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25 レオside

楽しんで頂けると嬉しいです!






 

 リアーナが自分の力について知ってしまった。

 いつかは知られてしまうと思っていたが、もう少し自分がしっかりしていれば、こんな事にならなかった。


 今はリアーナを守ってくれる、騎士たちに任せるしかない。


 自分の部屋で椅子に座って一息つく。


 テーブルに置いてある一冊のボロボロな童話の本を開く。


 何千年前からある童話は、何度読んでも本の中の結末は変わらない。


 僕は、本を開きゆっくりと読み進める。





 遠い遠い昔の話。


 ある満月の綺麗な日、美しい少女は青く澄んだ湖で目覚めました。


 目覚めたばかりの少女は、自分がどこの誰なのかどうしてここに居るのか分からず、思わず湖から出て森に入ってしまいました。


 少女は夜の森で不安に思っていると、複数の野犬を倒している1人の青年と会いました。


 青年は王様に仕える騎士で、とても優しく勇敢でどんな敵にも負ける事はありませんでした。


 青年は少女から話を聞いて、お城に連れて帰り王様にお城に住まわせて欲しいと頼みました。


 王様も少女の事を甚く気に入り、少女はお城に住める事になりました。


 青年は少女の事が心配で、少女の護衛になりました。


 いつしか少女と青年が惹かれ合い、恋に落ちるのは簡単でした。


 2人はゆっくりと愛を育み幸せに暮らしていました。


 しかし、その幸せも長くは続きはしませんでした。


 突如、世界に魔獣が現れたのです。


 魔獣は闇の力を使い、いろんな国を攻撃していました。


 青年は騎士なので国を守る為、魔獣を討伐する事になりました。


 少女は青年の事が心配ですが、魔獣が倒されるのを待つしかありません。


 各国々から討伐隊が魔獣を倒しに行くのですがなかなか倒せません。


 終わらない戦いに少女は思うのです。


 ――青年の力になりたい。


 しかし彼女は真っ白なので力はありませんでした。


 居ても立っても居られない少女は満月に願いました。


 ――私に力を下さい。


 しかし、少女の願いは届きませんでした。


 国は魔獣に攻撃され壊滅状態で、青年の安否もわからないと知らせが少女に届きました。


 彼女は全てに絶望し、何もできない自分を悲観します。


 そんな時、魔獣が国をこれ以上滅ぼさない代わりに、国の聖なる光を持つお姫を差し出せと要求したのです。


 その事を知った少女は言いました。


 ――私が身代わりになります。私にもう生きる希望はありません。だから、最後にお世話になったこの国を感謝を込めて守りたいです。


 王様は反対しましたが、少女の意思は固く譲りませんでした。


 少女は身代わりに、魔獣の元へ向かう日になりました。


 少女を少しでも守って欲しいと、お礼を込めてお姫様が手を取り聖なる光を少女にかけました。


 すると、お姫様の聖なる光が体の中に流れていきました。


 少女は聖なる光を吸収して使えるようになったのです。


 お姫様は聖なる光の力を少女に注ぎ込み、少女の無事を祈りました。


 そして、少女は魔獣の元へと向かいました。


 魔獣の住む森に着いた少女を、一目見た魔獣は見惚れてしまいました。


 少女の手を取り歩き出した時、魔獣が持っていた闇の力が少女の中に入っていきました。


 魔獣は少女が魔法の力を吸収できる能力を持っていると知るのです。


 魔獣は少女の力を使い一緒に世界を自分の物にする事を思いました。


 闇の力はとても強力で魔獣に力を入れられた少女は、心までも闇に染められそうになりました。


 少女の心が限界を迎え意識がなくなりそうでした。


 その時、何者かが魔獣に戦いを挑みます。


 戦いを挑んだのは青年でした。


 青年は生きていて少女を助けに来たのです。


 意識を取り戻した少女は涙を流して喜びましたが、魔獣は攻撃された事に怒り狂い強力な魔法を使います。


 喜びは束の間、少女の目の前で青年が魔法で攻撃され倒れたまま動きませんでした。


 絶望の闇に囚われた少女は、無意識に闇の力と聖なる光を使い、様々な魔法の力を自分に集めました。


 少女は集めた力を空に放ち魔獣を包み込み、封印をしました。


 少女の涙と聖なる光が合わさり、魔獣によって破壊された世界に七色の光が雨の様に降り注ぎ大地を覆い、荒れ果てた土地に草木や木々が生えていきます。


