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ある日突然きらきら

青白い光が円を描いている。その中には記号や文字のようなものが連なっているが日本語ではないため読むことができない。不可思議極まりないこれはどこからどうみても魔法陣だ。


私の名前は花咲美散。美しく散ると書いてみちる。〈美しく散る〉なんて、「負け確定じゃないか」「死ぬの?」なんて言われるけど「人生の終わりに有終の美を飾れ」という意味でつけられたのでそう思った人は親に謝ってください。あと有美でいいじゃんとか言わない。


そんなことより大変なの。黒髪黒目二つ結びの平凡な一般日本人女子中学生のはずの私の左手から、突然見ての通り魔法陣が出せるようになってしまった。本当に何の前触れもなく、五日前に突然。青白い光のせいで私の顔が暗闇でブルーライトを浴びているみたいに照らされているが、不思議と眩しく感じない。


光を浴び続けてみたり触ったり撫でたり色々実験した結果、なんと!!この魔法陣をくぐると異世界に転移できることが判明しました!一日一回行って戻ってこられるみたい。行き先は〈花咲く紋章の乙女〉っていうスマホアプリの世界。やったことがあるゲームだったからすぐわかったよ。ちなみに現実世界でこのアプリ画面を開くと光の粒がふよふよと浮いて見えるから、それがこの世界に行けますよっていう合図みたい。


異世界に行けるのなら…ぜひやりたいことがあったの。本当にマジで。異世界転生ものが流行りまくっている昨今、もちろん私も好きで何作も読んだ。女子的にさ、王子様だったり華やかなドレスだったり刺さるよね。だけどさぁ、思うの。毎回。


(性格の悪い女が無理……!!!!)


ってね。もうね、イライラして読みながら机叩いちゃうよ。パァンって良い音させちゃうよ。異世界もの読むのに向いてないって言わないで。分かるよ?イラつかせるのもストーリー上の目標の一つで、嫌な女にちくちくねちねちいじめられて、長々と耐えて、最後にギャフン!ってするのがカタルシスだって。


分かるけれども私は思ってしまうんだ。


(なぜ、長々といじめられて辛酸をなめ耐え忍んでやらねばならぬ!!このクソ女さっさとぶっとばしたい!!!!)


と。


一時的にでも!やられるなんてムカつくよね!?主人公が悪いことしたわけじゃないのにさ!即叩きのめしたくない!?


話を戻すね。転移先となるこの〈花咲く紋章の乙女〉というゲームも耐えてからの最後にギャフン!タイプの作品だ。中世ヨーロッパ風の世界で平民の主人公が貴族学院に入学しライバルや敵に危ない目に遭わされながら成長して愛をつかみ取る。そういう話。


このゲームのシナリオでさ…私的にすごく納得いかないところがあるの。第一王子のルートでのライバルキャラ、アニカのお姉さんであるリリアさんへの仕打ちについて!


リリアさんはゲーム開始時点で第一王子イザークの婚約者。普通に美人で優しい人なのに、イザークの婚約者の座を狙う妹のアニカにはめられて序盤で婚約破棄されちゃうの。


アニカはリリアさんからいじめられていると装って家族や使用人、主人公のアリスを含めた学校の友人たちを騙す。リリアさんの評判は徐々に落ち、リリアさんはそんなことはしていないと訴えたけど信じてもらえず無実の罪で断罪されてしまう。


リリアさんは隣国の王家の血が入っているので国外追放や処刑とはならないけど、物語最後のイザークの卒業式イベントでアニカの嘘が暴かれるまでずっと謹慎として領地に閉じ込められる。その間家族に失望され色んな人にヒソヒソされる上に、無実が判明して赦されてもイザークはアリスと結婚するから身を引かなきゃいけない。リリアさんは失うばかりで婚約破棄された汚点が残っただけ。かわいそうだろ!!ハッピーエンドに浸りきれないよ!!


またさぁ、リリアさんを断罪するときのアニカの顔がにたぁ…って感じでムカつくのよ。最終的にアニカは修道院に送られるけど、送ったからってリリアさんが幸せになるわけじゃない。胸糞悪さが残っちゃう。もっと早く気づきなさいよ!アリスもイザークもさぁ!


序盤に起こるこの婚約破棄イベントをクリアしてリリアさんを退場させ、アニカがイザークの婚約者とならないとイザークルートはクリア失敗となる。つまりリリアさんを不幸にするのが物語上必須ってわけ!ひどくない!?


リリアさんを冤罪で罰さなくても主人公がイザークと結婚することはできると思うの。平民と思われていた主人公のアリスは終盤でイザークの従妹であることが判明して身分問題が解消されるからね。


(だったら、そもそもアニカにリリアさんがはめられないように運命を変えても良いのでは?)


…って思わない?


もしアリスがイザークルートを踏んだとしたら、きっと何もなくてもリリアさんは二人のためを思って黙って身を引くだろう。婚約破棄することになったとしても、円満に破棄できれば傷が少ないはずだ。


私は左手から出ている魔法陣をじっと見つめた。


(決めた!!これも何かの運命だ。優しい姉を陥れる性格の悪い妹・アニカをぶっ潰す!!!)


私はそう決意した。


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