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楽しんで頂けると嬉しいです。
目の前には不安そうな顔のジョナがいる。
図書館の帰りにアッシュにお願いしてジョナの部屋に連れて来てもらった。
アッシュとディオはいつもの様に部屋の外で待ってもらっている。
「来て大丈夫だったの?」
ジョナは遠い目をしながら扉を見ながら言う。
アッシュが何かしたのかしら。
(アッシュ?)
「えっ?う、ううん。だ、大丈夫。気にしないで。それでどうしたの?」
動揺を隠し切れないジョナに気付かないフリをした。
私は一冊の本をテーブルの上に置いた。
「これっておとぎ話の本?」
(そう。借りてきたの。一緒に見てくれない?)
紙を渡すと、不安そうな私の顔を見てジョナは笑顔なった。そして、本を開き読み進めていく。
少女と青年が出会い恋をする。
突如現れた魔獣を倒すために青年は戦いに行く。
魔獣の闇の力は強力で手も足も出なかった。戦いの最中、青年は行方知れずになる。
魔獣は聖なる光を持つお姫様を要求し、お姫様の代わりに少女が魔獣の元へ向かう事になる。その時に、少女はお姫様の聖なる光を吸収し、吸収の能力を持っていると分かった。
少女が魔獣の元に行くと、魔獣は少女が吸収の能力を持っている事を知り、闇の力を吸収させ世界を滅ぼそうと考えた。
そこに、生きていた青年が少女を助けようとして魔獣の攻撃を受け動かなくなる。
怒った少女は、闇の力を使い全ての魔法の力を集め魔獣を封印したという話だった。
「家に置いてあって1回読んで終わりだったな。ゲームの中じゃ触れられたことないからスルーしてたんだよね。ただ、この本に書かれてる闇の力はこの世界に存在しないし、魔法を吸収する能力ってカッコいいじゃない?だから、そこだけは覚えてたんだよね」
(少女は自分の命と引き換えに封印するの?)
私の書いた紙を見て、腕を組みながら悲しい顔をしてる。
「そうなんだよね。私はハッピーエンドが好きだから悲恋は辛いんだよ。最後は少女の聖なる光の力で青年が助かって、少女は死んじゃうって悲しい。やっぱり、好きな人と一緒にいられるのがいいんだよね」
ジョナは本を閉じ姿勢を正して私に向き合う。
「この世界に魔獣はいないし、心配しなくて大丈夫だよ。もし何かあったとしても、リアーナの周りには頼りになる人たちばっかりだから。私は魔法使えないからあれだけど、リアーナが不安に思ったら話聞いてあげる。だから、そんな顔しないでよ」
ずっと不安だった気持ちがジョナの言葉で少し和らいだ。考えても仕方ない。なるようにしかならない。
(ありがとう。ジョナは頼りになるね)
テーブルの上においてあったジョナの手を握った。
ジョナは照れたように真っ赤な顔になる。
「こんな美人に笑顔でお礼言われると心臓に悪いわ」
ジョナの反応がなんだかおかしくて2人で笑顔になった。
「明日から授業始まるけど大丈夫?」
(明日からなの?)
「忘れてたの?明日からだよ。ローズと同じクラスでしょ。ローズはいい子だからいっぱい頼って。私はまだ謹慎とけてないから、学校では力になれないごめんね」
ジョナは一枚の紙を差し出した。受け取ると日本語で書かれていて、これから起こる事が大まかに書かれている。
「これはゲームの内容だから目安として見てね。昨日、記憶がないって言ってたからゲーム補正がかかってるのかなって思って私の知ってる事書いておいた。大まかだけど詳しく知りたかったら私に聞いて!」
ジョナは大袈裟に胸を叩く仕草をしている。
私の事心配してくれた事がすごく嬉しくて思わず抱きついてしまった。
「あの時は、悪役令嬢にこんな事されるなんて思っても見なかった。物凄く嬉しいんだけど。リアーナにも幸せになって欲しい」
ジョナも抱き返してくれた。少し痛くてジョナの顔を覗き込むと無邪気に笑っていた。
「……あ。時間ですか?」
ジョナの顔色が見る見るうちに血の毛が引いている。振り返ると、アッシュとディオが扉を開けていた。
「ジョナ。お楽しみのところ悪かったね。だけど時間だからね。行くよリアーナ」
ジョナは固まり私から一歩下がり、コクコクと頷いてる。
昨日と同じくアッシュに手を握られ連れられていく。
「楽しかった?さっきよりも表情が明るくなった」
本置いて来ちゃったなって思っていたら、歩きながらアッシュが顔を覗き込んで聞いて来た。顔の位置が近くてビックリした。
(女の子の秘密の話だから)
私が紙を見せると残念そうな顔をしたアッシュが
可愛く見える。
ジョナのおかげで少し気持ちが楽になった。
読んで頂きありがとうございました。




