう手遅れだろう、明日はさっちゃんとときちゃんの追及が面倒なことになりそうだ。
「送ってくれてありがとうございました」
そう言って踵を返してマンションに帰ってきた。
師匠はまぁ少し飲み過ぎだな。
のりちゃんは師匠にかなり依存しています。
中身がオッサンだとしても、中学生時代を母子家庭の軽いネグレクトと引きこもりで過ごした女の子であった事実は変わりません。
本人にその自覚はありませんが。
次は師匠との馴れ初めを書いていきましょうか。




