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楽しんで頂けると嬉しいです!


(今日の朝も会えなかった)


 いつもよりも朝早く起きたはずなのに、お兄様は出た後で今日も会う事は出来なかった。

 お兄様の手紙には、朝の挨拶と気をつけて学園に行く事とごめんと書かれていて、凄く寂しく思う。

 それから、着替えて朝食までナナと話しながら待っていた。

 少し遅くアッシュとディオが迎えに来てくれた。

 2人に午後から学園の授業が始まると教えてもらった。




 3人で食堂に行こうとすると見たことない生徒が沢山がいた。

 公爵家や伯爵家の令嬢や子息は今日の午前に学園に着くようにしているらしく、廊下を歩いているといろんな視線が私に注がれる。

 少しは慣れていたが、好奇な眼差しで見られるのは少し疲れる。


 何人かの令嬢や子息は私を見ながら喋っている。今まで、普通にしていた人も一緒になって話していたりしている。

 アッシュとディオのか表情は険しくなっていく。

 コソコソと何を言われてるのかはわからないが想像はつく。良い事は言われてないだろう。

 あまり、いい気はしない。少し怖い気持ちになる。

 私は1度目を閉じ小さく息を吐き出す。


(こんな時こそ堂々と胸を張って歩こう)


 目を開き前を向く。




 昔、お父様から言われた事があった。


『お前は誰が何と言おうとノーズワット公爵家の長女だ。他の者の戯言など気にする必要などない』


 事件の後に心配したとお見舞いに来た人々が、コソコソと隅で話していた。その表情が私を馬鹿にしたような感じに見えた。

 ナナが嫌な顔をしていたので無理に聞くと、案の定気持ちの良い話ではなかったようで、『腹の立つお話でした』と言うだけで詳しくは教えてくれなかった。

 後にも先にもナナがあんな不愉快な表情になったのは見た事ない。


 その後、お父様に呼ばれてその紙を渡された。

 お父様もお母様が亡くなり私の事など考えている場合じゃなかったはずなのに、優しく頭を撫でてくれて安心したのを覚えている。




 隣で今にもアッシュとディオが、私の方を見ながら話してる人に飛びかかりそうなのを止めようと、私は2人の服を思わず掴む。


(大丈夫よ)


 2人がこっちを向くと、私は口を動かした。

 不安そうに私を見る2人に対して、背中をそっと叩き和かに笑う。


 私は誇り高きノーズワット家のリアーナ。

 他の者が戯言を言った事を後悔するように、私は優雅に廊下を歩いていく。


 横に2人も優秀な騎士様がついてくれているのだ。何を怖がる必要があるのか。


 私は堂々と和かに食堂へと向かった。





 いつもの様に朝食を食べ終えて、少し1人になりたくて食堂に近い庭のベンチに座っている。


(少し疲れた)


 あんなに神経をとがらせたのは初めて。

 意気込んだのは良いけど、疲れちゃってたらこの先が思いやられるわね。

 1人で軽く笑っていると影が近づいていた。

 私はその影に目線を向ける。


「あら、ノーズワット家のリアーナさんじゃない。貴女、今頃学園に通って授業についていけるのかしら。その前にそんな状態で授業なんて理解出来るのかしら。容姿だけ良くっても駄目ですよね」


 華やかな女子生徒が3人の女子生徒を連れて、目の前に立っている。


「ごめんなさい。貴女には何言ってるかわからなかったわね」


 華やかな女子生徒は他の女子生徒と一緒に笑い出した。嫌味を言いにここまで来たのかしら。


(いいえ。言ってる事は理解しましたよ。ちゃんと勉強していたので大丈夫です。ご心配して頂けるなんてお優しい方なんですね。クレアさん)


 素早くペンと紙を出して、書いた紙を見せると目の前の女子生徒は少し表情を変えた。


「私がクレアって知ってるの?」


(あれ?違いました?昔にお会いした事ありますよね)


 ボーダルク伯爵の非嫡出子で闇を抱えた人だったはず。人を蔑まないと生きていけない悲しい人。

 悪役令嬢のリアーナの右腕として色々と手を下していた。


 悪役令嬢のリアーナはどうだったか知らないが、私は昔に仲が良く遊んでいたはずだ。

 クレアがボーダルク伯爵に引き取られて間もない頃で、私は仲良くなろうと必死でクレアの遊びについていったな。まぁ、あの事件から会った事はないが。

 私が覚えていないと思っていたのかクレアは戸惑いを隠せていない。


(小さい頃は楽しかったですね。虫を取ったり木登りしたり。思い出すだけで素敵な思い出ですね。私を気にして頂きありがとうございます)


 私の書いた紙を見て、顔を赤くしてる。クレアは紙をビリビリに破り憤慨している。

 後ろから他の女子生徒に紙を見られていたみたいで、女子生徒たちはびっくりした表情をしてクレアを見ている。

 ボーダルク伯爵の令嬢が虫取りや木登りだなんて知られたくはなかっただろう。

 私はそんなに気にする事はないと思うんだけど、クレアは人一倍プライドが高いらしく凄く睨んでいる。


「私を馬鹿にしてるの?」


(いいえ。あの時は楽しかったと思ってるだけですよ)


「いいわ。リアーナ、覚えてらっしゃい」


 捨て台詞を放ちながら体を翻し、中庭から去っていくクレアを見ながら思ってしまった。


(この捨て台詞。悪役令嬢のリアーナがローズに言った言葉に似てるわ)


 彼女が悪役令嬢になるのかしら。

 確か彼女のやる事は意地が悪かったな。

 ローズにも気をつけてもらわないといけない。


 そう思って深いため息を吐き、ベンチに身体ごと身を預けた。

 凄く疲れた気がする。



 アッシュが呼びに来てくれるまで、ベンチで目を閉じていた。





読んで頂きありがとうございました!

誤字脱字報告ありがとうございます!



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