 魔獣により、死んだと思われていた人々も聖なる光に守られて生きています。


 青年も助かり少女に近寄ろうとすと、目の前にいた少女は消えてしまいました。


 少女は自分の命と引き換えに世界を救ったのです。






 ――パタン


 本の閉じる音がやけに大きく聞こえる。


「……シャル」


 君の物語はまだ受け継がれている。


 あの時の君の手を、掴めていればと何度悔やんだ事か。


 今度こそ守りたかったのに、また同じことを繰り返してしまうのか。


『レオ』


 君が優しく呼ぶ声が聞こえる。

 最後に君は笑顔と共に1番苦しい事を言ったんだ。


『愛してる。だから、幸せになって』


 君がいない人生なんて、僕にとってどんなに意味がない世界だったか。

 君じゃないと僕は幸せになれないのに。


 だから、僕は湖に身を投げた。

 気付くといつの間にか精霊として生を受けていた。もしかしたら、僕はシャルを幸せにするためにこの姿になったのではないかと思った。


 シャルの魂を持った子を探し出し、側で見守っていた。

 何の因果が、シャルの魂を持った子はみんな闇の力に囚われ病んでしまう。

 闇の力は普通は人の目に見えない。人の苦しみ、悲しみ、妬み、絶望。負の感情で形成されている。


 何度も何度も、シャルの魂を持った子を助けられず繰り返して来た過去を後悔しながら、今度こそはと思っているのに運命には逆らえない。


(ただ、君に幸せになって欲しいだけなんだ)


 君が自分を犠牲にしてから、ずっとそう思っている。


 だから、シャルの魂を持っているリアーナは僕が守らなければ。


 今度こそ僕が……。


『レオ様』


 シャルに似た、あの笑顔は胸を締め付けらる。



 湖で幼いリアーナと逢わなければ、何かが変わっていたのかも知れない。


 幼いリアーナを見つけたのは偶然だった。

 シャルに似た魂を感じて、確かめにその子の所に行く途中だった。


 湖で倒れていたリアーナを見たんだ。そのまま通り過ぎる事だって出来た。いや、いつもの自分なら気にも止めなかっただろう。

 しかし、僕は不思議な感じがしてリアーナに視線を向けた。

 幼いリアーナは闇を身体に入りそうになったのを見てしまった。


 あの時の僕は幼いリアーナからはシャルの魂を、少ししか感じられなくて信じられなかった。でも、心の奥がシャルの魂の子はリアーナだと胸が高鳴ったのを今でも思い出せる。


 こんな事は初めてだった。

 もしかしたら、今度こそはこの子を幸せに出来るんじゃないかと思ってしまった。


 幼いリアーナに入ろうとした闇を自分に取り込み浄化する。リアーナには精霊の加護と聖なる光を少し与えた。

 その後、リアーナはノーズワット公爵に助けられた。


 リアーナに闇の力が溜まらないように、リアーナに会いに行き闇の力を自分に移し浄化していた。

 しばらくリアーナは安定した生活を送っていた。


 リアーナが大きくなると、ある事がきっかけで、声を出せず音も聞こえなくなった。

 リアーナには申し訳なかったが、僕は良かったと思っている。

 必要以上に闇の力に触れなくて、リアーナの運命が変わるんじゃないかと少し希望が見えてしまった。


 現実は、全然そんな事はなかった。


 闇の力はリアーナの中に潜んでいたんだから。


 学園に行く前にリアーナが倒れた時。闇の力が、とてつもなく大きな闇の力がリアーナを包んでいた。

 闇の力が巨大過ぎて取り込む事しか出来なかった。少しずつ浄化するがリアーナに見せる姿を保てない程に精霊の力が減退していった。


 まとわり付く闇を払いながら、うなだれる。


(また、僕は幸せに出来ないのか)


 掴めるはずもない、幻影の君の笑顔に手を伸ばした。






 気付くのが遅過ぎた。急いで精霊界から駆けつける。

 学園では技術大会なるものが行われていた。


(闇の力が増えて嫌な予感がする)


 リアーナの向かう場所に闇の力が集まっている。

 僕の姿はリアーナには見えず、歩いているリアーナに近づく。


(その場所に行ってはいけない)


『リアーナ、行ってはダメだ』


 声だけでもリアーナに届けば良いと、力を振り絞り伝えるが届かない。リアーナはどんどん離れて行ってしまう。


 僕だけの力だけではどうにもならない。

 ある考えが頭をよぎるが、決断するには辛い。


(自分が不甲斐ないばかりに……)


