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楽しんで頂けると嬉しいです。

 


『リアーナ大丈夫』

『無事で良かった』


 妖精たちが泣きそうな顔で私に集まってくる。


 私を助けてくれた人の周りにはキラキラした妖精が飛んでいた。この人は精霊の加護が与えられている。


「大丈夫?君の妖精が叫んでくれなかったら間に合わなかったよ」


 女子生徒を魔法で拘束し、こっちに振り向く。

 この国の第2王子ロゼット様がいた。薄い金髪に金色の瞳。優雅に動く姿は王子様そのもの。

 私は戸惑いながらも頷き礼をする。


「あれ?見ない顔だよね。ファディスの妹さんかな?」


 指を顎に付けていてロゼット様が何を言ったか分からなくて首を傾げる。


『貴女はファディス様の妹さんですか』


 ロゼット様のそばにいた妖精が私に話しかけて来た。


(そ、そうです。私リアーナと言います)


『リアーナ様ですか』


 他の妖精に会った事がなかった為に、少し戸惑っていた。


「精霊の加護持ってる人になかなか会うことなんてないものね。……震えてる怖かったよね」


 口の動きが読み取れなくて思わず妖精をみてしまう。妖精たちは不安な表情で私を見て名前を呼ぶ。


『リアーナ様』


『リアーナ』


 ロゼット様が近づいて来て、手を握られた。そして、自分の手が震えていた事に気付いた。

 安心したのか、恐怖が蘇る。怖かった。


「リアーナ、大丈夫だよ」


 優しく触れる手に涙が溢れる。

 心配させちゃいけないと思うのに体は言う事を聞かない。涙を止めたいのに止まらない。


「無理しなくていいから。泣きたい時は泣いたらいいよ。……ねっ」


 優しい微笑みで頭を撫でられる。

 ロゼット様は私が落ち着くまでそうしてくれていた。


「お嬢様!」


「遅いから来てみれば、ロゼットと……誰だ?コイツ」


 肩に手を置かれてディオとアッシュが来てくれたのに気付いた。

 拘束されている女子生徒にビックリしている。


「アッシュにディオか。この、女子生徒がこの子に刃物を持って向かってたから、取り敢えず気絶させて拘束した」


 ロゼット様の話を聞いた2人は行き良いよく私を見る。


「お嬢様。お怪我は?」


「マジかよ。リアーナ何ともないか」


 2人は私の周りを見て何も無かったことに安堵の表情をする。


(大丈夫よ)


