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楽しんで頂けると嬉しいです。
保健室から出たディオはどこかに向かって歩く。
「おい!ディオ、リアーナ」
ディオは止まり後ろを見る。アッシュが追いかけてくる。
「どこ行くんだよ。保健室に行くところだっただろ。リアーナは大丈夫か」
(大丈夫)
アッシュは私の口の動きを見て、胸を撫で下ろす。
「良かった。じゃ、ファディスの部屋に行くぞ」
ディオが掴んでいた手を外し、アッシュが私の手を掴む。ディオは何も言わず先に進むアッシュの後ろを付いて来る。
「ディオ。リアーナに見えないように話せ」
「はい」
「リアーナを襲った女子生徒は、ローズ・ダイナの従者だ。今は意識を取り戻してリアーナを殺さないと話が進まないとか、ローズが全て持ってるはずなのにとか錯乱状態でまともに話せる状況じゃ無い」
「お嬢様にローズ・ダイナが危害を加える可能性があるという事ですか」
「あぁ。教室じゃお前しか守れる奴いないからな。念のため頼む」
「わかりました。ですが、一つ問題があります。先程お嬢様はローズ・ダイナとお友達になりました」
「は?」
廊下から外を見ていたアッシュがいきなり止まり、ディオの方を見て驚いた表情をしていた。
(どうしたの?)
アッシュの服を引っ張りこっちを向いてもらう。
「あ、いや。リアーナ何でもない」
アッシュは引きつった笑顔をしている。どうして、そんな顔になってるのか分からない。
「お嬢様。外を見てください」
突然ディオが外を指差す。先ほどの中庭と違い規模が大きな庭を上から見下ろす。
真ん中には大きな噴水がある。キラキラ光って綺麗。水の大きさが変わり躍っているように見えて楽しい。
「マジか、いつかは接触するとは思っていたけど今日って」
「申し訳ございません。ですが、私がお嬢様をお守りするので大丈夫です」
「ディオばっかりリアーナのそばにいるのは不公平だ。俺もリアーナに会いに行くからな」
「わかりました。取り敢えず今は様子見ですね」
「あぁ、この笑顔守りたいよな。さっきだって怖い思いしたのに。俺らが心配しないように我慢するから。俺たちはリアーナにいつも救われて」
私は後ろ向き2人に噴水を指差す。
(とても、綺麗で凄いね)
一緒に見たくて勢いよく振り向いて、少しはしゃぎ過ぎたようで2人は驚いた表情をしていた。
「リアーナ、綺麗だよな」
「お嬢様、綺麗ですね」
2人は微笑ましく笑っていて、はしゃぎ過ぎた事が少し恥ずかしくなってうつむいた。
「俺らの想いなんて気づかないだろうな」
「えぇ、本当に困ったお方です」
「さ、行こうか。ファディスが待ってる」
急にアッシュに手を引かれ歩く。アッシュが私の顔を覗き込む。
「ファディスが待ってるから行くぞ」
(はい)
お兄様が待っていたのを忘れていた。心配してるかな。私は大丈夫だと早く伝えないと。
歩く速さを少し早くした。
校舎を出て隣に寮がある。
ほとんどの生徒が寮で暮らすので校舎よりも大きな建物なっていてお兄様は最上階の部屋で暮らしている。エレベーターに乗り最上階まで移動する。
生徒会長は少し大きめの部屋を使わせてもらえるとお兄様は言っていたけど、少しではない気がします。
「お帰りリアーナ」
部屋に入るとお兄様が抱きしめてくれる。部屋にはグライアド先生とロゼット様もいるのに恥ずかしい。
(ただいま、お兄様)
お兄様はなかなか離してくれなくて困っていると、見かねたグライアド先生が引き離してくれた。
「ファディス、リアーナを心配するのはわかるけどリアーナが困ってますよ」
「ごめんね、リアーナ」
お兄様は慌てて私を離す。ロゼット様がディオとグライアド先生と話をしている。
「リアーナ、今日はゆっくりするんだよ。少しディオ君を借りてくからごめんね」
「お嬢様。また後で来ます」
頷くとロゼット様とディオが部屋から出て行く。
扉が閉まるとお兄様が手招きをする。
「リアーナは今日からこの部屋に住むんだよ」
お兄様は私を連れて隣の部屋へ案内する。
部屋は可愛らしくピンクを基調とした部屋で、私の為にお兄様が考えてくれたと思うと凄く嬉しい。
(お兄様ありがとう)
嬉しいけど、こんなに甘えて良いのだろうか。みんなに迷惑をかけている。
(私はご迷惑ではありませんか?)
