表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月の舟  作者: ジョゼ
9/28

九、訪問者









将軍パドルマギヤアラン、その人は、カムカヌカを守護ヴァルカした。


ヨルの振り下ろしたナルフをカムカヌカの代わりにその胸元に受け、傷口から舞い散る甘く紅い花弁はなびらは、舟の外へ飛ばされていった。

困惑するカムカヌカの視界をアランの長い髪が遮っている。

アランは右腕の肘から先を失っていた。

恐らく、先の戦闘で甲板に落ちていた花弁はなびらが、それだったのだろう。





ビリヂヤンを傷憑く事は、わたくしたちは許しません、」





カムカヌカを庇い立ちはだかるアランが、ヨルにきっぱりと言い放った。

強い口調だった。





「笑わせる、お前らもビリヂヤンには拒絶されよう、」




胸元に刺さる柄を握ったまま、近距離でめるヨルが馬鹿にした声で囁いた。

八花ヤツカの様に舞う花弁はなびらだけが、純粋にこの場に存在した。





「そういう高飛車バデスタな態度が僕は、大嫌いなんだ、

 畏怖シャナするものは、素直に、恐れたら良い、!!」


 



ヨルは皇帝シエラを連想させる圧力テイヂでそう叫んだ。

それでも冷たい表情のままアランは無数の金細工を鳴らし、ヨルの腹部を真っ直ぐに蹴り飛ばした。





「、!ぐう、、っ」






負傷している脇腹にアランの蹴りを食らったヨルは、痛みを噛み潰して踏みとどまる。

足技と同時に、アランは胸元のナルフを自ら強引に引き抜くと、ヨルの後方で縮み上がっているネインに向け、高速で攻撃ヂルダした。


ナルフは何か魔法をかけられたのか、光を纏い、空を裂いた。

咄嗟に守護ヴァルカ出来ず、ヨルをかすめた光弾プロズルナルフは、硬直したままのネインの世勉ゼエベンのベレエ帽を粉々にした。

同時に初めてあらわに成ったネインの長い巻栗毛が、金炎ゴレに光り輝いた。


息つく暇も無くヨルが走った。

ぼたぼたと赤黒い血液を淋漓させるヨルは身を低くしてアランに近付くと、光彩プリズムを放つ。

鮮やかな虹。

とても激しい毒で構成された光だった。


まともに受けたアランが舟外に吹き飛んで行った瞬間、一面が濃紺の銀河に呑み込まれた。


舟が港をたのだ----












静寂が、耳鳴りを呼んだ。


真白ペートヴの甲板は何事も無かったかの様に不気味に静まり返り、眠たくなる速度で点滅を繰り返していた。


カムカヌカはしばらく放心状態だった。

走ってもいないのに、呼吸は浅く、じっとりと汗をかいている。


甲板には立ちすくむカムカヌカと、しゃがみ込んだネイン、両膝をつき肩で息をするヨルと、血溜りに動かぬ、肉体が存在していた。







「突然の乗舟、まことにご無礼をつかまつります、」








聞いた事の無い声が甲板に響き渡った。


甲板の空間が奇妙に歪み、その刹那で三人の訪問者が姿を現す。

背格好はそれぞれ異なっていたが、皆同じ更衣をまとっていた。

深い蒼の長上着ロウブは頭頂から爪先迄を隠し、肌は一切見えなかった。


その中の一人がヨルの前に進み出る。




「事態は把握しております、船長ギプダ・ユイルアロウ殿、」





「・・・・・・・・・・その名で呼ぶな・・・・舟を、保てなく成る、、」





ごぼごぼと咳をし乍らヨルが呻いた。

面倒くさそうに長上着ロウブの男を見上げ、目を細める。

そんな酷く手負いのヨルを労わりもせず、男は続けた。




「本日の戦闘により此れ以上の舟転ツオルは不可能と判断し、現時刻を以って、月の舟は我々、

 天球法議会ダ・ルマスク・ノルエの監視下に置く事が可決されました。」




・・・天球法議会ダ・ルマスク・ノルエ

ヨルの口から何度も聞いた機関だった。




「ふん、、何時だって下らない事を議題にするんだね、」




ヨルが皮肉たっぷりに吐いた。




「噛み付かないで下さい、ユイルアロウ、貴方は負傷しています。

 此のままでは舟もろとも嘘罪夜ランタンヂオ行きですよ」



「・・はいはい・・・だが君達は僕が噛み付くのを期待して要るのだろう、?・・

 天球法議会ダ・ルマスク・ノルエ専属魔術師ベガ・ウイザドが直々に、しかも三名も其れだけを伝えに来るものか、」



ヨルがにやりと笑みを浮かべる。

長上着ロウブの男も恐らくあの布の下で、不適に笑っているのだとカムカヌカは思った。




「、まぁ、其れは又、別の話、

 現在いま血腥ちなまぐさ過ぎましょう、兎に角早急に、議会衛星サテライトへお越し戴きます。」




結局ヨルの了承を得る事はせず、長上着ロウブの三人は甲板に散って行った。

そして直ぐに、三方向で舟を覆う程の巨大な魔方陣ウイザ・ルタが展開され、銀河を潰してゆく。


とりあえず胸を撫で下ろしたネインは、心配そうにヨルに走り寄った。

それを見たカムカヌカも、反射的にヨルの側へ向かう。




「大丈夫ですか、ヨル、・・・・・」



「・・・少し、疲れたかな、」



ビリヂヤンと赤い血でどろどろのヨルが力無く応える。

ヨルは苦しそうに息をついて、側に来たカムカヌカを見上げた。



「カムカヌカ、君は、魂だ、強力なビリヂヤンだ、・・僕には、触れられない、

 取引カルエを望む事、天体団リーベン・ローエの黒髄を、払拭する、、、忌々しい、儀式カフカなのだ、」



カムカヌカは黙って頷いた。

勿論、意味など、解らなかった。


ヨルはネインの頬の傷を指で撫でた。

先程アランが投げたナルフが、実は少し当たっていたようだ。

カムカヌカは気付いた。

此の栗色の髪の少女の、僅かな頬の擦り傷から、真紅の花弁はなびらが零れ舞っている事に、。


間も無く三人の魔術師ウイザドが展開した魔方陣ウイザ・ルタが完成し、月の舟は議会衛星サテライトへ向けて転送ワアプを開始した。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