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楽しんで頂けると嬉しいです。
何度もレオ様を呼んでも、やっぱり来てはくれなかった。
妖精たちに聞くとレオ様は普通に精霊界で生活しているらしい。
学園に行くにあたり妖精たちにお別れを告げる
(少しの間ここには戻って来れないの)
『大丈夫!妖精はどこにでも行けるのよ』
『リアーナが心配だからついて行く』
『そうよ。リアーナは妖精にとって特別なんだから』
妖精たちは嬉しそうに私の周りをクルクルまわる。妖精たちの優しさが嬉しくて、少し胸が痛い。
私の学園生活は1人で過ごせることではなく体調管理をターラが生活面はナナが付いてきてくれる事になった。
ディオには学園で気をつける事を教えてもらった。
知らない人に付いて行かない。
何かあったらすぐ報告すること。
1人で行動しない。
無理をしないこと。
「辛い時は辛いと伝えて下さい」
ディオはそう言って、本人は気付いていないかも知れないけど悲しそうに笑っていた。
いろんな人に迷惑かけないように、自分で出来ることは自分で出来るように勉強したり練習したり、あっという間に学園へと行く日になった。
馬車に揺られながら3時間。どんどんと森の奥へと進んでいる。こんな場所に学園があるのか心配になる。
ディオがこまめに体調は大丈夫かとか、喉は乾いてないかとか、学園で自分から離れてはダメとか学園に着くまで微笑ましいぐらい心配してくれた。
馬車が止まり、ディオが先に馬車を降りる。
ディオの手を取り馬車を降りると目の前にはお城のような学園がありました。
どれだけの方が通ってるんでしょうか。
門をくぐると休暇中だというのに多くの生徒が行き来をしている。
(こんなに人がいるの初めて見た)
あまり外に出た事もなく、多くの人を見た事なかった私にとって凄く衝撃的だった。
辺りを見回すと、いろんな人が私を見て驚いた表情でディオを見る。
なぜ、ディオを見て驚いてるんだろう。首を傾げてディオを見る。
顔を少し赤くして私から視線をそらす。
ディオの顔を覗こうとすると後ろから抱きつかれた。
「リアーナ会いたかったよ」
振り向くとお兄様がいた。遠くにはアッシュが走っている。
(お兄様)
苦しいと身をよじるとお兄様は離れてくれる。向き合うとお兄様は笑顔だった。
「リアーナ、学園にようこそ」
「おい。ファディス、すごい人だかりになってる。場所変えよう」
「ディオもいるから余計だな。生徒会室に行こう」
私の荷物は従者に寮まで運んでもらい、私とディオはお兄様とアッシュの後について歩いている。
生徒会室に行くには生徒が集まってる中を通らないといけない。
周りに居る生徒の視線が、私たちに向けられ居心地が悪い。
「お嬢様」
先に歩いているお兄様たちに少し離されて歩いているとディオが不意に私の手を握り引っ張ってくれる。
ディオの手は暖かく安心する。
「ディオ!」
急にディオが止まり、横から女の子が出てくる。
肩までストレートの銀髪。愛くるしい青い瞳。
ローズ・ダイナ。主人公だ。
「ダイナ様、何用ですか」
ディオは私を隠すように私の前に出る。一瞬見えたディオの表情が強張っている。
「あっ。すみません。姿が見えたので声をおかけしただけです」
「そうですか。急いでいますので失礼します」
ディオがローズに一礼し、私と繋がった手に力が入る。そのまま、ディオは生徒会室に向かう。
いつものディオではない気がして、ディオの顔を見上げる。
もしかしたら、ディオはローズの事が気になっているのでは?
(それが当たり前よね)
ディオの陰で少ししか見えなかったが、同性の私から見てもローズは愛くるしかった。
誰もが好きになる可愛さだった。
画面で見るより実際に見る方が可愛くて、ほんわかな雰囲気を感じた。
実際の声聞きたかったな。優しい声なんだろうな。
「後ろを見たら、いないからびっくりしたよ」
「なにかあった?」
「なんでもないです。行きましょう」
私たちが遅くて曲がり角でお兄様とアッシュは待っていてくれた。
『生徒会関係者以外の出入りを禁ずる』
お兄様の綺麗な字で書かれた貼り紙が掲げられた、人気のない廊下を歩いて行く。
他の教室と違う扉の前で止まる。お兄様が扉を開けた事でここが生徒会室だと理解した。
生徒会室の中に入ると中にはグライアドが微笑んでいた。
グライアドは2年前まで私とお兄様とディオの家庭教師として一緒に暮らしていた頼れるお兄さん的存在。
珍しい緑色の髪の色に陽の光に当たると色が変わる薄い緑色をした瞳。昔は長かった髪は短くなり今は眼鏡をかけている。
私はグライアドの瞳の色が好きだった。
私が小さい頃グライアドに頼んで何度か、長い時間ずっとグライアドの瞳を見ていたことがある。
今思えば恥ずかしい子だった。グライアドは嫌な顔をせずに見せてくれた。
あの頃と変わらずに綺麗な瞳をしている。
「リアーナ嬢お久しぶりです。元気にしていましたか?見ない間に凄く綺麗になりましたね」
昔と変わらない笑顔で迎えてもらい安心した。
(私は元気です。グライアドも元気そうでなによりです)
そう書いた紙を見せて笑う。
グライアドは私に近寄り昔みたいに抱きしめる。
「可愛らしさも変わらないですね」
「グライアド、リアーナに触るな」
お兄様がすぐに引き剥がす。お兄様は怒っているようで私を椅子に座らす。
「グライアド先生の役目はなんですか」
「これ、だろ。リアーナ」
アッシュが目の前のテーブルに大きな水晶の玉を置く。グライアドは水晶の玉を挟むように私の前に立つ。
「リアーナ、これからは先生と生徒です。私の事は先生と付け加え下さい」
(はい!グライアド先生)
口を動かすとグライアド先生はにっこり笑い頭を撫でてくれた。
「いい子ですね。では、これにゆっくり手を置いて」
私はその水晶の玉にゆっくり手を乗せる。
みんなは水晶の玉を見ている。この水晶の玉は私の魔力を判断する神具。
私は昔から何の能力も持ったことはなく、普通クラス確定してる。
ゲーム内でも普通クラスだったのを公爵家の力で魔法クラスに入った設定だったはず。
(普通クラスの方が気が楽だわ)
ゲームのリアーナは力がなく魔法クラスで苦労し余計に主人公を妬みいじめてた。
私なら普通クラスの方を選ぶ。気を負わずにいられるから。
考えていると急に水晶の玉から一筋の光と色んな色の光が小さく輝いている。
お兄様が驚いている。
「これは?」
「聖なる光です。しかし、力は弱い」
光でグライアド先生が何を言ったかわからない。
しばらくすると光は消えた。
ディオが私の手を水晶の玉から外す。
私はみんなを見渡すと意味ありげな表情をしていた。
(どうしたの?)
