ワイバーン討伐戦
そうして魔獣の渓谷を迂回し、さらに奥に進む。そこは名前が記されていない場所だ。
森林と大きな岩が散乱する、不気味な場所だ
ここにクリスタルワイバーンがいる。
馬車を少し離れた所に停め、5人で向かう。
どこにいるのだろう…
群は作らず個体で行動するとアルフが言っていた。
今はいないとか?
「カイアスさん!!上です!!います!」
全員が上を見上げる。いた。
太陽を背にキラキラ輝いている大きな何がが上を旋回している。
こちらに気付いているのか?
俺は即座にアルフに指示を出す。
「アルフ!俺のスキルは直接触れないと効果が出ない。お前のスキルで地面に叩き落とせ!!触れる事が出来れば勝てる!」
「はい!いきます。ウォーカー武器を!」
「了解だ。なんでも使え!」
ウォーカーは常にスキルを発動し続けていた。大きな荷物の中には刀やナイフ、矢などが大量に入っていた。これだけの量を運んでいたのか
「最初から全力でいくぞ!!」
〈超投擲〉
アルフの目が赤色に変わる。
そしてナイフを2本持ち上空のワイバーンに向けてぶん投げる。
すると、とんでもない速度でワイバーンに向かっていく。しかし、風の影響もあってかうまく当たらない。
〈光弾〉
ケイトもスキルを使う。杖の先から光の弾が発射される。連射も可能なようだ。
しかし当たらない。ワイバーンも気付いているはず。俺たちを見下しているのか?
許せないな…。もう何かに見下されるのはうんざりだ……。
しかし、〈服従〉を使ってもここからでは声が届かない。
なんとか地面に落としてもらうしかない。
カルラの斬撃も射程があるから。
あそこまで届かない。
クソ!!どうやって倒せばいいんだ?!
そうだ。
「アルフ!ナイフ1つもらうぞ?」
「はい!どうぞ!でも何に使うんですか?」
「まあ、見てろ。ケイトはそのまま撃ち続けてくれ!」
〈破砕〉
このスキルは触れた物を粉々にする。
1度粉々にした物は戻せないが、粉々にするタイミングは選択できる。
ナイフをアルフに渡す。
「思い切り!!投げろ!!」
「はい!いっけぇーー!!」
アルフは渾身の力でナイスを投げた。
ワイバーンの頭すぐ横を通過する。
その瞬間に
〈破砕〉
ワイバーンの顔の横でナイスが破片になって散らばる。その一部がワイバーンの目に直撃した。
ワイバーンは空中でバランスを崩し、地面に落下していく。
「成功だ!!また飛び上がる前に俺がスキルでバラバラにする。」
ちょうど近くに落下した。
しかし、傷は浅いようだ。すぐに動き出した。
そこに、カルラとウォーカーが斬り込む。
〈斬撃軌道〉 〈剛腕〉
ウォーカーがワイバーンの尻尾を掴み、地面に固定する。
水晶に包まれている為、体全体が刃物みたいなものだ。
ウォーカーは苦痛に耐え、血を流しながら固定している。
カルラが振るう双剣から光が伸びる。
それが斬撃なのだろう。
ウォーカーをうまく避けて、クリスタルが薄い所、または無いところを的確に斬り込む。
ようやく俺の手が届く範囲に近づけた。
そしてワイバーンの翼の端に俺の指が触れる。
〈破砕〉
「グオオオオオ!!」
ワイバーンは苦しみだし、翼の先から崩れていった。
みんなが目を合わせる
「や!やったぁぁぁ!!」
「倒した!俺たちがAランクの魔獣を倒したんだ!!」
みんなで協力して難関を乗り越える。
なんともいい経験だ。
そういやセーレ?お前なんで何も話さないんだ?
「ん………?終わったかい?カイアスさぁー。水を差すようで悪いけど、そのアルフの妹を助けるのってさ、白夜草がいるんだろう?
ワイバーン関係ないじゃん?それに白夜草なら、馬車停めた木の横に生えてたよー。 なんかワイバーン倒すのが目的になってるけど」
………………はぁーーー。
なんでそんな事、言うかなー?
「じゃあ帰ろうか!白夜草が目的なの忘れてた。そこにも生えてるし摘んで帰ろうか」
「「「「あっ!」」」」
全員、忘れてたんか
まあウォーカーが軽い傷を負っただけで、他はみんな怪我なしだ。
白夜草も手に入れ、ワイバーンも倒した。
ウェグリアに帰るまで油断は出来ないが、もう安全だろう。
馬車に揺られながら街を目指す。
あと1時間ほどでウェグリアに到着しようとした時、馬車が停止した。
「あ!あの人は?!」
槍を持った青年、24歳くらいだろうか?
赤い髪を後ろで結んでいる。誰だ?アルフの知り合いか?
「アルフあいつを知っているのか?」
「え?カイアスさん、あの人を知らないんですか?あの人こそウェグリアを拠点にしているSSランクの冒険者、【龍槍】デュラン様ですよ?!」
マジか?あれがSSランク!!こんなに簡単に会えるとは!
SSランクには称号が与えられる。
【龍槍】…。たいそうな名前だ。
こいつらもいるが、今はもう関係ない。
ここで殺す。




