怒り
ダールの農場についた
もう夕方だが、どこにいるだろうか?
いた!こっそり近付くか
「ったく。カイアスの野郎!適当な仕事やりやがって。ドロップアウト如きに仕事を与えてやってるのに…」
このクソ野郎!怒りが込み上げる
適当な仕事?農地の開拓を18時間も休みなくやらせた上に休憩しようとすれば、こいつのスキル〈投石〉で小石をぶつけられる。
お前はただ酒飲んでただけのくせに!
この……クソやろう…!
「だめだ!落ち着け!!」
セーレが話しかける。
「なんだ?邪魔をするなよ」
「怒りでスキルのコントロールがブレてる!50%から75%まで上がってる。そんな状況で怒りに任せて〈服従〉を使えば暴走するぞ?お前の復讐はこんな簡単に終わっていい物でも、軽い物でもないだろ!!」
ああそうだった。俺が苦しみ続けた7年間はこんな怒りに任せたもので終わっていいものではない。
「セーレ……。ありがとう…」
「いいさ。カイアス。お前は私にとって当たりなんだ。人の命は短いが、ようやく楽しめそうなんだ。こんなことで終わらないでくれよ?」
「セーレ……。お前今までどんな奴のスキルだったんだ?というかいつからスキルに?何者だ?」
「レディにそういう質問をするもんじゃないよ?その内教えてやるよ。融合度100%に達したら記憶も共有だから嫌でも知る事になるけどねぇ。今まで100%を達成した宿主はいないけど!」
とりあえずこのジジイはどうしてやろう
〈透明〉〈浮遊〉〈気配隠蔽〉解除
ダールが気付いたようだ。
「あん?お前誰だどこから入った?!
お?お前カイアスか?なんだその格好は?余裕あるなら働け!!また石ぶつけられたいか?ああ?!」
こいつはどこまでいってもダメだろうな。
「………ダール」
「何だ!落ちこぼれ!また痛い目に合わせてやるよ!スキル〈投石〉!」
ダールの後ろの岩が持ち上がりこちらに飛んでくる。人の拳くらいの大きさだ。速度もある。
「俺はなぁ!もうドロップアウトじゃねぇんだよ!!命ずる。岩よ砕けろ!」
こちらに飛んできていた岩が砕けて散らばった。
「な、何しやがった?!スキルが使えるのか?」
「もうお前に言うことはない……。苦しんで死ね!!命ずる。ダールの手足の骨よ、折れろ!」
ゴキッ!ボキッ!
嫌な音がした。
「がああああああ!!」
ダールが地面に転がりまわる。
「痛いか?苦しいか?俺はこれよりもっと辛い目にあっていたんだよ。お前には家族もいたな?そいつらにも同じ苦しみを与えてやる」
「ま、待て!待ってくれ!家族は関係ないだろ!俺を殺しても構わん!家族には手を出すなー!!」
セーレが口を挟む。俺にしか聞こえないが
「へぇーこいつこんな感じなのに家族想いなんだねぇー。ねぇ?どうするの?慈悲を与えるの?容赦しないの?」
もちろん。後者だ。
こいつの家はあそこか。明かりがついてるな。またこの〈服従〉の力を試そう。
「おいダール。命ずるお前の家から目を離すな! そして命ずる!!風よ竜巻となり、そこの家を薙ぎ倒せ!!」
「や、やめろ!やめてくれ!頼むお願いだ」
巨大な竜巻はダールの家に向かって進み続ける。そして、家を跡形もなく消し飛ばし、竜巻も消えた。
「ああああああー!!!」
ダールの叫び声が響き渡る。
……虚しい
「…ダール。……命ずる。首の骨よ。折れろ」
ゴキッ
そして俺の復讐は一段落した。
森に帰るか。思ったより虚しいものだな。
「なんだいなんだい?辛気臭い顔しちゃって。お前を苦しめた奴を一族ごと滅ぼしたんだ!少しは気分も晴れただろう?あのジジイの叫び声最高だったじゃないか?」
「いや…思ったより虚しいもんだなーと思ってさ。今日は仕事明けだったし疲れた。帰って一旦寝るよ」
「そうかい……」
〈空間転移〉
スキルを複数使えるのは本当に便利だ。
一瞬でイメージした通り、森まで帰って来れた。フィーナももういないようだ。
そういえば、〈服従〉を使えば家も簡単なんじゃないか?
「命ずる。木々よ、1つにまとまり土台となれ。おお!?」
木が曲がり大きなドーム状になった。
その上に登る。何か使えるスキルは……
これだな。
〈物質変換〉〈刀剣〉〈重量変換〉
木の葉に触れる。するとそこだけまた木材になった。〈刀剣〉で鋭利な刃物を空中から召喚できた。
それで木を切り床にする。
〈重量変換〉で重さも変えて家を建てる。
2時間ほどで家ができた。
1階建てだが、以前よりもしっかりした作りだ。必要な物も食品以外はスキルで作れる。
ベッドや机なども揃えた。普通の民家と変わらない程度には作れた。
いい出来だ!
腹も減ったなぁ。魔獣でも狩るか。
セーレが反応した。
「狩りかい?!いいねぇ。狩りは大好きだ。 〈服従〉を使えば簡単に倒せる。試しに行ってみな!」
「あーそうするよ。でも疲れたなぁ。スキルなんて使ったことないから慣れてないのか?」
「そんなもんだよ。周囲の人間はスキルの調整を早くて5歳から学ぶんだ。お前は17で開花。他の奴らがスキルで何をしようと考えている時、お前は手足の動かし方を学んでいるんだ。身体能力が高い分、覚えも早いがね」
そんなもんなのか。
その内慣れるだろうし、これからどうするか考えないとなぁ
とりあえず魔獣狩るか。何かいい感じのやついないかなぁー
そうして家を出る。