〈服従〉の使い方 復讐の始まり
ルーヴェル
ここゴールドーラ帝国の帝都ドーラと各地の街を繋ぐ中継都市。
規模はそこそこ大きい街だ。
貿易も冒険者も活気付いている。
とりあえず町の手前で〈浮遊〉と〈服従〉を解除した。あの姿では流石に目立ちすぎる。
街で目立たないよう裏路地に入ると早速来やがった。
「おい!カイアスじゃねえか?落ちこぼれがこんな所で何してんだよ?さっさと消えろ」
「そうだそうだ」
「視界に入るだけでも気分が悪い」
な?酷い言われようだろ?これをずっと続けてきたんだ。
こいつらの名前なんか知らん。A、B、Cとかでいいだろ。
ドロップアウトと周囲に知られれば、知らない奴からも悪態を突かれるのがこの国だ。
ゴールドーラ帝国はスキル至上主義を掲げており、スキルの強さで全てを決める。
反対に弱ければ奴隷扱いになり、ドロップアウトにもなればその辺の野生動物と扱いは変わらない。
さあどう料理してやろうか?
殺すか?
「ちょっと待ちな!ただ殺すのは面白くないだろ?それでもいいが、〈服従〉を使いな!50%を出すと姿が大きく変わっちまうが、10%だと目の色だけですむ。他のスキルが使えなくなるが、〈服従〉だけでも充分だろ」
そりゃそうか。
Aが話す
「何ボーッとしてんだよ。ちょうどいいや新技の的になってくれよ。答えは聞かないけどなぁ。」
Aの目が赤い色に変わる。
「くらえ!スキル〈火球〉!火炎弾!」
小さい炎がこっちに飛んできた。小さくても火は火だ。直撃すれば火傷するし、当たりどころが悪ければそのまま燃えてしまうだろう。
今までは何とか避けて逃げるしかなかったが今は違う。
俺の目の色も赤く変わる。
「来い。セーレ 10%」
「おい!あいつスキル使ってるぞ?ドロップアウトだろ?」
BとCが騒ぐ。
スキル〈服従〉発動
「命ずる。火よ、その場で止まれ。」
Aが撃った火炎弾が目の前で止まる。
ちょっと熱い…
「何で止まるんだ?火炎弾連射ー!!」
10発ほどの弾が飛んでくる。名前すら知らんが、なかなかの連射速度だと思うが関係ない。
「命ずる。動くな!」
「お、おい!なんで動けないんだよ?」
どうやら火炎弾だけでなく、ABCの3バカトリオも動けないらしい。俺が意識していなくても、認識したら効果があるのか使い方には気を付けないと。
デカい声で、死ね!とか叫んだら、それこそ大災害になる。
それは面白くないし、復讐もできない
「さて…。散々今までやってくれたなぁ?覚悟しろよ?」
ようやく復讐が出来る。
思わず高揚する。
「命ずる。火よ。一箇所に集まり、Aの元へ高速で戻れ!」
11発の弾が1つの大きな塊になり、飛んでいった。そしてAに直撃した。Aが燃える。
苦しみの声を上げているが、それでも動けないようだ。
〈服従〉の効果は絶対のようだ。
BCは怯えている。
Bが口を開く。
「な、なあカイアス!俺たち子供の頃一緒に遊んだ事があるんだよ!友達みたいもんだろ?見逃してくれよー」
「命ずる。少し黙れ、続けて命ずる。スキルを使うな。」
「グムッ!ムームー!!」
2人とも口が開かなくなっていた。
Aはもう丸焦げで何も話さない。
こいつらはどうしてやろうか?
〈服従〉の効果がどこまで及ぶのか調べるか…
2人の目は恐怖の色に染まっている。お前らもスキルくらい使って応戦しろよ。ああ、使えないのか…
裏路地奥の広間だから誰も来ない。
まあここで俺を痛めつける予定だったようだが。
試してみるか…
「命ずる。Bの周りの空気を消えろ」
Bに変化はない。呼吸できなくなると思ったが、セーレどういう事だ?
