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青い日々  作者: 光樹
3/6

3話 想い

「ねー、麻美―」

放課後、帰ろうと荷物をまとめていたら友達である原智香に話しかけられた。

「んー?」

「今日バイト無いよね。帰りカラオケ行かない?」

帰り際に誘われることはよくある。だがこの日はなんだか違和感を感じた。

「智香今日他校の男子と合コンとか言ってなかったっけ?」

数日前そんな話をしていたのをうっすらと思い出す。誘われはしたが興味がなかったので記憶の彼方に追いやっていた。

「はい、それです。佳林の奴が熱出して休みまして。人が足りなくなりました」

何故敬語と突っ込みたいが凡そは理解した。要はただの人数合わせである。

「隅っこの方でジュース飲んでご飯食べてるだけでいいからー。お金は私達が払うからー」

縋りつかれる。よほどピンチらしい。なにがかは分からないが。

「合コン興味ないって前言わなかったっけ?」

「だから麻美はご飯食べにくるだけでいいって。男子とは私たちが喋るから。4人で行きます—って言っちゃった手前人数連れてくしかなくて」

花の女子高生だ。彼氏が欲しいという気持ちも理解出来なくはないが見知らぬ男子達と会うのは抵抗がある。さてどうしたもんかと悩む。

「よし、ならいいものをあげよう」

智香が鞄から何かを取り出した。手に持っていたのは映画の前売り券。

「麻美が見たいって言ってた映画の前売り券2枚。お母さんが誰かからもらったらしいんだけど興味なくて私に回ってきたやつ。これをあげよう」

正直欲しい。高校生にとって映画代は結構お高いのだ。

「これで浦和君でも誘えばいいよ」

「そういえば仁も見たいって言ってた」

つい先日の話を思い出す。その時はそっかーくらいにしか思わなかったが二枚貰えるのならば誘うのもありだ。

「じゃ、交渉成立ね」

そうして麻美は前売り券を手に入れた代わりに合コン(タダ飯)へと向かうこととなった。



合コン会場であるカラオケについてから早20分。麻美は言われた通りご飯を食べていた。

カラオケのメニューではあるがかなり本格的なイタリアンが用意されており、カルボナーラとマルゲリータピザを頬張っていた。

「美味しい」

因みにほかの女子3人と男子4人はカラオケを歌いながら盛り上がっている。

色々な曲をBGMにご飯を食べ進めていると手の空いたらしい男子一人が話しかけてきた。

「ほんとご飯ばっかり食べてんね」

最初の挨拶の時、智香が麻美の事を人数合わせに連れてきたご飯食べに来ただけの人と紹介したためその感想になったのだろう。

「タダ飯と映画のチケットの為だけに来ましたから」

「瀬戸さんだっけ。彼氏作ろうとか思わないの?」

「人並みには彼氏欲しいって思いますけど・・・」

「なら」

その後の言葉は容易に予想できた。なら俺と話さない?とでもいうのだろう。

ただお生憎様。

「彼氏は欲しいですけど、誰でもいいってわけじゃなくて一人の男の子が彼氏だったらいいなって思うだけですから」

麻美は人と喋るのは好きであるし、誰とでも基本仲良くなれる。それは男女関係なくだ。

そんな麻美が今日敬語に徹して壁を作っているのは彼らの期待には応えられないから。

合コンに参加している以上、少なからず彼女が欲しいのだろう。その気持ちを否定するつもりは微塵もないが今の麻美にとって彼氏と言われて思い浮かぶのは一人だけだ。

「付け入る隙微塵もなさそう。せっかくタイプだったのに」

そういって彼は残念そうに笑う。

「いいひと見つかりますよ」

きっと彼は悪い人ではないのだろう。だから今出来るのはいい人が現れてくれることを祈るだけだ。

そんなこんなで時間が過ぎていく。

先ほどの彼が撃沈したのを見ていたからか、その他の人に話しかけられることもなかった。

他の女子3人は連絡先を交換したり、遊ぶ約束をしたりと楽しそうにしていたので問題はないだろう。

「麻美」

ジュースを飲みながら少しぼーっとしているといつの間にか隣に智香が座っていた。

「ありがと、助かったわ」

「どういたしまして」

たいして何もしていないし、映画のチケットを貰うためだ。

「しかし思った。麻美を連れてくると男子の目がそっちに行くから我々は大変」

「自分磨きは怠っておりません」

否定しても嫌味にしかならないので胸を張っておく。

「それが嫌味に聞こえないからすごいわ。その自分磨きが浦和君にも届くといいんだけど」

「ほんと」

こればっかりはため息が出る。

「あのやろう、髪型変えても無反応だし」

つい先日、何かの拍子に髪型の話になりハーフアップが好きだということを聞いたため試しにしてみたのだが思いっきりスルーされた。

まあそれで黙っている麻美ではないのでハーフアップにしてみたんだけどどう?と詰め寄ったのだが。

「まーでもお互い様じゃない?麻美も変化に気づいてないし」

「なんの話?」

心当たりがまるでない。仁になにか最近あっただろうか。

「なんでもない。私が言う話でもないしねー」

はぐらかして笑う。なんの話かは気になったがおそらく喋る気はないだろう。何か変わった?と仁に聞いてみよう決意する。

そうして合コン(タダ飯)は終了した。約束のチケットをもらい、ご飯もお腹いっぱい食べられたので麻美としては満足である。


余談ではあるが、二人で見に行った映画は大変面白かった。


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