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スキル開花



「きゃああああー」


 

その女性の声で飛び起きた。

なんだ?!叫び声?




 すぐに武器になるような農具の鎌を持って向かった。こんな物が役に立つか分からないが、折角建てた家の近くで死なれても困る!



 向かう途中、別の集団の声が聞こえる。



「なんでここにあれがいるんだよ!?ここは低危険度の魔物しかいないはずだろ?」


「そんなの知らないわよ!でもあの囮が役立ってくれるでしょ?初めて役に立ったじゃない?」


そんな会話をしている。

冒険者か?囮だと?



 現場に着いた。1人の少女が木を背に怯えた表情でいる。修道服を着ている教会の人間か?



魔獣はなんだ?



「なっ?!」



 そこにいたのは、ブラックベア。

 Cランクの化物だ。魔獣はFランク~SSランクでランク分けされている。


 なんでこいつがこんな所に?


同じランクの冒険者でも複数人で倒す相手だ


 どうする?見捨てるか?

 いや!世界から見捨てたれた俺が誰かを見捨てるなど。それこそ人として終わりだ。

 あいつは今あの少女に夢中でこっちに気付いていないか?

 やるしかねぇな!



「おい!このクソ熊やろう!その子から離れろー!」



そう叫ぶと俺は持って来ていた鎌をブラックベアの目に突き刺した。



グオオオオオ!



完全に不意を突けばCランクの魔獣でも怯ませることくらいは出来た。


「おい!お前!こっちに来い!逃げるぞ」


「は、はいー」


 少女は俺に必死についてきた。

とりあえず自分の建てた小屋に到着した。


 梯子を登り少女も連れている。


「とりあえず大丈夫みたいだな。大丈夫か?君名前は?」



少女は震えていた。無理もないか

梯子を急いで駆け上がったせいか、被っていた帽子が落ちた。

 金色の髪、後ろで綺麗に纏められている。


 青い瞳、とても綺麗な顔立ち

その少女の美しさに俺は絶句した。



「えーと。大丈夫か?名前は言えるか?どうしてあんな所に?」



「あ…あの!助けていただいてありがとうございます!」



少女がペコリと頭を下げる。



「私はフィーナといいます。ある冒険者パーティーに広告塔のような形で所属していました。でも、私のスキルは役立たずで。今回も囮役で連れてこられたのですが、さっきみたいな上位の魔獣が出てしまい置いて行かれました。私帰る場所なくしてしまいました…」


 今にも泣きそうになっている。


 こうした場合はどうするのが正解なのか。今まで人とまともに話した事がないから分からん。

 こんな木の上に建てた6畳くらいの小屋に住まわせるのも申し訳ない。俺が言うのもなんだが。



「そうか。それは大変だったな。俺はカイアスだ。よろしく。」



「はい!よろしくお願いします。すいませんいきなり身の上話などしてしまい。落ち着いたら帰りますのでもう少しだけ…」



「いいよ。しばらくゆっくりしていきな」



「ありがとうございます。あの聞いてもいいですか?」



フィーナは聞き辛そうに質問した。



「なに?」


「カイアス様はなぜこの森に住んでいるのですか?先ほどの身体能力はスキルによるものですか?だとしたら冒険者にでもなれるかと」



「スキル?俺はドロップアウトだ。これで分かったか?」



あっしまった。少し嫌な言い方をしてしまった。でもこれでいいだろう。

 どうせこの子も俺がそうだと知ると敬遠するに決まってる。



「カイアス様!スキルが開花していないのですか?!なら、なら私のスキルが役に立つはずです!」



 いきなり手を握られた。人に殴られる以外で触れられるのは何年ぶりだろうか。


ん?スキル?



