冒険者になる
「あれ?どこかでお会いしました?私はフィーナと言います。このウェグリア冒険者組合の受付をしています。よかったら案内しますよ?」
フィーナ。今ここで働いているのか。
前よりも元気そうだ。少し安心した。
「お願いします。あの冒険者ってどうやったらなれるのでしょうか?」
「スキルの適正と習熟度を見ます。それで試験官が合格と判断したら冒険者になれます。基本的にはFランクからですが、実力が認められればもっと上のランクから始まる場合もありますよ?それに私のスキルは〈スキル鑑定〉という珍しい物なんです。
だからスキルで嘘はつけません。それでここに採用されたんです。」
「そうなんですね。」
これはヤバイかもしれん。
記憶は消してあるが、スキル〈魔神〉なんて知られたらどうなるか分からん
なんとかスキルを別の物に隠蔽しないと
おい!セーレ何かいい手はないか?
「まさかここで再開するとはねぇ。スキルを別の物に仕立て上げるのは無理だ。スキルを鑑定される瞬間に〈服従〉させて別の物だと認識させるしかない。そこから悪魔のスキルを使って実演するとかだろうねぇ」
それでうまく行くのか?
「分からんよ。その場は誤魔化せても今後、不意にその子がカイアスのスキルを覗き見たらバレてしまうからね。まあその時はその時さぁ。SSランク以外でこの街であんたに敵う存在もいないだろうし」
よし。とりあえずそれで行こう。無理なら別の街だ。
「着きましたよ。ではこのまま受付まで案内するので、手続きして下さい!」
「お願いします。」
フィーナと受付を挟んで向かい合う。
「では!この書類に名前とスキルを記入して下さい。その後、〈鑑定〉して問題なければ実戦に移ります。実戦については試験官に聞いて下さい。じゃあお願いします」
名前はカイアスでいいか。
スキルどうする?この街ではそのスキルをメインに使わなくてはならない。
何かいいやつあるか?セーレ!!
「〈服従〉以外で戦闘向きで使いやすく強力なやつ~。難しいねぇー。これでいいんじゃないか?」
〈破砕〉
触れた物を任意の大きさでバラバラにするスキル。元に戻す事はできないが、バラバラにするタイミングは選べる。
なるほど!いいなこれ!それ採用!!
書類を記入してフィーナに渡す。
「カイアスさんですね。スキルは〈破砕〉ですか?これもあまり聞かないスキルですね。では、疑う訳ではないですが、鑑定させていただきますね?。失礼します。〈鑑定〉!」
フィーナの目が赤く変わる。
今だ!
〈服従〉
「命ずる。俺のスキルを〈破砕〉と誤認せよ。」
小さい声で話す。周囲に聞こえるとマズいし
フィーナの目がまた黒みがかる。
「はい……。カイアスさんのスキルは〈破砕〉です。」
よし!〈服従〉解除
「あれ?今なにか………」
「どうしました?」
「い、いえ!なんでもないです。はい。
確かに〈破砕〉ですね。では、書類はこれでOKです。実戦会場まで向かって下さい。あちらです。」
「ありがとうございました」
よっしゃあ。成功した。危ねえどうなるかと思った。
次は実戦だな。この〈破砕〉スキルを使いこなさないと。
「大丈夫だろー。カイアスの身体能力はかなりのもんだからねぇ。そこら辺のBランクやAランクくらいなら圧倒できるだろうね。Sランクからは〈破砕〉だけじゃ未知数だ。」
とりあえず冒険者にならないとランクの話は分からないな。
行くか!
扉を開けると森が広がっていた。
試験官っぽい人以外にも何人かいるな。
全員冒険者志望か?
「カイアスか?君で最後だ。早く来たまえ」
「はい!」
10人くらいの人の横に立つ。
「よし!これで全員揃ったな?俺は今回の冒険者試験を担当するラングナーだ。よろしく頼む。試験内容だが、俺は長いのは好まないからな。手短に終わらせよう。俺のスキルは〈サイズ〉だ。要は物の大きさを自由に変化出来るものだ。
俺が今から岩を投げる。大きさをドンドン大きくしていくから壊せる物は壊して無理なら避けろ。壊せた岩の大きさで合否とランクを決める、以上だ 1つでも壊せたり、止めることが出来たら合格だ。
準備が出来た者から手を挙げて前に立て」
これって……俺にめちゃくちゃ有利じゃないか?楽勝だな
「しゃあ!俺から行くぜ!!」
ガタイのいい男が言った。
「じゃあ始めるぞ?試験開始!行くぞ」
試験官のラングナーが岩を投げる。その岩がドンドンデカくなる…
「は?!」
その岩は、その男の所に到達する頃には、男の背丈の倍くらいになっていた。
デカすぎるだろ?