私の書いた紙を見てため息を吐く。
「リアーナ。僕がリアーナの事を迷惑だと言うように見える?」
私は首を横に振る。お兄様は私の事をとても大切にしてくれる。そして、いつも私を甘やかすのだ。
「リアーナ。ここにいる間は僕に君を守らせて」
(はい。お願いします)
お兄様が嬉しそうに笑ってくれる。何があってもお兄様だけは変わって欲しくないって思ってしまう。
「リアーナ、明日は学力テストをしますよ。私がいなくなってから、ちゃんと勉強してましたか」
(ちゃんとターラに教えてもらって勉強していました)
紙を見たグライアド先生は頭を撫でてくれる。
「それは頑張りましたね。明日のテストが楽しみです。では、私は用事があるので失礼しますね。リアーナ明日ね」
にこやかに笑い帰って行くグライアド先生に不安を覚えた。
明日頑張らないといけない気がする。
「さぁ、そろそろお昼だよ。食堂に行こう。アッシュ場所取り頼む」
「……わかったよ」
少し真面目な顔になったアッシュが先に部屋を出て行く。
「食堂はいろんな食べ物があってね。好きな物を頼むんだ」
どんなものがあるのか想像して笑ってしまう。
部屋から出るとお兄様に手を出されて私の手を重ねる。
食堂は一階にあり、一階の奥の廊下を進むに連れて生徒が多くなってくる。
(あっ。ローズが居る)
食堂の奥の扉から一人で出てくる。
近くに行こうかどうしようか考えていると目が合った。ローズは申し訳なさそうな表情になり逃げるように去って行く。
思わずお兄様の手を離しローズを追いかけた。
(何で私を見て悲しい顔なんてしているの)
お願い。追いついて。屋敷から出た事のない私の体力はあまりなくすぐ走れなくなってしまう。
(だめ。追いつけなかった)
私は小さな花々が咲いていてベンチが2つ置いてある場所にいた。息苦しくて膝をつく。
「……リアーナ」
目の前にローズがいた。心配そうに私の顔を覗いている。
(ローズ)
「逃げてしまってごめんなさい」
(どうして)
「何でもないの。お願い気にしないで。ベンチに座りましょう」
悲しそうに笑うローズにそれ以上は聞けなかった。ローズは私を支えてベンチに座らせてくれる。隣にローズも座る。
「私、みんなに迷惑かけてしまって友達がなかなか出来なかった。だから、リアーナは私の初めての友達なの」
ローズの笑顔が綺麗で見惚れてしまう。
ローズの笑顔に惹かれたのか、花の陰から妖精たちが顔を出す。もしかしたらローズに見えるかもしれないと思い妖精たちをこっちに呼ぶ。
(みんなこっち来て)
『この子、気が綺麗な子』
『リアーナに劣るけど温かいわ』
私の周りに妖精たちがグルグルと回っていたのがローズにもグルグルと回る。
「あっ。え?」
周りの妖精たちが見えるのか驚いている。
戸惑っているローズに紙を見せる。
(ローズ魔法を見せて、大丈夫だから)
「リアーナ。私の魔法は危ないの」
(この妖精たちが力になってくれるわ)
ローズはグルグルと回ってる妖精たちを見ている。妖精たちも笑ってローズを見ている。
これなら大丈夫。私も嬉しくなり、妖精たちにお願いをする。
(ローズの魔法は大きくて制御出来ないの。ローズの事助けてくれる?)
『リアーナの頼みなら』
『私たちに任せて』
ローズの手から聖なる光がでる。最初は小さな光が徐々に光が増し、どんどん大きく膨れ上がっていく。ローズも苦しそうな表情をして足に力が入っていないような感じがする。
そんなローズに妖精たちが笑いながらローズの手や光に手を伸ばす。
「リアーナ危ない」
誰かが私の上に優しく覆いかぶさりローズの魔法から助けようとしている。
ローズの光はキラキラと降り注ぎ、やがて小さくなる。暴走する事無く消えていく。
私の上から重さがなくなり、私はゆっくり起き上がる。
「何してんだ、お前は!」
誰が覆いかぶさったんだろうと振り向くとアッシュが怖い顔をしている。凄い剣幕で私を怒る。
(私は大丈夫だから)
「そう言う問題じゃない。マジで勝手にいなくなるな」
こんなに怒ったアッシュを初めて見た。アッシュは額に手を置きため息を吐く。
「本当に心配させんなよ」
(ごめんなさい)
アッシュが近づき力なく抱きしめる。私が謝り肩を落としていると、言い過ぎたと言って頭を撫でてくれる。
急にアッシュが私の向こう側のローズを睨む。
ローズが近づこうとしたのかもしれない。
「す、すみません」
「こいつに危ない事をさせるな」
ローズが謝まり頭を下げるけど、アッシュはローズを怒鳴る。泣きそうなローズを見ると苦しくて、慌ててアッシュを見る。
(私が悪いの。ローズは関係ない)
「行くぞ」
口を動かすけど、アッシュは私の事を全然見てくれなくて悲しくなる。
ローズを残して、私はアッシュに痛いくらいに手を握られ連れられていく。
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