神の加護を持つ者
応接室に着いた。
先程の試験官ラングナーとフィーナがいる。
俺とアイリーンさんはソファに並んで座る。
まず、ラングナーが話す。
「では、今回の合格者2人に今後の行動について説明する。2人はBランクだが、まだ予備期間だと思ってくれ。今日から1週間以内にBランクのクエストをクリアしてもらう。それで正式に冒険者カードを発行する。達成できなければ合格取り消しでもう1度受け直してもらうことになるから注意してくれ!」
フィーナも続けて話した。
「お2人なら問題なさそうですけどね。
今後、お2人がパーティーを組む事になるかもしれないので、自己紹介やスキルの紹介などしてはいかがですか?」
フィーナ、ナイス!!
これでアイリーンさんのスキルを詳しく知れるかもしれない!
「もちろんです!俺はカイアス。スキルは〈破砕〉、触れた物を粉々に出来ます。」
「私はアイリーンです。スキルは〈聖剣〉です。棒状の物ならなんでも聖剣になります。聖剣といっても本物ではなく聖剣と同じ強度、切れ味を持つ刃を作れます。以上です。」
なーんか距離を感じる。そりゃ出会ったばかりで仲良くなるとかフレンドリーに接する方が無理……か
チラッとフィーナを見た事は内緒だ。
これで復讐の第1歩だな。ここまでの道のりとこれからを楽しんでいる自分もいる。
しかし、やはり心の奥には黒い物がへばりついている。
それだけは忘れてはならない。今の扱いが良くても、以前は酷いものだったし、俺の他にもスキルが開花していない奴がいたら同じ目にあっている。それが許される世界を俺は許さない
「ねぇ」
アイリーンさんが俺に話しかけた。
「はい。なんですか?」
「あなた…。なんで冒険者になったの?それは大丈夫なの?」
「え?」
質問の意味が理解できなかったが、セーレが口を開いた。
「こいつ。私に勘付いてるんじゃないか?スキル〈聖剣〉と言い、こいつ…。もしかして加護持ちか? おいカイアス!こいつには気を付けろ?SSランクに到達し得る存在だ。
復讐が大事なら早めに始末した方がいい
こいつには〈服従〉も効かない可能性がある。」
なぜ?SSランクは全員殺す。それは変わらない。
しかし、今の時点でこの子を殺す気にはなれないが……
それに加護持ちと言ったか?それはなんだ?
「…………………」
セーレ?
セーレが黙ってしまった。こんな事初めだ。それ程、このアイリーンさんを警戒しているのだろう。
「大丈夫なの?」
アイリーンさんがもう一度聞いてくる。
「はい。大丈夫ですよ?冒険者になったのもスキルを使いこなせるようになったからなんです。」
「そう……。」
「話は終わったか?我々からの説明は以上だ。では、解散!君たちが無事にクエストをクリアし正式にBランクになる事を祈っているぞ!」
「ありがとうございます。失礼します。」
そう言って応接室を出た。
そこからは早足でウェグリアを出た。
周囲に誰もいない事を確認する。
特にアイリーンさんは警戒する必要がある。
〈空間転移〉
ルーヴェルの街、近郊の森に帰ってきた。
「おい?セーレ?家に着いたぞ?加護持ちとはなんだ。説明してくれ。」
「はいよー。」
返事がきた。全く話さないから心配していた
「なんだい?心配してくれたのか?魔神の私に対しては優しいねぇ♪」
「調子に乗るな!」
いつもの調子に戻ってるな
「いいかい。カイアス。加護持ちというのは、本来のスキルの他に神から加護を授かっているという事なんだ。神は1人じゃないし、それぞれに司るものも違う。私が服従みたいなもんさね。あのアイリーンはおそらく神の加護を受けている。私のように会話は出来ないが本能的に魔神や悪魔などを察知しているのかもしれない。」
そんな事が可能なのか?でも察知しているとしたら、あの時の質問にも納得がいく。
「とにかく!おそらくだがSSランクはほぼ全員が加護持ちだ!加護持ちに〈服従〉は、効果が薄いんだ。他の悪魔たちのスキルも使いこなせるようにならないといけない。可能であるなら45体の悪魔を増やす事も考えないとな!」
増やす事が可能なのか?
「出来るさ!宿主がいない時、スキルを強化する為、私は悪魔たちを服従させスキルを奪って行ってるからね。志を同じくするカイアスなら宿主がいる状態でも悪魔を追加で服従させる事も出来るはずさ。
まあその辺の事はまた今度でいいよ
明日から冒険者生活だろ?頑張りなよ?」
無論だ。俺はSSランクを殲滅し、この帝国の軍事力を圧倒的に低下させる。
その後、他国に戦争工作を行い、帝国を滅ぼす。その為にSSランクに近付かないといけないが、自分がSSランクになれば近づく事も容易なはず
とりあえず冒険者としてのランクを上げていく。そして、ゆくゆくはこの世界を壊す!
それだけは絶対に変えない!変えるわけにはいかない!!