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微光
荒野に咲く一輪の花のように。
なもなき花のように。
一人の少女が、鼻歌を奏でながらそこにたどり着いた。
「あ、蝶々…」
塀の上によじ登り、飛行機のように両手を広げて追う。
一匹の蝶々が、彼女を導くように無造作に廃棄されたコンテナ通りを舞った。
そしてもう一人も、それを待ち望むかのように足音を聞いていた。
蝶々が、一つのコンテナのへりに留まる。
「おとと…」
よろけながら塀の上にしゃがみ、中を覗いた。
少女の思考は活動をやめた。
「!!いいいいいいいや
「待て」
絶叫を阻止し、冷静にさせる。
左胸からドクドクと流れ出るものをおさえ、問いかけた。
「…止血をしてくれ……。どうにも止まってくれなくてな」
塀に隠れた少女は恐る恐る顔を出し、聞き返す。
「病院?」
「医者は駄目だ。この辺はすぐに臓器をぶん取る奴ばかり…」
「まってて」
ひょいとコンテナに降り、少女はレースのスカートを破りはじめた。
ガス灯の光が、二人を照らす。
「あたし、リア!…よろしくね!」
明るい金色の髪を揺らし、天使のように微笑みかけた。
少女にはこれが、天からの迎えのように見えた。