「フィーナのスキル?どういうことだ?」



「はい!私のスキルは特殊なものなんです。スキル名は〈スキル鑑定〉というものです。相手のスキルを理解するというものなんです。」




 なるほど。どうりで役立たずと自分で言ったわけか…



 魔獣はスキルを使わないし、対人戦もスキルを使った物が主流の為、スキルを理解する必要もない。だって相手が勝手に使うから。


 理解できても戦闘力は本人にはない。

 だから囮役に?自分の居場所の為とはいえ体張りすぎだろ…


 いや。でもこれで俺のスキルがなぜ開花しないのか分かるのか?

 スキルが使えるのようになるのか?



「頼む!!フィーナ!俺のスキルを鑑定してくれ!この17年間スキルが開花しない事で酷い目にあってきた。俺もスキルが使えたらと何度も思った。頼む!」



フィーナに握られていた手にも力が入る。



フィーナは優しく答えてくれた。



「はい!喜んで!カイアス様は私の命を助けて下さいましたから。私のスキルでよろしければなんなりと。」



「…ありがとう」



「では。いきますね?……〈鑑定〉」



 フィーナの青い瞳が赤色に変わる。これだ。スキルを使おうとする人は目の色が赤色に変わる。

 俺のスキルはなんだろう?よくある炎とか雷とか?それとも何かを作成する生産系か?

 どうしてもワクワクしてしまう。期待しないと決めていたが、やはり気になる!

 


 「え……」



フィーナの顔が強張る。

なんだ?スキルそのものを授かっていないとか?それなら悲しすぎる!


「あの…もう一度鑑定します!」


「あ、ああ……。どうぞ…」


「やっぱり……。でもそんなこと……」


「なぁ…。やっぱり俺にはスキルがないのか?」


「そんなことはありません!カイアス様にはスキルがあり開花させる事も出来ます。ただあまりにも特異なものなんです! 

 おそらく世界でも前例のない唯一無二のものです。私もこんなスキルは聞いた事がありません!」



「一体なんなんだ!説明してくれ」



「スキルとは神から授けられるものなんですが、これは一体誰から授かったものなのか…。」



一体どういう事だ。もう訳がわからん!



「フィーナとりあえずスキルを教えてくれないか?その辺はあとで考えるから。」



「わ、分かりました。すいません。つい興奮してしまいまして…では言います。カイアス様のスキルは………〈魔神〉です。」



「…………はぁ?」



「せ、説明しますね?私も理解はしてますが、どう説明すればいいのか」



そうしてフィーナが俺の〈魔神〉?のスキルを説明してくれた。



この世界のスキルは、



 物を作ったり、持ち上げたり、変形させる生産系のスキル

 炎、水、雷、氷、風などを生成して攻撃できたり、防御もできる戦闘系スキル



 本人の魔力量などにも影響されるから、どこまで強くなれるというのは本人の努力次第だが、スキルが変わる事は絶対にない。



 しかし、俺のスキル〈魔神〉は、スキルそのものに意識がある。開花させるにはその名を呼ぶ必要があるようだ。

 ただ〈魔神〉というものが、どういったものなのか不明な為、これ以上の説明ができないようだ。


「カイアス様。〈魔神〉の名前に心当たりはありませんか?5~8歳頃、スキルが開花する兆候が必ずあります。炎系なら熱が出たり、氷なら冷え性になったり」



「うーん。分からないなぁ……あ!でも確か…夢を見た気がする。」



「きっとそれです!!夢の内容を思い出して下さい!きっとスキルが開花するはずです」



 確かあの夢は、誰かに追いかけられる怖い夢だった。子供の頃はそれでよく泣いていた。まだ両親がいた頃、泣きついていた。


 あれは誰に追いかけられていた?

名前を名乗っていたような。思い出せ!

あの影みたいなのが、俺のスキルか?


 魔神の名前………名前………な…まえ……



「アウグ……セーレ?」



ズキッ!!!


「グッ!なんだ頭が痛い?!なんだ急に」



「大丈夫ですか?スキルが開花しているんです。遅咲きのせいで身体への負担が大きいんだと思います!

 落ち着いて!……落ち着いて」


フィーナの声が遠くなる。

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