ディオに向けて口を開く。
「聖なる光です」
聖なる光。主人公が持ってる魔力だわ。でも、あんな光じゃなかったはず。ゲームでは凄く強い光だった。
(間違いじゃない?)
「間違いじゃない。でも、力が弱いんだ。それに」
お兄様が言いにくそうに目を背ける。
「……消えかかってる。このままだとリアーナの魔力が無くなる」
(私は無くなっても別に大丈夫ですよ)
私が凄くショックを受けると思っていたらしくて不思議そうに見ている。
私は魔力が無くなると伝えてもらい納得した。元々私の魔力はなかったはずなのだから。
「本当に辛くないか」
アッシュが心配そうに私の顔を覗き込む。
みんなの困惑してる顔が面白くなって笑ってしまう。私の事なのに自分の事のように考えてくれる人がいるのは嬉しい。
(本当に大丈夫よ。みんな面白い顔してる)
テーブルに紙を置き笑う。
姿勢を正してグライアド先生に向かい口を開く。
(これから、よろしくお願いします)
お辞儀をする。
取り敢えずみんな納得して落ち着きを取り戻す。
消えかけていても魔力を持っている事には間違いないので、魔法クラスに入る事になった。
「僕と同じクラスになれないから、できればディオとお願いしたい」
「あぁ、俺もリアーナと同じクラスになりたかった。今からでも1学年下にして」
「責任を持ってお嬢様をお守りします」
三人はグライアド先生に頭を下げてお願いしている。多分、私の事なんだろうけど何をお願いしてるのかがわからない。
「最初からそのつもりです。リアーナ、私のクラスですから安心して下さいね。ディオもいますから」
グライアド先生の笑顔と言葉に安心した。
お兄様に無理を言ってお花が綺麗な中庭に連れてきてもらった。少し1人になりたくて遠くで3人に待ってもらっている。
確か学園の庭で主人公とレオ様と会うストーリーだったはず。もしかしたら、答えてくるかもしれない。
(レオ様どうか少しでも会いたい。お願いします)
『……リアーナ』
姿は見えないが声が聞こえる。
『今までリアーナの声に応えられなくてごめん。まだ、姿は見せられないけどこの場所なら話は出来るから』
(ありがとうございます。……レオ様。私、聖なる光を持っているんですがレオ様のお力ではありませんか)
『どうしてそう思うの』
(闇の中に落ちた時に1つの光が私を導いてくれたのを思い出しました。レオ様の気配がしたのですが。違いますか。私に力を使ったから私が聖なる光を持ち、レオ様が力を消耗してしまったのではないですか)
ゲーム内でレオ様が主人公に自分の力を渡す描写があった。その時もレオ様は姿を表せなかった。
『君は何も心配しなくて大丈夫。またね』
レオ様は何も言ってくれなかった。その声は切なく感じる。
私はしばらく動けなかった。今まで姿を見せなかった妖精たちが私の周りを飛んでいる。
目の前の綺麗な花々が動き、そこから1人の女子生徒が姿をだす。その生徒から怒りを感じる。
「貴女の所為でローズが苦しんでる。なんで貴女がローズの全てを持っているの」
彼女が何を言っているのか口の動きが早くてわからない。ところどころにローズと口が動いているが理解できなかった。
妖精たちはそんな私に警告してくれた。
『リアーナ。近づいちゃダメ』
『危ないよ』
『リアーナ逃げて』
「貴女なんかどうせ死んでしまうんだから今死んでも構わないのよ」
彼女が私を罵倒しているのは怒りの表情でわかる。
死んでと口が動いた事と鋭く光る刃物を持っている事に頭が理解するのに時間がかかり、とっさには動けなくて彼女が目の前にいた。
鋭く光る刃物が私に向けられる。目をつぶり衝撃を予想して身構えるが、私の前に彼女とは違う気配を感じ目を開ける。
私の目の前で彼女を気絶させている人がいた。
読んで頂きありがとうございました!