 いつの間にか妖精たちが周りに集まっていた。

 妖精たちは、僕の考えている事が分かっているかのように、にこやかに笑いながら飛んでいる。


『レオ様!』


 妖精たちが僕の名を呼ぶ。

 その声で僕は、意を決して考えていた事を言葉にする。


「妖精たち、力を貸してくれないか」


『もちろんです』

『リアーナは、私たちにとっても大切な人です』

『レオ様の悲しい顔はもう見たくないです』

『是非、僕たちの力を使って下さい』


「すまない」


『私たちは、また生まれ変われます』

『レオ様はレオ様の事を考えて下さい』

『ありがとうございました。レオ様』

『レオ様、またお会いしましょう』


 妖精たちは力を渡せば力が溜まるまで眠りについてしまう。またには消えてしまう妖精も居る。

 でも、それを恐れずに笑いながら受け止めている。


 自分が情けなくなる。

 もう後悔はしない。


 必ず君を幸せにする為に……。


 僕は妖精たちに手をかざす。

 妖精たちの温かい力が自分の中に入り、闇の力を浄化していく。精霊の力も増えていく。


 妖精たちは光に包まれながら天に昇っていく。





 闇の力がさっきよりも膨大になった。


(急がなければ)


 嫌な力を感じる。

 今は、声だけでも届けばいい。


『リアーナ。逃げるんだ』


 リアーナが動いた気配はない。

 もう一度呼びかける。


『リアーナ、逃げるんだ』


 闇の力が強すぎて移動するのに時間がかかる。闇に覆われている目的地は見えるのに闇の力が邪魔をする。

 しばらくすると人々の悲鳴が聞こえ、闇の力が著しく少なくなってる。


『リアーナ、ダメだ』


 リアーナが闇を吸収しているのかも知れない。


『君は闇を身体に入れないで。お願い。リアーナ』


 早く行かなければ取り返しのつかない事になる。闇の力に囚われてしまう。


 あと、もう少しで着くという時に見覚えのある力を感じた。


(まさか……)


『やめて。その力を使わないで』


 お願い。その力だけは使わないで欲しい。

 また、目の前で消えていく君を見たくない。


 空が光に覆われ、キラキラと光の雨が降る。


 君を慕う人たちの為に、君は消えてはダメなんだ。


 光に包まれたリアーナが見えた。

 

 あの時のように君を……。


『リアーナ!』


 あの時のように君を離して堪るものか。


 倒れていくリアーナを抱きしめる。

 リアーナは自分の中にあった全ての力を使い、それを埋めるように闇の力が入っていく。


 僕の力と妖精たちの想いが込められた力がリアーナに入っていく。


「……あんたは……」


 人間たちに今の僕の姿が見えているようで、驚いているアッシュが話しかけてきた。

 アッシュの服にはおびただしい血が付いていて、リアーナが力を使った理由が分かった気がした。


「リアーナを助けたいのなら、聖なる光を持つ者を連れて来てくれ」


「あんたがレオ様か……。……わかった」


 何か言いたげなアッシュは、何も言わずに聖なる光を持つ者を探しに行った。

 妖精たちから聖なる光を持つ者の事を聞いていて、もしかしたら手を貸してくれるんじゃないかと思った。


 リアーナに入った闇の力は想像を超えていている。もう、全ての力を使った。


(もう少しなのに)


 そう思った時、誰かの足音が聞こえた。


「リアーナ!」


 倒れているリアーナに駆け寄る、銀髪の少女を見た。


(なんだ。そうだったのか)


 シャルの魂を持った子は1人じゃなかった。

 先にこの子に会ったら、僕はリアーナを見つける事は出来なかっただろう。


 これで、後悔する事を終わらせる事ができるかも知れない。


「私の聖なる光でリアーナを助ける事が出来るんですか?」


「あぁ、もちろん。……君の名前は?」


「ローズです」


「ローズ、リアーナの手を握って少しずつ力を入れてくれないか」


「わかりました」


 意志の強い目。

 思わず笑みが溢れてしまう。

 君の魂が揃った。


(この運命は変わる)


 最後の力を振り絞り、2人の手を握り意識を研ぎ澄ます。

 リアーナの闇の中にある光の物と、ローズの光の中にある闇の物を掴む。


『レオ』


 僕の手の中にある、温かな光を放つシャルの魂から優しい声が聞こえた気がして大切に抱きしめる。








読んで頂きありがとうございました!

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