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Hasta La Vista!  作者: ハイライトせんぱい
第1章 アルダ
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プロローグ

「フンッ、ハッ!」


少年は遠くに聞こえる大男の声で目が覚めた。


「ーー!」


大男は自身の身の丈程もあろうかという大剣を構え、少しの溜めの後振り下ろす。


「デエヤァァァ!!」


振り下ろされた大剣は音を置き去りにして地面を叩く。

その瞬間、辺りの静寂をかき消すように轟音が響き渡り地面に巨大な隕石でも落ちたのではないかというようなクレーターをつくりだした。


「ガンダルヴァ!」


少年は、眠気など先の衝撃とともに消し飛んだと言わんばかりに目を開き自室の窓から大男目掛けて飛び出していった。


「若様、お早いお目覚めでありますな。もしや私の剣がおやすみのお邪魔をしてしまったかな?」


ガンダルヴァと呼ばれた大男は顎に蓄えたヒゲをさすりながらバツが悪そうに駆け寄ってきた少年に言葉を投げかける。


「そんなことないよ!ガンダルヴァはボクの憧れなんだ!ボクだけじゃない、アルダの民なら全員が口を揃えていうぐらいだよ!」


少年は無邪気に笑いながらガンダルヴァの前に立ち、姿勢を整える。


「ガンダルヴァ師匠!今日こそこの僕に剣技を教えてください!師匠のような立派な戦士になりたいのです。」


少年は真っ直ぐに見つめる。


「若様、あなたは戦士になる必要はないのですよ。あなたは超常のモノに愛された存在。すべてのエメトを使役出来るのです。人には得手不得手というものがありまして、得手を伸ばすことこそ戦いにおいて最も重要な」


少年はガンダルヴァの言葉を遮るように話し始める。


「ガンダルヴァ!!いつもいつもそうやってはぐらかそうとして。。ボクは魔法使いじゃなくて剣士になりたいんだ!それと若様って言うの止めてっていったよね!?ボクにはハミングっていう名前があるんだから!」


ハミングはムッとした表情でガンダルヴァへと詰め寄る。


ガンダルヴァは弱ったと言わんばかりに額に手を当てため息をつく。


「ほっほっほっ、ハミング殿そこら辺でよしてあげなされ、英雄殿が困り果てておりますぞ」


長い白ヒゲを生やした老人が2人の元に歩いてくる。


「英雄殿?剣技に励むのは良いのだが地面を直すワシの手間も考えてくれんかのぉ。」


するやいなや、老人は持っていた杖を振りかざし早口で何かを呟く。

途端にクレーターから泥の人形が生み出され、それらが穴を埋めるように覆いかぶさっていく。


「ミケファウロス様!大変申し訳ありませんでした。お呼びしようと思ったのですが、どこにも見当たらず」


「良い良い、しかし今日もまた派手にやらかしたのぉ。これで本気ではないというのだからアルダの英雄には頭が下がるわい。」


ほっほっほっと笑いながらも穴の修復をあっという間に終えたミケファウロスが高らかに笑う。


「お戯れをミケファウロス様」


ガンダルヴァは照れながらも控えめに笑ってみせる。


「ミケ爺からも師匠になにか言ってよ。いつまでたっても剣技を教えてくれないんだよ?」


「ハミング殿何故そこまで剣技にこだわるのじゃ?お主はエメトを使役できるのじゃ。先程ワシが召喚したエメトを見たろ?あれほど美しく愛に溢れた魔法はないぞ??」


ミケファウロスはハミングに先程召喚した泥人形を作り出してみせる。


「エメトを使役出来るものは自然に愛されたものだけじゃ、そして全てを使役出来るということは天地すべて、つまり神の寵愛を受けているという証拠じゃ。それ即ちこの世のありとあらゆる魔法を支配できることと同義。これは努力でどうにかできるレベルの話ではない。ハミング殿、ワシはお主が羨ましくてしょうがないわ。」


ほっほっほっと笑いながらハミングに魔法の素晴らしさが何かということ説き始める。


「ミケ爺だってすべての魔法を使えるくせにこういう時に限って才能がー、寵愛がー、って言うんだもんなぁ。」


ハミングは老人の話は聞き流すに限ると言ったふうに聞いている。


「ボクは人形遊びがしたいんじゃない!みんなの前に立って強きをくじき弱きを救う、そんなガンダルヴァに憧れてるから剣士になりたいんだ!それにみんなはボクのことを凄いって言ってくれるけど、ボクが作るエメトはさ……」


ハミングも泥人形を作り出す、しかし完成することも無く泥人形は砂に戻っていく。

ほらね?と言わんばかりにうなだれ、地面を向いてしまう。


「ハミング殿はまだ7つ、年を経るごとに自然の声を聞くことが出来るようになりますぞ。そして、エメトはただの人形ではない。彼らは自然の愛が形を為したもの。我らが崇拝するアルダ様そのものじゃて。」


ミケファウロスはハミングに優しく語りかける


「でも、ボクは。。ッ!」


ハミングはその場を逃げるように飛び出していってしまう。


「……まだ、傷は癒えぬ…か。」


ミケファウロスは少年が走り去った方向を悲しげな目で見つめている。


「無理もありませぬミケファウロス様。寵愛を受けているとはいえ未だ7つの身。子供にあれを受け入れろというのが難しい話であります。」


「ふむ、そうよな…エーデルヴァルトよ、お主の子の行く末をどうかアルダ様のみもとより見守っていてくだされ。」



それはとある国のお話。


空に浮かぶ大国アルダ。


天地すべての寵愛を生まれながらにして受ける少年ハミングのお話し。


王位継承まで約10年


ーーアルダ滅亡まであとーーー日

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