後悔
「く…!!」
まつりは飛び起きた。施設の一室に横たわっていた。
「!?」
辺りを見渡す。
リアの姿はなかった。それに気付いた途端、全身の血の気が引いた。
「クソ…なんで…こんな時に…」
まつりは頭痛で倒れ、夢を見ていた。走馬灯のようにも思えたが、また目を覚ました。
「リア!!」
返事は無い。
まつりは部屋を飛び出して、進行方向に向かって走った。
「しくじった…ここじゃ取り返しがつかない…」
部屋に血は無かった。『なにか』が来たわけではないだろう。では【PUNCH EYES】に捕まったのか。
嫌な予感ばかりが頭をよぎる。
「!!」
視線の先には、廊下を塞ぐように巨大な『なにか』が佇んでいた。
三人で出発した日、建物の屋上で対峙したものに似ている。
進まなくてはならない。まつりは強い憤りを覚えた。
焦燥感も相まって、小銃を握る手の強さは尋常ではなくなっていた。
「お前に…構ってる暇は…ない」
「グギャオオオッ!!」
『なにか』が巨体を動かし飛びかかる。
「失せろ!」
耳を劈くような銃声が響いた。銃弾は一撃で奴の心臓を捉え、仰向けに倒れ込んだ。
まつりには銃剣で戦う余裕が無かった。
汗が噴き出す。
確実に『なにか』が集まる。だが…今のまつりにはなぜか、それに対処できる絶対的な自信があった。
リアを失ったまつりは、一種の覚醒状態にあった。
「さっきから銃声が聞こえるね…」
五箇条とノアの2人は、中庭で【PUNCH EYES】をほとんど淘汰してしまった。
「余裕がなくなってるってことだろ。今はこっちに集中しろ」
「…そうだね」
次から次へと湧き出る敵達に、2人もかなり疲弊していた。しかし、ここで死ぬわけにはいかなかった。