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楽しんで頂けると嬉しいです!
技術大会の特設会場に戻るとロゼット様がアッシュの番を2年生の最後にしていたらしく、グライアド先生と一緒に行ってしまった。
観覧席の前の方は生徒が沢山いて、後ろの方で座って観る。横に座ったディオは私の方を見る。
何か言いたそうで私は首を傾げならがディオに口を開く。
(どうしたの?)
「お嬢様、体調は変わりないですか」
(うん。何ともないわ)
「そうですか。……手を貸していただけますか」
(……はい)
何をするのか不思議思いながら手をディオに向ける。
手を握られゆっくりとディオの癒しの力が入ってくる。
「念の為です。嫌だったらすみません」
不安そうに見ているディオに、お礼に笑う。
(温かくて心地いい)
恥ずかしくてディオには言えないから心の中で思っておく。
「そうですか」
恥ずかしそうに笑うディオを久しぶりに見た気がする。
「リアーナ!アッシュ先輩始まるよ」
ローズに肩を後ろから叩かれて、慌てて会場を見る。
アッシュは遠くに居る私に視線を向け、優しく笑う。
正面を向くアッシュの表情が変わる。
炎の力を剣に込めると、剣が燃えている。
アッシュの強靭な剣捌きはとても美しい。
お兄様が静なら、アッシュは動だ。
アッシュが操る炎と剣が相まって、本当に言葉では表せないぐらい見惚れてしまう。
(アッシュ……綺麗)
凄く早く時間が過ぎた様に感じた。
(もっと見ていたかったな)
終わったアッシュは私に笑いかけ会場を後にした。
アッシュはお兄様に次いで2位の成績だった。
「アッシュ様も凄いですね」
ディオの表情はいつもよりも険しく感じる。
ギュと手に力を入れているのを見てしまった。
2年生が終わり次は1年生の番でローズはディオに声をかけた。
「ディオ、一緒に行きましょう」
ディオは私の隣から立とうとはしない。
「いいえ、私は出ません。棄権する旨を伝えてあります。ダイナ様はお気になさらず向かって下さい」
ローズは一瞬寂しそうな表情になり、満面の笑みになる。
「そうなんだ。わかったわ。リアーナ、応援よろしくね。じゃ、私行くね」
「ローズ、私もついてくよ!」
ジョナがローズの後ろをついて行く。
ディオに申し訳なくてディオに向かい口を動かす。
(私なら大丈夫だよ)
「お嬢様の大丈夫は信用ならないです」
(そんな事ないよ)
「それに、自分が側にいたいだけなので」
ディオは照れ臭そうに笑う。私も恥ずかしくて会場の方をずっと見てた。
「お嬢様……」
しばらくすると、私の知らない先生がディオを呼びに来た。
「ディオすまない。けが人が出た。みんな手が空いてなくて来てくれないか?」
(行っても大丈夫)
不安そうな表情を見せたけど、先生の頼みも断れない様で困った顔をしてる。
「お嬢様、少し席を外します。何かあったらすぐお逃げ下さい」
(そこまでしなくても大丈夫よ。いってらっしゃい)
書いた紙を見せると私の隣から離れる。ディオは何度もこっちを見ながら先生と消えていった。
ディオの中では私はいつまでも手のかかる姉なのだろうか。
1人で会場を観る。いろんな生徒たちが楽しそうに話してる。
私もあんな風に楽しく過ごしている様に見えてたら嬉しいな。
いろんな事あったけど学園に来て良かった。
(みんなに会えて良かった)
1人で顔を綻ばせて変に見られないか心配になっけど、そう思う事も面白くて笑っていた。
そろそろ1年生の番が始まる。
(なんか嫌な予感がする)
嫌な空気が会場の方からして視線をそっちに向ける。
会場に入るクレアから身体から黒い影が見える。
私の方を見てニヤッと笑う。
(あれはクレアじゃない)
『……リ……ナ。……るんだ』
どこからか声が聞こえる。レオ様の声な気がして周りを見渡す。
『リアーナ、逃げるんだ』
レオ様の声がはっきり聞こえてクレアが視界に入る。黒い影が禍々しい闇になりクレアを覆っていた。他の人には見えていない様で、クレアの取り巻き達が普通に声援を送っている。
クレアが笑うとの身体から闇が飛び出していく。
一瞬時間が止まった様に感じた。クレアがゆっくりと口が動く。
『逃がさない』
気付くと、私は黒い影に纏わり付かれて動けない。焦れば焦るほど聖なる光を思った様に使えない。
競技中の魔法全てが合わさり、私に向かってくる。思わず目をつぶってしまう。
「リアーナ!」
突き飛ばされ感覚に目を開けると、アッシュが倒れていた。赤い何かがアッシュの服を濡らしていく。
頭が真っ白になる。
(私の所為でアッシュが……)
アッシュに近寄り手を握る。
ディオから貰った癒しの力をアッシュに使うけどアッシュは目覚めなくて。
(私なんか庇わなければ……)
周りを見ると、闇の力がいろんな生徒に襲い掛かって逃げ惑う生徒たちに倒れている生徒たちや先生方、それを見て高らかに笑ってるクレア。
(……こんなの信じられない)
魔法クラスの生徒たちや先生たちは魔法を使いクレアをなんとかしょうとしているが、クレアの闇の力が全ての魔法を弾き阻む。
『リアーナ。ダメだ』
クレアに対する怒りが私の中で集まってしまって、何がなんだか分からなくなる。
ただ分かる事は、闇の力が私の中に入って来てる事だ。
『君は闇を身体に入れないで。お願い。リアーナ』
レオ様の声が聞こえるけど抑えが効かない。闇に溺れてしまう。溺れる前にしなければない事がある。
朦朧とする頭で考える。クレアを止める方法。
私が童話の少女と同じ力を持っているなら出来るはずなんだ。
『やめて。その力を使わないで』
レオ様の悲痛の声を無視して、手に集中する。
私は闇の力を聖なる光で包む。黒く光る球体にクレアに弾かれた他の魔法が入ってくる。大きくなった球体をクレア目掛けて飛ばす。
こちらを見て笑っていたクレアの表情が険しくなる。闇の力を持った球体はクレアをあっという間に包む。踠き苦しんでいたクレアは、糸が切れた人形の様に倒れ込む。
『リアーナ!』
最後に聖なる光に癒しの力を乗せて、全ての力を解放する。身体から光が放たれ、雨の様にキラキラした光が降り注ぐ。
身体から力が抜ける。倒れる瞬間、ゆっくりと動き出すアッシュを見てホッとする。
私は、体の中にある闇に意識を落とした。
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