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PANDEMIC-GIRL  作者: 斎田 芳人
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堕落

数年後、大きくなった少女は闇を飛び回っていた。

集落から抜け出すこともできずに。

路地裏に屈強な男たちが数人、その中に少女はいた。

一人が問い詰める。


「おいおい、さっさと約束の品をよこせ。ウエがうるせーんだ」

「お前さんとこなんていつでも潰せるんだぜ」


「…」


ボスの男が徐ろに言う。


「ここまでか…ミオ」


ボスの背後から少女が飛び出し、牽制した。

手には、小銃に長い銃剣。

相手の集団は困惑したが、一瞬で体制を整え


「女が突っ込んできやがった、お前らやれぇ!」


少女は目を見開く―――――







あたりが夕闇に染まる頃、少女は『住い』に帰ってきた。

身体中に返り血を浴び、赤黒く染まった剣先と共に。

殻だけになったようであった。


集落のはなれにある木造の家。非常に年季が入っており、ところどころトタンで修復されている。

ここが彼女の居場所だ。


中央のテーブルを囲み団欒していた男たちの目が彼女を捉える。


「おう、帰ったかミオ」

「横座れよ」


少女は男たちには応えず、部屋の隅のベンチに腰掛けた。

その様子を見た彼らはニヤニヤと笑いながら、また机を囲んだ。


話し声と、木材がきしむ音。

今が何時かは分からないが、夜が足音を大きくした。


数分後、奥の部屋からボスが顔を出した。

「大したもんだ…あの状況から帰ってこられるたぁ」


「地獄を作ったのはあんた達だ」

銃剣の血を布で拭き取りながら、少女は暫くぶりに口を聞いた。男たちは相変わらずニヤニヤと笑う。


「んだと…」


ボスが気を立てると、慌てて男たちが会話を挟む。


「見てくださいボス。ただいまの勢力図ですが…」

「シロウ…取引のルートを見せろ」

「はいっ」

「…ふんっ」


腐りきったこの生き方に。

非日常な日常に。

眩んだ目を覚ますことなどできずに、少女は問いただした。


「わたしは…何だ」


「何のためにここにいる」


「どうすれば…終わる」


左目の下に彫られた入れ墨を、人差し指と中指で撫でる。

男たちはヘラヘラと笑い出す。

ボスは呆れた声で諭した。


「お前…未だに自分の立場ってのを理解できないのか?

毎日食わせてるのは誰だ? 住む所は?ここ以外の場所で安心して夜を越せる場所なんてないぞ?」

「安心したことなんてない」と少女。


「ほぉ…口を聞くか。戯言を叩くのは勝手だが、俺様を満足させてからにしろ。

…3日後、3日後だ。取引中の【DREAD】を潰してここら一帯を俺様達【PUNCH EYES】のシマにする」


ボスは再び奥の部屋の扉を開ける。


「お前の生死は俺様が握っていることを忘れるな?」


バタン、と勢いのある音と共に、部屋全体がひしめく。

運命の日は近かった。


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