もう1人の戦争
時を遡る事、約2時間前
カイアスは1人先行し、敵兵士を殲滅していた頃
同時刻 別地点では槍を持つ青年もまた戦闘に入っていた。
カイアス様は無事だろうか…
こうも人の目が多い所だと、本来の力を使えないはず……
私がお側でお守りし、仕えたいが………
いやしかし、〈破砕〉のスキルのみであれば味方が近くにいる方が戦いにくいかもしれない
ヴィクトリアはどこにいるか全く分からないが、アイリーンという女性は近くにいる。
彼女は腰に携えていた二本の金色に輝く剣を振るい戦っている。
相手が落とした槍や剣も拾い上げたら同じく光り輝く
そしてその剣は相手の盾を上から両断した。
さらにそのまま剣を投擲する。
その剣は相手の盾を兵士ごと貫く。
カイアス様からの情報では〈聖剣〉というスキルで、棒状の物であれば手に持てば斬れ味や硬度などを聖剣と同レベルの業物にまで引き上げることができると聞いた。
あの光を放っている状態が聖剣化していると考えていいだろう。
それに盾をそのまま両断とは……
防御すら意味をなさないか……
それに、投擲した武器も光を維持していた。相手の兵士を貫いた後に、いつもの武器に戻った。
つまり、手に触れている間だけではなく一度聖剣化してしまえば手を離れても少しの時間ではあるが、その状態を維持できる
そして、あの動き、自分の周囲を細かく把握しているようだ。
視野も広く剣術もなかなかの腕前だ。
カイアス様は何も言っていなかったが
今後、カイアス様の目的の妨げとなる存在ならこの場に乗じて殺害する必要もあるだろうか………
いやあまり勝手をするのはやめた方がいいか
さらにこの者、ヴィクトリアの弟子となっているようだ。
ならば既にSSランクに到達する実力も備えている可能性がある。
勝手に仕掛けてまた助けていただくような失態はできない!
ここは協力し早々に終わらせて合流するのが最善だろう
それに対人戦であれば、相手が兵士だろうと冒険者だろうと関係ない。
圧倒してやろう…
私とアイリーンは順調に兵士を殲滅していく
そして片付けた。
ヴィクトリアも姿を現した。
相変わらずすごい速度だ。全く反応できない
ヴィクトリアが話す
「片付きましたね?貴方たち怪我はない?」
「大丈夫です」
「無論です」
「あら?カイアスは?」
「かなり先行しているようです。なので私は援護に向かわせていただきます」
「ええ 行ってくださ……」
ヴィクトリアの言葉をアイリーンが遮る。
「ヴィクトリア様 あれ……」
アイリーンが指差す方向から土煙が上がりこちらに向かってくる
「なにかしら……… いや!あれは!〈軟化〉と〈硬化〉?!SSランクよ!アイリーン、デュラン気をつけなさい」
「はい」
「分かっています」
こんな所でSSランクか……
しかもスキル名を2つ言っていたな…
という事は2人いるのか
クソ!早くカイアス様の所へ向かいたいが…
確かカイアス様はあちらの方向だったはずだが……
あ、あれは?!
ワイバーンだと?しかも10体も 群を作らないはずだ
しかも何かを攻撃しようとしている為か旋回している。
カイアス様!!
「ヴィクトリア様!あちらの方向を見て下さい!」
ヴィクトリアは反応して私が指差す方向を見る
「ワイバーンが群れを…… 使役されているわね という事は、あそこにもSSランクがいます しかし今はこちらを相手しないと」
SSランクだと!
〈破砕〉のみではカイアス様と言えどもSSランクには太刀打ちできないだろう
「ヴィクトリア様!ここは私に任せてカイアスを助けて下さい!あちらの方向に向かうのを先ほど見ました 私が行くには時間がかかる。貴方であれば瞬きする間に到着できるはずです!どうか!」
「デュラン……貴方、他人に対してそこまで必死になれたの?」
「私はあの者のおかげで変われました!こんな所で死なせたくない!頼みます」
ヴィクトリアは少し考えてこちらを向いた。
「分かりました 私が必ず助けましょう! ですが貴方1人では勝てない。アイリーン!ここに残りデュランを助けなさい。出来るわね?」
「もちろんです デュラン様、背中は私が守ります」
「ありがとうございます カイアスを頼みました」
ヴィクトリアはコクリと頷くと姿を消した。
俺の目の前には砂の波が迫る。
その上には男と女が乗っている。
2人が戻るまでここで耐える!
いや耐えるというのは消極的だな
勝ってしまおうか
「俺は【龍槍】のデュランだ お前ら2人!ここで死んでもらう!いくぞ!!」




