⭕ 桜の木 4‐1
──*──*──*── 裏庭
モリアーテ
「 …………何だぁ、コレ?
う~ん……日記帳かな?
鍵が付いてて開かないな… 」
何時ものルーティーンで女子院生から追われていたモリアーテは、走りに走って裏庭へ来ていました。
裏庭には中庭にも負けない程に立派な桜の木が植えられています。
その桜の木の枝に挟むような状態で鍵付きの日記帳が挟まっていました。
風に運ばれて飛んで来た日記帳が桜の木の枝に挟まったのは先ず有り得ないのは、日記帳を両手で持っているモリアーテでも分かります。
誰かが故意に日記帳を桜の木の枝に挟んだまま放置して去った──という所でしょうか。
モリアーテは日記帳を隅々まで確認しましたが名前らしきモノは明記されていません。
名前の明記がされていなくとも誰かの日記帳である事はモリアーテにも分かりました。
鍵付きの日記帳なのだから、誰かの日記帳で間違いない訳です。
誰が何の為に、何の目的があって、他人様の鍵付き日記帳を裏庭に植えられている桜の木の枝に挟んだのでしょうか?
モリアーテ
「 面白ぇじゃん!
寮室に戻って鍵を抉じ開けたら日記を読んでやろう!
ふははははっ、事件ゲットだぜ!! 」
持ち主不明の日記帳を手に入れたモリアーテは、まるでスキップでもしそうな程に楽しそうに男子院生寮へ向かって走り出しました。
──*──*──*── 男子院生寮
ワトスン
「 ホムぅ!
僕が居るのに何でイクダユと一緒に推理してたのさ!
浮気者ぉ! 」
ホームス
「 浮気者って…。
イクダユが拾った落とし物の持ち主を探していたから手伝っただけだし… 」
ワトスン
「 だからって距離が近過ぎるよぉ~~!!
ホムは僕の相棒なんだよ!
僕が名推理ばっかりするから僻んでるの?
嫌がらせ?! 」
ホームス
「 どうして僕がワトの迷推理に僻まないといけないのさ…。
取り敢えず、イクダユとはワトが思ってるような関係じゃないから… 」
ワトスン
「 むぅ~~~ 」
ホームス
「 そろそろ僕の上から退いてくれないかな? 」
ワトスン
「 “ 取り敢えず ” って何だよぉ~~~!
“ 取り敢えず ” ってぇ!! 」
ワトスンは学院の廊下でルームメイトでチームメイトで相棒のホームスがクラスメイトのイクダユと共に仲睦まじく話ながら歩いている姿を偶然に目撃し、真相をホームスに追求していました。
推理に関してはギャフンなワトスンではありますが、運動神経抜群のワトスンはどうやら尾行,盗み聞き,読唇術,盗撮,盗聴に関してもホームスやモリアーテよりも上手のようです。
1日の大半を読書に注ぎ込んでいるホームスよりも運動神経抜群のワトスンの方が腕力も強いらしく、男子院生寮の寮室へ戻って来たワトスンは、ホームスをベッドの上に押し倒していたのです。
ホームスがワトスンにされるがままになった状態で話をしているのは、ワトスンの背が低くて微塵も脅威ではない事もありますが、実はあらゆる格闘技をマスターしている未来人のホームスの方がワトスンよりも断然強いからでした。
普段から読書ばかりしている本の虫なホームスが自分より強いなんて事を微塵も知らないワトスンは、自分以外の男子院生と仲睦まじくしていたホームスに対してプリプリと怒っていたのです。
?
「 おーーーい、面白いモンを裏庭で見付けて来たぞ! 」
バターーーンと寮室のドアを勢い良く開けたモリアーテは、ベッドの上でホームスがワトスンに押し倒されている状態を目撃しました。
モリアーテ
「 何だよ、またホームスの浮気現場を目撃したのかよ?
ワトスンも懲りないなぁ。
ホームス専属のストーカーに転職でもする気かよ? 」
ワトスン
「 モティ~~~!
だってだってだってぇ~~~。
今度の相手はあのイクダユなんだよぉ! 」
モリアーテ
「 イクダユ?
あぁ、姫の事かよ。
安心しろよ、ワトスン。
姫は女みたいに可愛い顔してるけど、男だからさ。
彼氏になりたがってる奴も居るらしいけど、姫はボンキュボンが大好物な僕の心友だから、同性のホームスに興味はねぇよ 」
ワトスン
「 そう言うんじゃないってばぁ!(////)」
ホームス
「 ワト、そろそろ退いて… 」
モリアーテ
「 そんな事よりさ、面白いモンを拾ったんだ!
鍵を開けるから一緒に中身の日記を読もうぜ! 」
モリアーテは左手に持っている日記帳をワトスンとホームスへ見せました。
ワトスン
「 日記帳?
誰の誰のぉ? 」
ワトスンはホームスの上から退くと軽快な足取りでモリアーテの元まで歩きました。
ホームス
「 モリアーテ、『 裏庭で見付けた 』って拾って来たの? 」
モリアーテ
「 違う違う。
桜の木の枝に挟まってたんだよ。
多分、誰かが故意に置いたんだろ 」
ワトスン
「 えぇ~~~。
モティったら持って来ちゃったのぉ? 」
モリアーテ
「 雨が降りそうだからな。
置いといたら雨に濡れて中身が読めなくなるだろ。
鍵を開けるから待っててくれよな 」
全く悪びれもなくモリアーテは日記帳を机の上に置くと、引き出しを開けて鍵を開ける道具を取り出しました。