戦闘準備
俺たちは応接室へ案内された。
ジェラルド=エングリーズは、兵士の指揮をすると言ってどこかへ行ってしまった。
やはり戦争しか興味がないらしい
俺は極力話さないようにする。
人との会話が苦手すぎて余計な事を言ってしまいそうになるから
そうした事はデュランの方が得意だ。
「ではガージール。現状を教えてくれ 俺たちはどうしたらいい?」
「お話が早くて助かります。では説明させていただきます。」
ガージールの説明を要約すると、
現在、帝国軍と皇国軍は国境線に沿うように展開している。
間には広大な平野が広がっており、お互いがよく見渡せるそうだ。
遠見のスキル持ちの情報では、皇国側にはSSランクと思われる冒険者が4名確認されているそうだ。
ジ=ザグナス皇国は、皇帝が統治する国だが、その皇族は皇子が7人、皇女が7人いるがその全員が強力なスキルを有しているという情報がある。
よってスキルは遺伝によって強く継承されるという考えが根深いらしい。
皇族はそうやって発展してきたようだ。
生まれは関係なくスキルが強力であれば優遇される帝国とは仲が悪いようだ。
そして、この戦争ではSSランクの他に第一皇子と第三皇女と思われる旗が皇国陣地に掲げられていた為、今回は相手も本気で侵攻してくると判断される。
ルーヴェルを壊滅させた犯人も皇国からのスパイだと考えられているようだ。
それはそれで助かった。
皇族のスキルは隠蔽されていて知ることは出来ないが、第一皇子のスキルは神に匹敵する強さと言われているそうだ。
「それでこちらのSSランクは誰が来ている?どういう布陣だ?」
「私どもはSSランク様に対して指示を出す事はできません。皇帝から禁じられております。情報においても一般的に知られている事以外では他言してはならないと」
はぁー面倒だな
ベリス、ベリト行くぞ?
「「はーーい!!」」
「えーと。ガージールさん?」
「カイアス様!私の事はガージールとお呼び下さい。何でしょう?」
〈秘密を暴く〉〈秘密を隠す〉
「カイアス様?なぜ今ここでスキルを?」
やはり目の色が変わるのは目立つか
でもこの2人のスキルでは関係ない。
こいつからSSランク冒険者の情報を調べる、そして俺がスキルを使ったという事実を隠す
戦闘中ではない、こういう時に本当に便利だ。加護持ちに効くのかどうかも試してみたい
「「ありがとうございまーす!!」」
「でも加護持ちに効くのかなー?試した事ないから分からない!」
それくらい加護持ちって珍しいのか…
そして、やはりガージールもSSランクのスキルは把握していない。
スキルは帝都や冒険者組合で管理されているから街の貴族でも知っている者は少ない
SSランクとしては有名でもその人のスキルを誰も知らない…
それでいいのかとも思う。
そして、ヴィクトリアとアイリーンもこの街に来ていた。
ガージールが会ったSSランクの顔は分かる。
残りの男2人も探して無力化出来るならやる
無理ならスキルの情報だけでも入手したい
その時だった。
ドォーーン!!!
何かの爆発音が響いた
「何事だ!!」
ガージールも予想外の様で狼狽えている。
応接室へ兵士が飛び込んできた
「失礼します!報告します、ガージール様!皇国側からの砲撃です 敵の第一陣が進軍を開始!」
「な、なんだと?こっちはまだSSランク冒険者様も集まっていないのに…… 皇国は既に集めたのか…」
デュランが話す
「狼狽えるな!そこ兵士、敵軍の規模は?SSランク達はどこにいる?」
兵士が即座に答える
「ハッ!皇国軍は総勢10万人規模になり、第一陣の規模は約3万人です。
〈遠見〉のスキルを持つ者によると冒険者と思われる集団も確認!SSランクもその集団内に複数いると思われます。」
「い、いきなり冒険者を出してくるなんて……あ、相手は本気だ… おいお前!SSランク冒険者様達はどこだ?出撃したのか?」
その質問に兵士が回答しようとした時、
扉が勢いよく開く。
「ガージール!貴方ここで何をしている!敵は既に進軍を開始している 貴方も前線で指揮を執らないでどうする!」
入ってきたのは、ヴィクトリアとアイリーンだ。
「あら?貴方はSSランクのデュランだったかしら?そこの貴方は…」
「任命式以来ですね。ヴィクトリア=ドーラ様。こちらはカイアス SSランク冒険者で私の弟子として同行しています」
「私、貴方に私がドーラ家の人間であると話したかしら?以前は、槍術を極める為に周囲には何も興味もないようだったから」
「あれから時も経っていますからね。俺だって変わります。それよりも今は………」
「そうだったわね!ガージール!貴方はすぐに前線へ行きない!デュラン、カイアス!貴方達もすぐに私と来なさい 敵の第一陣を私たちで蹴散らす」
ガージールは慌てて何処かへ行った
俺たち4人は早歩きで砦へ向かう
この間も砲撃音は止まない。
まだ街には落ちていないようだが、どこかの部隊が守っているのか?
「ねぇ?君……久しぶり…」
アイリーンが俺に話しかける。
「冒険者試験以来ですね。アイリーンさん」
「あら?貴方達は知り合いなの?」
「ええ ウェグリアの冒険者組合の試験で同じでした」
「そうなのね!SSランクの弟子、Sランク同士で仲良くしなさい!お互いに守りあいなさい 戦場では何があるか分からない」
「「はい」」
急いで前線にたどり着いた。
当たり前だが、そこは既に戦場となっていた。
敵からの砲撃とこちらからの投石、敵側からは盾と槍、剣を携えた者達が走ってくる。
こちらはバリケードを盾に待ち構えている兵士と既に外で敵と斬り合っている兵士もいる。
スキルを使いながらの為、炎や風、氷による
攻撃が飛び交っている。
こちらの総兵力は8万人だそうだ。
敵の第一陣には同数の3万人で対応する。
皇国の攻撃はまだ先と考えていた為、即座に対応できた兵士がこの数だった。
国境線は多くが山に囲まれている為、平野の部分はここしかないが、数で押し込まれたら圧倒される。
それに、壁上から見る限り左翼側がかなり押されている。
おそらくそこに冒険者がいる。
冒険者はスキルを使った戦闘のプロだ
剣による戦闘に特化した兵士達とは戦い方が異なる為、兵士には兵士、冒険者には冒険者で対応しないと戦局は苦しくなる。
ヴィクトリアも気付いているようだ
「私たちは左翼側に向かいます。皇国の冒険者たちを殲滅する!カイアス 貴方のスキルはデュランから聞きました 味方を巻き込まないよう注意して立ち回りなさい!」
「了解しました」
デュランは俺のスキルを〈破砕〉と伝えてくれたのだろう
初めての大規模戦争だ