「あー。それは空気の範囲が曖昧なんだよ。何メートルとか指定しないと」
「じゃあこういうのはどうだ? 命ずる。 Bよ、呼吸するな」
Bは苦しみ出した。動けず、声も出せず、そのまま呼吸出来ないなんて苦しいだろうな
まあ俺が今まで受けた苦しみに比べれば大した事ないだろうが。
そしてそのまま静かになり倒れた。死んだら、〈服従〉の効果は切れるのか
「次はお前だ。」
「ムームー!!」
未だに声が出せないようだ。俺が命令してるからなんだけどね。
とりあえずこいつらはもういいか
直接殴り殺してやる。
「命ずる。Cの痛覚を10倍にしろ」
これで………あれ?なぜだ?!
Cが走りだした。なぜ?〈服従〉の効果が切れたのか?
「命ずる!止まれ!」
Cは止まったが、続いて
「た、助けてくれーー!!だれかー!!」
どういう事だ!クソ!!
「命ずる!!Cの心臓よ止まれ!!」
「ガッ!!グゥ!カハッ!」
立ったままCは死んだ。どういう事なんだ?
〈服従〉には効果時間があるのか?
おい!セーレ教えてくれ!
「はいはい!魔神のスキル〈服従〉っていっても制約はもちろんあるさ。1人の人間に付き〈服従〉の効果は3つまでだ。 そこで心臓が止まってる坊やは、①動くな②話すな③スキルを使うな、だ。そこに痛覚の変化を命じたら、①が解除されるから動けるようになったってわけさ」
「いやそれならBの奴はどうなんだ?同じ3つの効果を与えた後に、呼吸を止めたら動けるだろ」
「ああ、動けるよ?ただ呼吸止まってるから動ける事に気付いてないんじゃない?ちなみに死んでも〈服従〉の効果は続くからね?そこで立ったまま死んでるだろ?」
なるほど。これは注意しないといけないな。
順番も覚えておかないと色々と面倒になりそうだ。
「もう一つ聞くが、生き返れ!とか死ぬな!とか他にも矛盾する命令をしたらどうなるんだ?」
「この世の理を覆す事はできないよ?そこまでの力は神であってもありはしない。
矛盾する命令、例えば動くなと動けってことかね?それなら後からの命令が優先される
あーあと初めにいたあの女の子、あの子みたいに記憶を消すとかは、永続的に続くからね。それこそ記憶を戻すとか命令しないと」
なるほどなるほど。やっぱりかなり強いスキルだ。
さてと手始めに3人ぶっ殺したが、こんなもんじゃ満足できるわけないな!
じゃあ今朝肉体労働させたくせに銅貨3枚しか払わなかったダールのクソジジイをやりに行くか!
「セーレ 50%だ」
黒い霧に包まれ、姿が変わる。
「おいおい!だからここだとその姿は目立つぜ?大きな街だとスキルを使用した事を感知するスキルとあるんだろう?大丈夫かい?」
「よく知ってるな。帝国軍はスキルを使う者を探知するスキルを部隊ごとに配置してたり、近距離特化や遠距離特化で部隊を組んでいる軍事力も他国に比べて高い。しかし、これで関係ないだろう?」
〈服従〉〈浮遊〉〈透明〉〈気配隠蔽〉
自分が着ている服ごと消えた。
気配も消した。これでスキルが使われている事は分かってもどこにいるかは全く分からないだろう
じゃあ早速行こうか。
「へぇーーなかなか面白い使い方するねぇ。45のスキルの理解も進んでいる。やはり見所あるね」
「そりゃどうも。あー忘れてた。〈服従〉解除」
下の方で立ったまま死んでた奴はその場で倒れた。その内大騒ぎだろうが、ドロップアウトだった俺が疑われる事もないだろう。
さあ!ダールのジジイに復讐を降す!