「ぎゃああああ!」
悲鳴を上げて男は避けた。スキルも使えていない。
「失格!次は誰だ?」
誰も行こうとしない。帰ろうとする者すら出てきた。なんてこった。
「私が行きます」
次は白く長い髪をなびかせた綺麗な女性だ。
スキルはなんだろう?怪我とかしないのかな?女性対してはなんか甘くなってしまう。フィーナの影響か…
「では行くぞ!」
「少し待って下さい。」
その女性が言う。そして森の方に少し歩いて木の棒を拾って戻ってきた。
「すいません。お待たせました。お願いします。」
「う、うむ!行くぞ」
ラングナーが岩を投げる。先程と同じ速度で大きくなりながら岩が飛んでいる。
あんな木の棒で何ができるんだ?
すると女性が持っていた木の棒が光り輝いた
「スキル〈聖剣〉」
そういうと女性は岩に向かって木の棒を振った。すると、岩は真っ二つに割れ、彼女の後ろに転がる。
何が起きたんだ?周りの人たちも驚きを隠せないようだ。
「よし合格だ。続けるか?やめてもFランクから冒険者を始められる。最高でBランククラスまで挑戦可能だ」
彼女は即答した。
「では、Bランク相当の大きさの岩を投げて下さい。」
「わかった。では行くぞ!」
ラングナーは岩を投げた。その瞬間から岩が巨大化する。デカすぎるだろ?!
その岩の影だけで、あまりが夜になったのかと思うほどデカい。あの子は大丈夫なのか?
あの女性は臆する事なく岩に向かって斬り込み続け、数分後には岩は粉々になった。
これにはラングナーも驚いているようだった。
「まさかこれ程とは…。いざとなったら岩を小さくする事も可能だから君と街への被害を無くそうと思っていたが、不要だったか…」
「これで私は合格ですか?」
彼女は淡々と聞いた。
「もちろんだ!アイリーン、Bランクとして合格!」
アイリーンというのか、あの子は
「よし次はお前だ!」
ラングナーは俺を指差している。
周りを見ると全員、辞退したようだ。座り込んでいる。
アイリーンは、水を飲みながら奥の方でこちらを見ている。
ちょっといい格好したい感じが出てしまった。
得意げに試験官の前に立つ。
「では、お願いします!!」
「行くぞ!」
岩がこちらに飛んでくる。反射神経もそこそこいいから手で触れる事は簡単だった。
〈破砕〉
岩は粉々に砕け散った。俺の中指が触れた瞬間にそこから粉々だ。
「「「おおーーー」」」
周囲から歓声が上がる。悪い気はしない。
「貴様も合格だ!さあどうする?Bランクに挑戦するか?」
これくらいなら楽勝だろう
「ああ、頼む!」
先程と同様に滅茶苦茶な大きさの岩が転がってきた。でも、簡単だ。岩に触れる。
そこから砂になっていくが、予想していなかった事が起きた。
その砂が俺の上に落ちてきて埋もれてしまう
「ちょっとマズいか?アイリーンは斬り飛ばしていたから自分には降ってこなかったけど、俺は分解に近いから上から落ちてくる!」
クソ!〈破砕〉の本気を見せてやる。
粉々にする大きさを最小に、目に見えないほどの塵にする!
両手で岩に触れ、岩を砂塵にする。
そして周囲が砂で覆われている今なら、〈破砕〉以外も使える!
「来い!セーレ!30%」
「おいおいーここで呼び出すのかい?バレても知らないよ?」
「〈破砕〉だけだと辛いからな!」
〈服従〉
「命ずる。砂よ、俺を避けて落下せよ。続けて命ずる。岩を止まれ。」
すると、岩は止まり、上から落ちてくる砂は俺の周りにドーナツ状に落ちてきた。
もう触れる必要はないな
「終了!!カイアス生きてるか?!」
やべ!ラングナーだ。〈服従〉解除
「はい!生きてます。全部粉々にするのは大変ですねー」
「おお!生きていたか。なら合格だ。カイアス!Bランクで合格だ。まさかBランクが1度に2人も出るなんて前代未聞だ。試験官やって長いが初めてだ。2人とも誇るがいい! じゃあ合格者はフィーナのもとに戻れ、今後の説明がある。」
「はい。ありがとうございました」
案内所に戻ると注目を浴びた、たった2人の合格者、それもBランクでの合格だから当然か
でもこのアイリーンさんは本当に無口だな。
「アイリーンさん!カイアスさん!こっちですー。今後の事を説明するのでこっちの応接室に来てくださーい!」
とりあえず合格できたー。SSランクに近付く為とはいえ、疲れるなぁ