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楽しんで頂けると嬉しいです。
ローズの聖なる光の魔法が発動したからか、多くの生徒が先ほどの小さい庭へと向かう。
私たちは生徒たちの流れに反する様に歩いている。
(アッシュお願い)
アッシュに手を繋がれて早足で歩いている為、アッシュの服を引っ張ろうとするがうまくいかない。
アッシュがこっちを向いてくれないと私の行動に気付いてくれない。
声が出れば、アッシュに気付いてもらえるのに。ローズの事だって誤解だってわかってくれるのに。
伝わらない事がもの凄く悲しい。
「……リアーナ」
アッシュがゆっくり止まり私を顔を覗きこむ。慌てて近くにある扉を開けて中に入る。
そこは、広いホールで私たち以外誰もいない。
(アッシュ誤解だよ。私が見せてって頼んだの。妖精が助けてくれるから、ローズは悪くない)
紙を見せるとアッシュは困った顔してる。一瞬目をそらすが私に目線を合わせる。
「……悪かった。だから悲しい顔するな」
(ありがとう。ローズの所に戻って良い?)
「今はやめとけ。近づけないから。聖なる光が制御出来たとなると、ローズ・ダイナは学園の憧れの的になるからな」
(でも、何も言わずに別れてしまったから)
「手紙書いたら届けてやる。リアーナ頼むから俺たちに守られてくれ」
アッシュは深いため息を吐く。どれだけ心配かけてしまったんだろう。お兄様にだって急に私が離れてしまって怒ってるわ。
(お兄様、怒ってる?)
「今は部屋で昼食用意して待ってる。小言は我慢して聞け」
(はい!)
私は思わず笑顔になり、アッシュに頭を乱暴に撫でられる。
「不意打ちはまずい。可愛すぎるだろ」
しばらく撫でられ、アッシュに手を引かれながらお兄様と私の部屋に戻った。
お兄様は厳しい顔をしていたけどアッシュと話すと、少し考えたお兄様は私を責めたりはしなかった。
「リアーナが無事で良かった」
一言それだけだった。
お昼を3人で食べてから、部屋でローズに手紙を書こうとしたのにベッドの誘惑に負けてベッドに座ってしまう。
自分で考えていたよりも疲れていた様でベッドに横になると睡魔が私を包んでいった。
夢なのかわからないが私の頭を優しく触れる感覚がある。
「君の行動力にはびっくりする。昔からそうだったね。どんなに大切で守っていても隙間から居なくなってしまう。でも、どんなに困らせられても嫌いにはなれないんだ。……血が繋がってないって、本当の兄様じゃないって言ったらどうする?昔から大好きだったって言ったら君はどうする?」
頭から温かさがなくなり不安になる。
「……なんてね。リアーナおやすみ」
寂しいのに身体が思うように動かない。また、睡魔が私に襲いかかり深い眠りについた。
光が眩しくて目を開ける。朝だ。
起きるにはまだ早い時間だけど、眠れる自信がない。夕食も食べないで寝てしまったからか少しお腹が空いてる。
取り敢えず部屋から出た。すると、ダイニングテーブルの上にサンドイッチが置いてある。見た途端にお腹から振動して、お腹の音が鳴ったのだと分かる。誰も居なくても少し恥ずかしい。
サンドイッチの横にメモが書いてある。
『リアーナおはようかな?気持ちよさそうに眠っていたから夕食の時間に起こさなかったよ。ごめんね。夕食の代わりにサンドイッチ置いておくから起きたら食べて。何かあったらすぐ兄様に言うんだよ』
お兄様の心遣いに感謝してサンドイッチを頬張った。食べ終えると奥の部屋から眠たそうなお兄様が起きてきた。
テーブルのサンドイッチが置いてあった皿が空なのを見て優しく笑う。
「おはようリアーナ。サンドイッチは美味しかったかい?」
(おはようございます。とっても美味しかったです。お兄様ありがとう)
「良かった。ナナを呼ぼうか」
(大丈夫)
首を横に降る。まだナナが起きる時間ではない。迷惑をかけられない。
「そうか。じゃ、今日の予定を話そう」
お兄様は隣の椅子に座った。
「今日は朝学園に行ってグライアド先生の教室で学力テストだよ。兄様は予定があってね。ディオが代わりに迎えに行くから学園の中を見て回ると良い」
(分かりました。もしかして、お兄様は私の所為で起きたのですか)
「違うよ。大丈夫だからね。でも、リアーナの元気な顔を見れて良かった」
優しく笑うお兄様と一緒にいると安心する。まだ、学園に行く用意をするには早いから勉強しようかな。でも、もう少しお兄様と一緒にいたい。
(お兄様お願いあるんですが)
「どうしたの?」
(少し勉強教えて頂きますか)
「喜んで!」
それから、ナナが部屋に来るまでお兄様に勉強を教えてもらった。
「終わりました。テストの結果は後日お知らせしますね。見た限りだとリアーナはずっと頑張っていたって分かりますよ」
無事テストが終わり、お兄様との勉強のおかげでなんとかなった様な気がする。
「ディオが来るまでお話しようか」
グライアド先生と昔の話や、グライアド先生がここに来た時の話を聞いた。話している間、グライアド先生の瞳を見て綺麗だなって思ってずっと見ていた様で突然グライアド先生がが私の目を手で隠す。
グライアド先生の手を、どかせようとするけどびくともしない。
「昔の君なら大丈夫だったけど、今の君は綺麗すぎてそんな目で見つめられたら恥ずかしい。もう、私だけの可愛らしいリアーナじゃなくなってしまったなかな」
しばらくグライアド先生と攻防を繰り返したけど簡単に手が離れた。
「リアーナ。私の許可なく目を見る事は禁止です」
(綺麗だから見ていたいです)
「今日はおしまい」
グライアド先生は立ち上がり私の頭を撫でると距離をとった。
「グライアド先生。どんな状況ですか」
机にうつ伏せになり拗ねている私を見て、迎えに来てくれたディオが困惑していた。
「お嬢様。学園内を案内いたします」
グライアド先生から経緯を聞いたディオに『はしたないです』と怒られて教室を出た。
昨日みたいにならない様にディオにしっかりと手を繋がれ、学園の中を案内してもらう。
「ここが実習室です。魔法の練習とかする場所ですよ」
(ディオは癒しの魔法だったよね)
「水の魔法も使えますよ」
(本当?見たい)
ディオの魔法なんて見る機会なんてなかった。でも、ディオは癒しの魔法しか使えなかったはずなのに。
ディオは目を閉じて集中する。
手の平から水の塊が小さく渦を巻いてとどまっている。
(凄い)
思わず手を叩いてしまった。子供の様な喜び方をして少し恥ずかしく赤くなる。
ディオは笑って、水の塊を上に放り投げて水が一面に広がり私とディオを中心にキラキラ降り注ぐ。
「お嬢様と初めて会った時みたいだ」
(……綺麗)
手を出して降り注く水を掴む。私の手は濡れず、すっと消えていく。不思議でしかたなかった。
(何で濡れないの)
「内緒です。これで満足ですか?次行きますよ」
不思議なままディオに連れられ実習室を後にした。
読んで頂きありがとうございました!