 そう口を動かせば、アッシュが倒れている女子生徒に向かう。ディオはそっと私の手を握る。


「コイツ誰だよ。腹立つんだけど」


「んー。確か3年生。ほら、ファディスにローズ・ダイナを紹介してた」


「あぁ、あったな。あれ、ロゼットに紹介してたんだろ」


「お二方、今はどっちでもいいです。処罰はどのように致しますか」


 ディオはさりげなく私から、女子生徒が見えないように立ってくれた。


「ファディスもグライアド先生も呼ばれて行ったからな。取り敢えず指導室にでも入れるか」


「そうだね。リアーナは保健室かな。じゃ、ディオ頼んだよ」


「わかりました」


 ロゼット様とアッシュは女子生徒をどこかに連れて行ってしまった。


 ディオは私を引っ張り廊下を進む。急に止まり私の方を向く。不思議に思っているとディオは私の目尻を指で触る。


「泣きましたか」


 ディオに嘘をついてもすぐ分かってしまうから、私は頷く。


「お嬢様」


 ディオに、さっきよりも強く手を握られ保健室へと連れられていく。


「私はお嬢様に怖い思いも悲しい思いもして欲しくありません。これからは私が必ず守ります。……私はお嬢様が思ってる以上に、お慕い申しております」


 ディオが何か言っているのにこっちを向いてくれない為、口の動きが分からない。ディオは言い終わると私を見て笑う。


 ディオがとても優しく笑うものだから私もさっきの出来事がなかったかのように嬉しい気持ちになった。


 ディオが保健室のドアを開け一瞬止まる。私は保健室の中を覗き込むとローズがいた。

 傷だらけになっていた。血は出てはいないが肌がピンク色になり傷ついているのがわかる。


「ディオ!こんな所で会うなんて」


 ローズは嬉しそうにディオに近づいてくる。


「また、失敗しちゃって。ディオはどこか怪我でもしたの?」


 ディオの後ろにいる私に気づく。ローズは一瞬悲しみの瞳をした気がしたけどすぐ笑顔になる。


「貴女は?」


「ダイナ様、申し訳ありません」


 ディオはローズの横を通り過ぎベッドに私を座らす。ローズの笑顔が雲る。ディオがこんな行動するとは思わなかった。


 ローズは元いた椅子に座り一人で傷の手当てをしている。

 私がいるからディオは遠慮しているのかもしれない。


「どこか痛いとろはありませんか。さっきは痛くなくても、時間が経つと痛くなる事があるので」


(彼女と話さなくていいの?私の事は大丈夫よ)


 私は紙をディオに渡す。思った答えじゃなかったのか私の顔を見る。


「お嬢様以上に心配する人はいません」


(ディオは私の従者じゃないわ)


「分かってますよ」


 ディオは分かってない。ディオはいつでも自由なのだから。

 私は一歩を踏み出す。私はベッドから立ち上がり痛々しいローズの前に行く。


(妖精がいたらこんな事にならなかったのに)


 深呼吸をして、ローズの前で紙に書いて見せる。


(お一人で治療できますか)


「えっ?あ、はい大丈夫です。私、聖なる光を持っているのでこれぐらいなら、1日経てば綺麗に治ります。ちょっと消毒しに来ただけなので」


 紙を見せられて困惑したローズは下を向きながら話した。何を言ったか分からない。


「綺麗に治るので大丈夫と言ってます」


 後ろからディオが教えてくれる。私の周りの人達は私が解るように話してくれるから不自由じゃなかった。


 こんな状況に甘えていてはダメよ。

 ローズは不安な表情で私を見てる。

 ディオがローズに言おうとしたのを止める。


(ごめんなさい。私はリアーナ・ノーズワットです。音が聞こえなくて貴女が話した言葉がわかりませんでした。私は話すことも出来ないので迷惑かけてごめんなさい。私を見て話して頂けますか?)


 私の事をディオに、説明させる事は違うと感じて長々と紙に書いていく。ローズに見せると頷き。


「わかりました。私はローズ・ダイナです」


 私の顔を見て、にっこり笑って少しゆっくり話す。

 やっぱり優しくていい子だわ。

 私は何の為にここに来たの。この子に会う為にここに来たのよ。


(ご迷惑でなけれは、お友達になりませんか?)


「あっ。ぜ、是非お願いします」


 リアーナ覚悟を決めるの。こんな優しい子が私のせいで大変な思いをしている。


(ローズと呼んでもいいですか?私の事はリアーナって呼んで。ローズよろしくね)


「ありがとうございます。リアーナ」


(ローズは今幸せ)


「い、いろいろと大変ですが、幸せです」


(可愛いローズはもっと幸せにならないといけませんね)


 飛び切りの笑顔で紙を見せる。

 びっくりして私の顔を見るローズは顔を赤くしている。

 ゲームのディオとローズはどんな関係だったかな。


(ディオと知り合いなの?)


「ディオと同じクラスで、いろんなこと助けてもらっていて」


 あぁ、そうだ。そっと見守っていて、いざという時に助けに来たりしてたっけ。

 ローズとディオ二人並ぶと絵になるわね。


(そうだったの。これからもディオの事よろしくね。ディオは無愛想に見えて感情豊かなのよ。凄く頼りになるから。昔は)


「お嬢様。何書いてるんですか」


 ディオは私が書いていた紙を取り上げた。

 取り返そうと手を伸ばすけど取れない。


「余計なこと書かないで下さい。もう行きますよ」


 ディオは保健室のドアを開けて廊下に私を先に出す。


「ディオとリアーナは仲が良いのね」


「そうですね。私が想っているだけですよ」


 ディオに引っ張られローズに何も言えないまま保健室を後にした。



読んで頂きありがとうございます。


誤字報告ありがとうございました。

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