人は成長するものです
和哉が剣道を始めて瑠実は剣道の時間が夕方遅くにあるので家で父親と留守番する様になった。私は父親が大嫌いだったのでついて行った。父親は外では大人しい人だったらしいが、和哉と私には暴力を良く振るっていた。
「ただ今」
と部屋に入るとテレビを見ている和哉を蹴る。母がキッチンから駆けて来て和哉を抱きしめて2階へ逃げる様に促す。そうすると今度は私の頬を殴る。その為に母が今度は私に向かって飛んで来る。間に合わなくて殴られる事が多いが今日は間に合った。抱き上げて2階へ逃がしてくれたので和哉と部屋の鍵を掛けて震える。
そして母の怒鳴り声が響く。
「仕事で嫌な事があったとしても子供達に当たるな!虐待がわからないのか!最低男」
「虐待じゃない。わからないから教育的指導をしているだけだよ。何?俺より子供達が良いの?子供が産まれると夫よりも子供達が大切って本当なの?」
「馬鹿かお前は!帰宅して何もしていない子供達を蹴る。殴る。100歩譲っても教育的指導とは言わないんだよ。人間の屑って言うんだよ!何回言えばその脳味噌に浸透すんだ!」
「俺が帰って来たら何をしていていても飛んで来てお帰りって迎えに来てくれたら。俺を1番に考えてくれたらきっと家の中も変わるよ。」
「お前1番に考えられるか!好い加減親になれ!晩御飯子供達が食べられないだろう!お風呂に入って来い。
1時間は出て来るな!」
と父親をお風呂に追い出して私達はご飯を食べて逃げる様に2階の部屋へ行く。
そんな感じだったので剣道の日は帰宅すると瑠実と父親は寝ているので気持ちが弾んだ。
剣道の日がもっと増えれば良いのに。と良く思っていた。
剣道を始めて半年後にのんちゃんと修也も入って来た。のんちゃんの好きなアニメキャラが剣道やっていてカッコいいから。修也はのんちゃんに引っ張られる形で入って来た。
キラキラした目でまた一緒だね。と言った修也は可愛かった。頭を撫でたら藍花ちゃんも嬉しい?と目を細めて聞いて来る修也にちょっとだけドキッとした。
いつ仲良くなったかなんて覚えていない。
気が付いたら仲良くなっていた。
気が付いたらいつも横に居た。綺麗な笑顔で。
兄の和哉は何処で知ったのかいきなりピアノが習いたい。とか言い出す。
2歳で周りにはピアノなんて全く存在しないのに。
暫く放置しても言い続けると母はふらっと1人で外出してアップライトピアノを購入して来て、ピアノの先生も見つけて来る。
そうして始めると私もやりたくなって一緒に始めるだから私がピアノを始めたのは1歳半位だったらしい。その時和哉は3歳私達は1歳半離れているから。
和哉は私をあいちゃんと呼ぶ。藍花だからあいかちゃんと呼べば良いのに。花を呼ばない。別に良いけど。和哉は誰からも可愛いね。と言われる顔で髪は地毛でも明るくメッシュが入った様に見える。
その為に母は知らない人から
「こんな小さな子供の髪を染めるなんて馬鹿な親だ」
と怒られるらしく、
「冤罪はこうやって生まれてるんだ!」
と家の中で怒鳴っていた。その場では言っても無駄だから。と言葉を飲み込んでしまうらしい。
ピアノの音が響く様になったある日女の子と男の子が庭に立っていた。
羽間希ちゃんと羽間修也君。希ちゃんは和哉の1つ年上で修也は私と同じ歳。
気が付いたら毎日一緒にピアノを弾いていた。
希ちゃんは漆黒の綺麗な長めのロングボブで目は二重で子供ながらに綺麗な人だと思った。
修也は、少し長めの髪にやはり漆黒で色白。柔らかい垂れ目で可愛い女の子な感じだ。
私は、和哉よりもやや明るい感じで肩甲骨位迄のロングヘアで性格は和哉が大人しい子に対して活発で元気過ぎと言う感じだった。
希ちゃんをのんちゃんと呼び、和哉は、カズ君と呼んでいた。
修也の事はのんちゃんもカズ君もシュウヤと呼ぶから私もシュウヤと呼んでいた。
シュウヤは私の事をアイカちゃんと呼んでいた。
母に
「修也君は藍花と同じ歳で男の子なんだから藍花が呼び捨てなら修也君も呼び捨てで良いのよ。」
と言われていたが、当の修也は
「藍花ちゃんは僕と違ってカッコいいからこのままで良いの。僕は藍花ちゃんより弱いから。」
そんな修也に母は度々「呼び捨てで。」と言っていた。
のんちゃんと修也のママはとても上品なセレブママな感じだけど怒るとうちの母より怖いのでは?と幼いながら感じるものがあった。
修也ママは
「修也君が藍花ちゃんを呼び捨て?良いのよ。このままで。ねぇ」
修也ママ目が笑ってないから怖い。
羽間家は女帝家族だから、ママ、のんちゃん、パパ、修也のピラミッドで成り立っている。
うん。今わかった。修也ママは敵に回してはいけないって。2歳の私空気読めて凄い。