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月の舟  作者: ジョゼ
24/28

二十四、夢












ふわり、ふわり、、、







眼下に広がる美しい命灯ユエの青。

何処までも何処までも続く、生命の海。


太古からの深い森かと思えば、それは時たま大きく水の様にうねり、胎動した。

そこから絶える事無く、小さな光の粒が震え乍ら空へ立ち上ってゆく中で、宙を舞う木の葉の様な不安定さで、黒髪の少年が浮いていた。


カムカヌカは完全に脱力した状態で、宙空を少し前進したり、斜め後ろにそり上がったりして、ゆっくりと落ちていた。

かたちの無いビリヂヤンの浮遊物は、カムカヌカに触れたそばから避けずに消えて行く。

寝起き眼とぼんやりの意識に、自分の身体がこの空間ぎりぎりまで膨張しては、消えそうな程に集束する不思議な感覚を覚えていた。


紺色に塗られた空には、狂いそうな量の記憶画像ロウト・メアが投影され、休む事無く再生されていた。

天からはひっきりなしに、幾重にも笑い声や、歌、子供の無邪気にはしゃぐ声等、幸せな音が耳に届いた。

頭から落ちていたカムカヌカは、想像もつかない世界の出来事をただただ見上げていた。


何かとても大切なことを、ものを、遠い場所に置いたまま来てしまったのだが、よく思い出せない、、。。









ふと、カムカヌカは海原におおきな気配を感じて意識を戻した。

身をよじって視線を落とすと、少し向こうに一際ひときわ立派な大樹が、神々しく輝いていた。

他とは比べ物にならない、神樹リオ、。

それが時間をかけて、静かに呼吸している事が、カムカヌカにはすぐに判った。

身体のなかから一本の芯を通し、神樹リオとカムカヌカは共通リンクしていた。


いや、カムカヌカだけでは無い。

宇宙エヴレンの全てが、情報網ネルトワロでここに繋がっているのだ、


あの、月の舟でさえも、。





ビリヂヤンの、産まれる所、)





光に抱かれたカムカヌカが手を伸ばして枝に触れようとした其の時。




神樹リオに茂っていた、美しいビリヂヤンが、音も無く一斉に散った。

一瞬で眼前に灰色が爆発する。

幸せな声も失せ、曇った空に記憶画像ロウト・メアも観得なく成った。

急に凍えそうな風が吹きすさび、果てしない虚無がこの世界をおおった。

先刻まで神樹リオだったものがかたちを変え、巨大な手と成って何かを探してのた打ち回る。

同時に地からは細くて長い真っ黒の腕が数え切れない程伸び上がり、触手の様に不気味にうごめいた。


困惑したまま高度を下げるカムカヌカに、黒い手が届く。

回避は叶わず、無数の腕は、抵抗するカムカヌカの髪を引っ張り、喰らおうと引き寄せた。


巨大な灰色の手も標的を定めたのか、カムカヌカを向いた。

それからは全く慈悲や手加減といったたぐいの感情は感じられなかった。

害蟲バドでも潰すかの勢いで、巨大な手が、カムカヌカに襲いかかる、!


緑喰ビイゾに捕らわれ、自分の意思で動けないカムカヌカに、振り下ろされた手が-----------



















「うわあああああああああああ、、、!!!!!」






















「カムカヌカ、!」















ばちん、と、眼を覚ましたカムカヌカは、弾かれたように身を起こした。




(タイル)も走った後みたいに息が乱れ、肩は上下し、汗をかいていた。

すぐ隣には、夜葬ユルバの蝶の女王フレイヤ・アマカケルオボロノコハクが寄り添っていて、心配そうな、というより、不審で満ち満ちた視線を送っていた。


彼女の左手が、カムカヌカの髪の毛を掴んでいるのは、今はどうだって良い、。

痛みからして引っ張られていたのは確実だが、彼女なりに起こそうとしてくれたからに違いない。

さっきのアレとは、関係ない筈だ。


そんな事を適当に考え乍ら、カムカヌカはまだ震えるてのひらで額を押さえた。

氷の様に冷え切った、手。

それとは裏腹に、体内のビリヂヤンが熱く沸騰しているのを感じて、カムカヌカは自身を抱き、身震いした。





「平気か、随分とうなされていたが、」







髪の毛を掴んだまま、コハクが囁いた。






「・・・・ええ、」






カムカヌカは視線も定まらないまま小さく応えた。

脳裏に浮かぶのは、夢映像ドラムヂヨンばかりだった。




あの場所を、僕は知っている。

いまから、向かわなければ、。






























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