✒ 桜の木 2‐2
ワトスンはホームスの手首を掴んだまま、靴跡を辿る。
靴跡を辿った先に居たのは、何とモリアーテだった。
モリアーテは女子院生達に囲まれており、衣類に付いているボタンをまさに今、剥ぎ取られようとしていた!
ワトスン
「 モティ!
会えて良かった~~!
重大事件が起きたんだよ!!
モティの推理力が必要だよ! 」
モリアーテ
「 ワトスンっ!!
グッドタイミングだよ!!
可憐で可愛いハニーちゃん達、僕は事件を解決させる為に行かないといけない!
また今度ね、アデュ~~~☆ 」
モリアーテは女子院生達へウインクをすると、すたこらさっさと逃走した。
モリアーテを見送る女子院生達から残念そうな声が聞こえて来るが、モリアーテは振り返る事はしなかった。
モリアーテ
「 ワトスン!
来てくれて助かったよ!
正しく、なんちゃらに佛だよ! 」
ホームス
「 モリアーテ、僕も居るんだけどね! 」
モリアーテ
「 ホームス、居たんだな。
影薄だから気付かなかったよ 」
ホームス
「 僕は常にワトの隣に居るよ!
ワトの暴走を止めないといけないからね 」
ワトスン
「 ホム~~、僕は暴走なんてしないよ!
ホムは過保護なんだから! 」
ホームス
「 ワト……そろそろ自覚して… 」
モリアーテ
「 ──で、重大事件って何が起きたんだ?
とうとう殺人事件でも起きたのか? 」
ホームス
「 違う…。
そんな事件が学院内で起きたら困るよ… 」
ワトスン
「 栗~ぷプリンが掛かってる大事な事件なんだよ! 」
モリアーテ
「 栗~ぷプリン?
誰かの栗~ぷプリンが “ 誰かに食べられた! ” とか “ 誰かに盗まれた! ” とか? 」
ワトスン
「 違うよ、モティ!
事件を解決出来たチームには御褒美として1週間デザートに栗~ぷプリンが付くんだよ! 」
モリアーテ
「 何だって!?
あの行列が出来て3時間以内に売り切れ御免の栗~ぷプリンを1週間もデザートとして食べれるのか?!
確かに大事件だ!!
凄い大事件じゃないか!
この事件は必ず僕達が解決させるべき事件だよ!
事件は僕等に解かれたがっている!!
それで、僕達が果敢に挑んで解決させるのは、どんな事件なんだい? 」
ワトスン
「 うん、それはね──── 」
モリアーテ
「 それは? 」
ワトスン
「 ホム、お願い~~ 」
ホームス
「 何で忘れちゃうかな…。
桜の木の枝が折られていたんだよ。
誰かが桜の木の枝を折ったのか推理をして犯人を探して、見付け出して理事長先生の前に連行するのさ。
全く……理事長先生の大事にしている桜の木の枝を折るなんて、どんな悪ガキなんだか。
やんちゃが過ぎるよ 」
ワトスン
「 本当だよね!
でもでもさ、その誰かさんのお蔭で、栗~ぷプリンを1週間も食べれる御褒美が貰えるんだから感謝しなくちゃだよ。
モティも思うでしょ? 」
モリアーテ
「 まぁ…確かに一理あるかもな。
その馬鹿野郎のお蔭で、あの栗~ぷプリンに肖れるチャンスを与えられたのは事実だし。
よし、さっさと僕等の勇者──じゃなくて、不届き千万な犯人を捕まえて理事長先生の前に突き出してやろう!!
栗~ぷプリンは僕達のモノだぜ!! 」
ワトスン
「 そうだ~~~!!
栗~ぷプリンの為に犯人を突き出そう~~!! 」
ホームス
「 犯人を見付ける前に推理するのを忘れないでよ。
多分だけどレポート提出があると思うから、真面目に推理して犯人に辿り着くよ 」
モリアーテ
「 真面目だなぁ、ホームスは!
推理なんて犯人を見付け出した後でそれっぽくでっち上げれば良いんだよ。
推理内容なんて幾らでも思い付くから任せな! 」
ワトスン
「 凄いよ、モティ!
その手があったね!
流石、怪盗の孫だよ!
ズル賢さは一流だね! 」
モリアーテ
「 あっははははっ!!
もっと褒め賜恵よ、ワトスン君! 」
ホームス
「 探偵としてあるまじき発言だね。
今のは聞かなかった事にしとくから、ちゃんと推理するよ。
先生達を騙せるとか思わない事!
反省文を書かされる事になっても良いの? 」
ワトスン
「 反省文?!
無理無理無理無理ぃ~~~!!
反省文なんて書けないよぉ~~~~!
ホムぅ~~~ 」
ホームス
「 反省文が嫌なら真面目に推理する事だよ。
モリアーテもだよ 」
モリアーテ
「 ………………仕方無いな。
今回はホームスの顔を立てて引き下がってやるよ。
感謝し賜恵よ! 」
ホームス
「 はぁ……もういい。
モリアーテ、現時点で僕とワトスンが把握している情報を伝えるから聞いて 」
モリアーテ
「 サンキュ 」
ホームスは常に持参しているメモ帳を捲り、書き留めた情報をモリアーテへ丁寧に詳細に聞かせた。